20 抱えている物は……?
「地図が欲しいわね……。こう深い森じゃ歩いている方向も分からなくなるわ。」
船で一夜を明かし翌日、日の出とともに再び船外に出た私達は再度北に向かって歩き出していた。
代り映えしない風景が永遠と続く感じね。
幸い手元の情報端末のレーダーで方位が分かる為かろうじて迷子にならずに済んでいる。
「マップが開ければよかったんですけどね」
最初は自然の景色を珍しがっていたヤスコも今では感動も薄れたのか淡々とした様子だ。
見かけるのは虫や鳥、中型の生物のみで幸い昨日襲い掛かってきた生物にはまだ出会ってなかった。
「……お姉様」
ヤスコが足を止め抑えた声で顔をこちらに向ける。
「えぇ……こちらにも反応あったわ。何かいるわね」
レーダーには私達以外の何者かがいる事を示す光点が複数表示されていた。
今度は複数か……
その表示から、対象は少しずつこちらに向かって移動しているようだ。
「昨日と同じように一旦隠れましょう。……今日は見つからないといいわね……」
ヤスコと私は苦笑いしながら体を隠せそうな茂みに移動すると腰を落とし様子を伺う。
そして私達が隠れてからたっぷり数分後に対象は姿を現した。
あれは……昨日と同じ様な個体ね……
複数の光点の正体は昨日襲い掛かってきた個体と同じような恰好をした生き物だった。
だがよく見ると一匹だけは身に着けている物が違っていた。
よく分からないアクセサリーのようなものを多く身に着けている。
そしてその後ろに続く個体の中も目を引くものがいた。
あれは……。抱えているのはもしかして人?
腕に人のような物を抱えている。その姿から見るにおそらくは女性の様だった。
ピクリともしないところをみると、おそらくは死んでいるか、意識がないのね……。
視界から遠ざかるのをまってからヤスコに尋ねる。
「ヤスコ、アレはどう視るかしら?」
「おそらくはどこかから拉致をしてきたのではないでしょうか?といっても未知の生物です。もうすでに死んでいてアレを食料にするために持ち帰っているという可能性もありますが……」
「……それはあまり考えたくはないわね」
「アレはお姉様達プレイヤーに似ていると思えました。もし生きているとしたら意思の疎通ができる可能性があります」
「そうね……。行きましょう。アレが生きているのか確認して、もし生きているのなら確保しましょう」
「最悪死体からでも所持品を調べれば何か分かるかもしれません。もし……」
ヤスコはそこで言葉を切ると、私に微笑みかけながら言葉を続けた。
「アレが生きていてお姉様に敵対行動を示してた場合は、私が処置しますね」