48 排除
前方の扉は周りを鉄で補強された木製の扉のようだ。
通路を慎重に音を立てない様歩みを進め、ヤスコは扉の前までたどり着いた。
私はもしもの時のアクシデントに備え、そのまま通路の角で待機する。
そしてヤスコはドアノブを掴むとそのまま動きが止まる。
どうしたのかしら……?と、様子を伺っているとヤスコが振り向き囁くような声で言った。
「……お姉様、鍵がかかっているようです」
デスヨネー、寝室に鍵ぐらいかかっていてもおかしくないわよね。
「仕方ありませんね……。壊しますか」
ヤスコは扉を慎重に調べると扉と壁との境目にパルスライフルを押し当て引き金を引いた。
『チュン』という僅かな音と共に何かが焼けるような臭いが漂ってくる。
ヤスコはドアノブを回しわずかに扉を開けで中を覗き見る。
「開きました、人影は見当たりません、中に入りますね」
ヤスコに送れる事数秒で私も部屋の中に突入した。
そこは領主の寝室と言うこともあり、素人目にもわかるような豪華な部屋だった。
室内に置かれた調度品には見事な細工がなされており高級そうな雰囲気を漂わせている。
床にはふわふわな絨毯が敷き詰められ、そのまま寝ころんでも気持ちがよさそうだ。
そしてその中でもひと際目立つのは天井まで届くような天蓋をもつ超豪華なベッドだった。
そしてそのベッドには部屋の主人が静かな寝息を立てて眠っていた。
領主であるエリンの父親を殺害し、今はフォーセリアの領主となったエリンの叔父、フルト・フォン・フォーセリアを名乗る者である。
鍵を壊すときにわずかな音を立てたけど、どうやら目を覚まさなかったようね……。
その幸運に私はホッと胸をなで下ろす。
ヤスコはベッドに眠る人物を視界に入れると、音もなく近づきパルスライフルの引き金を引いた。
『チュン』という音と共に肉が焦げるような嫌な臭いが漂う。
「排除完了しました、お姉様」
「ヤスコお疲れ様。急いでここから出ましょう……」
§ § §
朝になり恒星の光が辺りを照らしだしたころには、とっくに私達は領都から脱出していた。
領都まで歩いた街道を逆に歩き、一路ブルメンへと向かう。
戦闘……などと呼べる物ではなかったが精神的な疲労のせいだろうか?体がいつもよりおもく感じられた。
こうして私達がエリンと交わした契約は完了した。
流されるようにここまで来たのだけれど、これから私達はどうなるのかしら?
ヤスコの横顔を見ながら、私はそんな不安を覚えずにはいられなかった。