43 もう一人の叔父
居室でくつろいでいたブルメン・フォン・フォーセリアは突然部屋に現れたヤスコと私に驚きつつも、私達がエリンの使いで秘密裏に会いたいと伝えられ着の身着のままで領主館から護衛をともない目的地に向かい移動を始める。
ブルメンはいかにも警戒しながら歩いていたがエリンの姿を視界に収めると警戒を若干緩めたようだった。
そして手が触れる距離まで近づくとゆっくりと口を開いた。
「これはこれは……エリン、まだ生きてたんだね」
その言葉を聞きエリンは溜息を混じったような声を上げる。
「……お久しぶりです叔父上。えぇ、おかげさまで。まだまだ父上の元へは行けないようです」
「兄上も君がいないと寂しがっているだろうね、ところで……」
とブルメンはそこで言葉を切り私達の様子を眺めると言葉を続けた。
「君たちは四人だけでここに来たのかい?そこの一人の顔に見覚えはあるがそっちの二人を紹介してくれないかな?」
どうやら私達をみて戸惑っているようだ、おそらくなぜヒューマンを連れてきているかが分からないのだろう。
「こちらはミーナです。それとこちらの方々は……」
「私はヤスコです、そしてこちらがヨシコ。お初にお目にかかりますブルメン殿」
ヤスコの紹介の言葉に合わせ私もお辞儀をする。
「彼女らは……私の協力者です、こんな場所に呼び出した私が言うのも何なのですが、続きは落ち着ける場所に移してからやりませんか?」
「あー、それもそうだね。続きは私の部屋でしよう」
と言って、ブルメンは付いてくるように言うと、背を向け領主館へ向かい歩き出した。
暫くあるいて領主館へ着くと自室に椅子と飲むものを用意するようにメイドへ指示をだす。
そしてブルメンからエリンは自分の家族の末路を聞かされるのだった。
そしてブルメンは不思議そうに尋ねる。
「ほぅ……もっと取り乱すかと思ったけどね。自分の父、母、兄が死んだと聞かされたのに気丈な事だ」
「……予想はしてましたから……。フルト叔父が父や兄たちを生かしておくわけないと。それにもう十分悲しみました」
「フルト兄上は怖い人だからね」
「それで……領内の様子はどうなのでしょう?」
「領内は……。まぁ混乱から立ち直りつつあるかな。少なくとも表向きにはだけど、多くの者がフルト兄の支配を認めているよ。もちろん私もその一人だけどね」
「私の味方になる有力者はいないと言う事ですか……」
「少なくとも表立ってする人はいないだろうね。軍権はフルト兄上が握ってる……。今表立って逆らうのはただの馬鹿だろ」
そういうとブルメンは肩をすくめるジャスチャーをした。




