30 協力要請
「ところで……エリン……殿はこれからどのような行動を取る予定ですか?どうもお話を聞くに領地を追われたみたいですが」
今ヤスコはエリンを呼び捨てにしかかったわね。
もぅ……これ以上トラブルは起こさないでほしいわ……。
「……どうとは?」
「御領地にお帰りになるのですか?」
「いえ……ここにいるもの達は父に連なる者ばかりです。今更降伏してもおそらく叔父上は許さないでしょう。多くの物が死罪若しくはそれに近い扱いになるはずです」
「では、ここにずっと住まわれるのですか?」
「……それは……」
エリンは言いよどむ。
逃げ出したもののどうしてよいか分からないという感じね。
「姉様いますか?」
その時、天幕の外側から声が聞こえてきた。
「ニム、私は今、お客人と話をしているの。後にしてちょうだい」
私達の方にチラリと視線を向けてエリンは言う。
「どうぞ。私達の事は気にしないでくれて結構ですよ」
「そうですか……。申し訳ありません。ニム、入っても構いません」
「失礼いたします」
その声を受けて天幕に入って来たのは小柄な少女だった。
エリンに顔立ちが似てるわね。さしずめ妹という所かしら。
私達の視線が恥ずかしいのか俯き加減になっているわね。
「ご紹介します、これは妹のニムです。ニムもご挨拶なさい」
「ニムと言います……。この度は姉様を助けて頂きありがとうございました」
そう言いながらペコリとお辞儀をする。
その小動物のような愛らしい姿を見て、私は思わず笑みがこぼれた。
「ヤスコと言います、こちらはお姉様……ヨシコです。エリン殿が連れ去られて行くのが見えましたから。無事助けられてよかったです」
ヤスコと私は軽い会釈をしにっこりとほほ笑みながらネムに応える。
「……ヤスコさん達は強いのですか?」
「エリン殿をさらったフェラルオーク程度でしたら敵ではないですね。特にお姉様を倒せる存在はこの惑星ではいないと思われます」
ちょ、ヤスコ!何を言い出すの?
その言葉を聞いてニムは暫く逡巡するような素振りを見せ、やがて意を決したように口を開いた。
「お願いです、私達を助けてください!」
「ニム!貴方は突然何を言い出すのですか?お客人に失礼でしょう!?場をわきまえなさい!」
……可哀そうだけど私達はそんなことにかかわっている暇はないのよね。
などと思っていると。
「わかりました、私達の出来る範囲でしたらお助けしてもいいですよ」
えっ!?良いんだ……。
ヤスコがまたとんでもないことを言い出したわね……。