58 野営
恒星が傾き始め、日の光が完全に沈んでしまうまであと数時間という時間帯ではあるが、私達は野営の場所を探し始めた。
恒星が地表へと完全に沈んでしまうと、その暗さの為行動がひどく制約されてしまうからだ。
私とヤスコは光学センサーのおかげでわずかな光さえあればまるで昼間のような視界を維持できるがエリンやミーナはそうではない。
暫く野営地に適した場所を探していたところ、丁度近くに水源がありある程度開けた場所を発見したのでそこを今夜の野営地にすることにした。
よくあるファンタジー世界では水辺の近くは水中に住む魔物とかが出現しそうなのよね……。ここは大丈夫かしら?
などと一瞬思考をめぐらせるが、やはり水が自由に使えるというメリットは大きいのでそれ以上は考えるのをやめた。レーダーも確認するがこの辺には特に大型の生物もいないようだ。
私もヤスコもそしてエリンも野営のちゃんとしたやり方は分からないので、ミーナの指示のもと作業を進める。
エリンは「私達がやりますから」と言ってくれたが、四人で分担した方が早く終わるのでその申し出は丁重に断っておいた。
私は与えられた指示の元、馬に水をやり飼葉を与える。
他の人は竈を作ったり、音を利用した警戒用の仕掛けを作ったりしていた。
ヤスコも「お姉様は休んでいて大丈夫ですよ」と言ってくれたが、実のところ私はこのアウトドア擬きを結構楽しんでいた。
現実世界ではどちらかと言うとインドア派だったのでこの様なちゃんとしたキャンプは殆どしたことが無かったのだ。
これで危険さえなければ文句無しなんだけれど……。
私達の体の強度であればこの惑星の生物に襲われても大抵何とかなるのは分かったがそれでも怖い物はこわい。
合成人間と言えど痛みは感じるのだ。ただし痛みと言っても生身の身体とは感じ方が違う。
説明はしずらいけどヤスコによれば合成ボディの損傷は頭脳にて痛みとして分類されるとか言っていたわね。
与えられた作業が終わった私は他の人の作業をジっと興味深く観察していたが、料理をしていたエリンと目があうとエリンはニッコリとほほ笑んだ。
以外な事だが領主の娘というそれなりの立場にいた彼女だが料理はできるらしい。
私もそれなりに出来ると思うのだが私とヤスコには食事が必要のない旨を伝えたところ、自分の分の食事は自分たちでなんとかするということになった。
その際は「ハイヒューマンは食事も必要が無いのですね……」とつぶやいていたのを聞いてしまった。
食事だけでなく水も睡眠も呼吸も必要ないと知ったらどんな顔をするのかしらね……。
時間が立つにつれあたりに良い匂いが漂い始める。
食事の支度ができたようだった。