36 無双
ヤスコは力任せに剣を振り回し敵を倒していた。
ヤスコは剣を使うのは初めてのはずなんだけど……。
剣士としての技量ではないのだろう、『フリーダム・ファンタジー・オンライン』に剣を使うスキルなどないのだから。しかし私達の力はこの世界の人間よりもはるかに高いようだ。
敵の生き残りの一人がヤスコにそのまま突撃し剣を振り上げる。
しかしヤスコの踏み込みはそれより速く空間を切断するかのように剣を横に走らせた。
そしてそのまま違う敵に目標を変えると、それを合図にしたかのように敵は崩れ落ちた。
血や内臓が辺りに飛び散り嫌な臭いを漂わせる。
すご、……ちょっとヤスコ強すぎない……?
ってボーとみてないで、私も援護しないと……。
弓は撃っても無駄だと思ったのだろうか?
敵の一人が弓を捨てて杖を構えるとその杖を私に向けてきた。
「÷δΛ×+?!」
私がはっきりとは聞き取れない言葉を発すると、いきなり杖の先から炎が生まれる。
そしてそのまま数十センチ程度の大きさになると、私に向けて発射された。
「きゃ!!」
私はとっさに両手で顔をガードするが、その炎は服を焦がし外皮を損傷させる。が、そこまでだった。
私が大したダメージをうけていないのをみて驚いたのか、相手は目を見開き硬直している。
私は急いでリフトガンのセーフティーを解除すると狙いを定め引き金を落とした。
その銃撃は先ほどの杖を振り上げた敵の顔面をとらえると、その瞬間凄まじい爆発音が発生しその相手の頭部が花火のように吹き飛んだ。
『フリーダム・ファンタジー・オンライン』にて惑星でのPVP(対人戦)用に用意されている主な武器はエナジーウェポン系と実弾系に分けることが出来る。
そして通常弾ではプレイヤーの合成ボディには大したダメージが与えられないという設定の為か実弾系の武器はエクスプローダーとよばれる命中すると爆発する特殊な弾頭が使われていた。
もちろんゲームの中では当たっても即死するということはなく耐久値が減るだけだ。
しかしその光景を目の当たりにした敵や一応の味方であるエリンの集落の人間は、今起きた事が信じられないかのように静止している。
「お姉様、ナイスヘッドショットです!」
剣を振るいながら横目で見ていたのだろうか?ヤスコからの黄色い声援が飛ぶ。
そのまま暫く噴水のように血を噴き出していたその体は足元の血だまりの中にゆっくりと崩れ落ちていく。
そしてその光景を見た私は――
うわぁ……なにこれ……グロすぎて吐きそう……。




