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47 潜入

 基本的に未開の地ほど日が沈んでしばらくしてから床に就くのが一般的であるらしい、なにせ明かりを灯すのに費用がかかりそれを捻出できる家も多くないからだ。

 しかしここ領都は比較的裕福な人々が住まうのだろう、家々から明かりが洩れ日が落ちてそれなりに時間がたったのにも関わらず通りには人の姿が見受けられた。

 もっともさらに夜が深まれば人通りも皆無になるだろう。


 そして、その夜が深まり、家々から零れ落ちる明かり消え、人通りが皆無になった頃を見計らい、私達は領都の中心部、領主館に向かって歩みを進めていた。

 静まり返り明かりもない道を無言で黙々と歩く。私達の光学センサーは星々程度の明るさがあれば、まるで昼間のような視界を提供してくれる。

 そんな暗闇の中でも光学迷彩で姿を不可視化し、足音を極力立てない様に慎重に進んでいた。

 聴覚に優れた人物がよほど注意して耳をそばだてない限り、すれ違っても違和感を覚えることはないだろう。


 道を進み、中心部に近づくにつれて目的地がだんだんとはっきり見えてくる。

 周囲は高い塀で囲まれており、時折警備の人間と思われる者が周回していて、これまで通ってきた場所とは明らかに違う雰囲気を漂わせていた。


「あの塀の向こう側よね?」


「はい、エリンからもらった地図によるとそうなってますね。ではお姉様、手筈通りに侵入しましょう」


 私はヤスコの言葉に無言でうなずくと移動を始めた。



§ § §



 私とヤスコは壁に等間隔に明かりが灯された無人の廊下を音を立てない様に慎重に進む。光学迷彩で不可視化しているとは言え大きな音を立てては気づかれてしまうかもしれないからだ。

 時折背後を気にしつつヤスコを先頭に無言で歩みを進める。ヤスコに導かれるように歩いているそこは領民が滅多に立ち入る事ができない領主館だ。素人目にみても如何にも高価そうな内装を目にしながら視線を下に落とすとゴミどころか埃すら落ちていないのではないか、と思わせるような廊下だ。


 幾たびか廊下を曲がり、階段を慎重に上がるとヤスコがふと足を止めた。

 それに気づかずにそのまま足を進めた私はヤスコに接触しわずかに音を立てる。


「いきなり立ち止まってすみません、お姉様。たしかこの階のはずです」


 囁くような声でヤスコが謝罪してする。


「問題ないわ……。じゃ目的地はもうすぐなのね、慎重に行きましょう……」


「この角を曲がった先が寝室のはずです、そこに対象がいればいいんですけどね」


 その言葉を聞き私が角をのぞき込んでみるとその廊下の先には部屋があった。


「警備の兵とかいないみたいね、自分の館だから安心してるのかしら?」


「私達にとっては好都合ですけど、もしかしたら対象は別の部屋にいるかもしれないですね」


 でも……冷静に考えれば屋敷の周りや中の警備はなかなかだったわ。

 不用心に見えるけど不審者がここまで来れるはずがないと考えているのかもね……。


 このまま何事もなく事がおわってほしい、私はそう願いつつ部屋の様子を伺っていた。

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