28 ナイトエルフの集落
「集落はここの直ぐ近くだそうです。ぜひおいでください。ささやかですが助けていただいたお礼をしたいんです」
そうエリンに言われて集落まで来たものの……、なんか明らかに歓迎されている雰囲気じゃないわね……。
集落は森の開けた一角にあった。
集落といっても住居はテントみたいなものがそこかしこに並んでいるだけだ。
これは、想像以上に貧しそうな暮らしね、まぁ避難してきたということだし仕方ないか。
出会う人々は口々に「エリン様」と驚くような声を掛けてきて、それにこたえる様に私達の事も紹介してくれるのだが、それでも警戒されているような雰囲気が消える事はなかった。
そして……想像通りエリンはこの集落では特別な立場の様だった。
フォーセリアの領主の娘ね……。
領主の長女、それがエリンの正式の立場だった。
そして、領主である父、母、そして兄までが行方不明というのであれば名実供にこの集落の代表はエリンなのね。
「……所であなた方は何者なんですか?」
エリンからあれこれ話を聞いていると、会話がひと段落したところでマーベットが口を挟む。
「エリン様を助けてくださったことには本当に感謝しております。しかしあなた方はあまりにも怪しすぎる。異国の言葉で会話もそうですが、なぜヒューマンがこの古の森に居るのですか?」
「マーベット!そのような物言いは善意から私を助けてくださった方々に失礼ですよ!」
エリンから叱責が飛ぶがその疑問はエリンももちろん持っていたものだろう。
出会った当初は言葉が通じずその疑問を解消できなかったため、気になりながらもなかなか聞けなかったというところね。
まぁ……確かに怪しいわね。
異国の言葉で喋るのはもちろん、変わった服装に変わった武器を持ち、人が踏み入らないという場所にいれば当然かしら……。
「ヤスコ、これはどう説明すればいいと思う?」
「私にいい考えがあります、お姉様ここは私に任せてくれませんか?」
なんかヤスコに任せるのはとてもとても不安なんだけど……。私は言葉の問題もあるし、いい考えが浮かばないのではしかたないわね……。
「……えぇ、ヤスコにまかすわ。お願いね」
「はい、お姉様、お任せください!」
ヤスコは満面の笑みを浮かべるとマーベットに向き直り口を開いた。
「あなた方が私達を警戒しているのは理解しています、追っ手に追われながら生きるのは大変でしょう。でも貴方がたは思い違いをしているようですね」
「……思い違いとは?」
「私達はヒューマンではありません、ハイヒューマンです」
えっ、何をそれ?何をいいだすの?




