55 魔法について
想像よりのんびりまったりした旅路は続く。
この手のゲームではあれば魔物とかが出そうな感じだけどね……
私がやっていた『フリーダム・ファンタジー・オンライン』もMMORPGを謡ってはいたものの、宇宙が舞台のゲームだったためそんな存在はなかった。せいぜいNPCの宇宙海賊や敵対的ギルドの構成員によるPKらしきものがあったぐらいだ。
『フリーダム・ファンタジー・オンライン』は課金期間により一定時間おきにスキルポイントがもらえるシステムだったためそもそも敵を倒す必要すらなかったのだ。
ゲームであれば場所により勝手にモンスターとエンカウントしそうではあるが、この惑星ではそのようなことはなく、特に何事もないまま馬車は進んでいた。時折レーダーに目をやるが特に反応も無いようだ。
ゲームといえばこの惑星には魔法があったわね……。ちょっと聞いてみようかしら。
私はヤスコを介してエリンに話を聞くことにした。早く言葉をもっと覚えたいわね……
「魔法ですか?」
エリンは私はそれほど詳しくないのですがと前置きして続けた。
「魔法とは術者の体内に蓄積された魔法力を消費して様々な現象を発生させる秘術の事です。元々はこの世に住まう見えない精霊や神々の力を借りるものと言われています」
「魔法力?その体内に魔法力を蓄積するのはどうやるんですか?」
「それはあまり考える必要はありません。魔法力は呼吸により蓄積されると言われていますから。ただしその蓄積される量には個人差が大きく、生まれ持った才能が影響すると言われています」
「……」
それって呼吸していない私達には無縁の物というわけね……
合成人間である私とヤスコは食事も睡眠も、そして呼吸も必要がない。つまりは魔法を使うことが不可能ということだ。
魔法力とやらの正体も知りたいがおそらくこの惑星の人々も分かってはいないのだろう。
「その魔法はどの程度の事ができるのですか?古の森では火の玉を放って来た者がいましたが」
「そうですね……」
と、エリンは思考する素振りを見せたあと口を開く。
「火の玉のほかには電撃を放ったり突風を吹かせたりという事ができますね……。超一流の者は流星雨などと言った攻城用の魔法も使えると聞いたことがあります。もっともそのような術者は国家レベルで術者を育成して一人二人使えるものがでるかどうか、といった程度のようですが」
……えっ!?流星?隕石を空から降らせるってこと?なにそれこわい。