33 天幕
「本日はゆっくりとお休みください」
彼女の後ろに付いていくと小さな天幕に案内された。
みすぼらしく見えるけど、この避難生活じゃしかた無いわね。
バサッと音を立てて天幕の布が閉じる。
中には2つの粗末な寝床ぐらいしかない。
私は中を見回すと、軽い溜息をついた。
避難民の集落じゃこの程度でも上等なんでしょうけど……、船の設備と比べるとかなり見劣りするわね。
「お姉様には似つかわしくない部屋ですね。もっとも彼女らにはこれが精いっぱいなのでしょう」
「ヤスコ!そんなことは口に出して言ってはダメよ。誰かに聞かれたらどうするの?」
もぅ、ただでさえ敵対心を稼いでいるのだからこれ以上はやめてほしいわ……。
天幕の隙間から差し込む恒星の光だけでは部屋の中はとても薄暗い。が、私達合成人間の光学センサーでは支障がない程度の暗さだ。
ナイトエルフの視野がどうなっているかは分からないが、私が知る一般的な人間であればここは物をみるには不自由する程の暗さに思えた。
もっとも、光を一切拾うことのできない状況では私達の光学センサーでも物を見ることはできないんだけどね……。
とりあえず粗末な寝床に腰を下ろした私にヤスコが他に聞かれない様にだろう……声を抑えて問いかけてくる。
「しかしエリンの周りには碌な人材がいないようですね……。唯一お姉様に助けを求めたニムとかいう娘は人を見る目だけはありそうですが」
「……貴方は何を考えているの?まずそれを教えてちょうだい」
そうなのだ、ヤスコが何を考えててあのような発言をしたのかがさっぱりわからないのよね……。
「はい、お姉様、私はまず情報取集をメインに考えています、正直船の破損はかなり深刻で、積み込んである資材では無事に修理出来るかわかりません…この惑星の資源の分布の情報が必要です」
「この惑星資材を使って船を治すつもりなの?」
驚いた、状況がそんなに深刻だなんて……。
「まず権力者に取り入ろうと考えています。これはその足掛かりです。……もっとも、うまくいくかはまだ未知数ですが」
「それであの発言なの?かなり憤ってた人たちがいたわよ?取り入る前に敵対するんじゃ……」
「その時はその時です。もし敵対すれば排除しますがお姉様かまいませんね?」
完全な納得はしていないけれど、私は了承の意として頭を立てに振る。
「それで、これからの行動の指針はあるのかしら?」
「現状では向う(エリン)の出方次第ですね、もし叔父とやらを直接排除を希望するのであればお姉様にも少しご助力をお願いします」
一体なにをやらせる気なのかしら……。
その言葉に私は不安を抱えながらも了解の意をしめした。




