26 足跡
「出兵するかどうかで意見が割れました……多数派は非出兵派でしたが、そこを領主の権限で出兵することに一度は決定しましたが……。領主の弟を盟主にして非出兵派が乱を起こしたのです」
「ではフォーセリアから逃げ出した人々が古の森に集落を作ったっていうのは……」
「はい、お察しの通り領主派の関係者です」
ふーむ、いろいろ大変なことになってたみたいね。
「なるほど……多くの人が出兵反対だったってことは、出兵すると負ける確率が高く、領地を滅ぼしかねないとみていたわけですね」
エリンは無言でうなずく。
領主のわがままで負け戦に付き合わされちゃたまらないってわけか、この手の内乱はどっちが正しいかは難しいわね……。
「それで領主はどうなったんですか?」
「古の森の集落にはいません。……恐らく捕らわれているか、もう生きてはいないかもしれません」
こんな危険な森にまで逃げ込んできてる以上、領地は完全に失陥した感じね。
自力でのまともな反撃が無理な以上、他の勢力の助けを得て反撃がセオリーだけれどねぇ……。
「私の足のケガもそろそろ癒えてきました。明日にでも集落に帰りたいのですが……」
「ここから集落がどこにあるのかわかるのです?」
「いえ……気絶している間に運ばれたのでわかりません」
そういうとエリンは顔を伏せてしまった。
帰りたい気持ちはわかるんだけれどさすがに場所も分からずこの森をうろうろするのは危険すぎるわね。
さて、どうしようかしら、と私が思案しているとヤスコが何かを思いついたらしく口を開いた。
「今日はもう日もおちていますし、エリンたちの集落を探すのは明日ですね。少しだけ探す心当たりがあります」
§ § §
翌日、まだ日も高くないうちに洞穴を出た私達はヤスコを先頭して森を進む。
どこまで進むのかしら?そう疑問に思いかけたころようやく止まりヤスコは口を開いた。
「お姉様この場所覚えてますか?私達はここでエリンを抱えたフェラルオークの集団に遭遇したんです」
その言葉を聞き、私はあたりを見回す。
「そいう言われてみれば見覚えもある気も……」
「エリンを抱えたフェラルオークの集団はあそこから来たように思えます。幸いにもこの辺りは柔らかい土が露出しているためうまく足跡をたどれるかもしれません」
私達はヤスコの指さす方向に進み、そして慎重に地面を身ながらゆっくりと足を進める。
「お姉様!ちょっとここに来てください!」
その声を聴いた私達は急いでヤスコの方へ戻ると、ヤスコは地面を指さしながら言葉をつづけた。
「ここに薄っすらですが足跡が残ってます。そして洞穴の方へ向かっています。大きさ的にもフェラルオークの物で間違いありません。この足跡をたどっていきましょう」