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02 艦隊集結

 どの程度目を瞑っていただろう?

 HDハイパードライブ特有の振動が収まっているのに気が付いた私はそっと目を開ける。

 そして各種計器に目をやると目的地に着いたことを確認できた。


 さて……ここからが本番ね……


 ここはまだCBC/RUS連合の勢力区域ではないが、このまま暫く進めばそうなってしまう。

 まずは前線に出ている味方と合流する必要があった。


 私は一旦船を止めると後方の区画へと歩き始めた。

 そしてある区画の部屋に入ると左手に装着してある携帯型デバイスのコネクタをスリットに挿入し操作を始める。


『認証シーケンス開始します……シーケンス終了……マスターと認識、起動プロセスを開始します……』


 いかにもな合成音声があたりに響くと機械の作動音と共に目の前のポットがほのかに明るくなる。


『起動プロセス終了』


 その声を合図にしたかのようにポットが開くと、中にいるのは碧色の服を着た人……アソシエイトフェローとよばれる合成人間だ。

 そしてゆっくりと目を開けると……


「お姉様、おはようございます」


 とても美しい声で少女は微笑みながら言った。


「おはようヤスコ、早速だけど貴方の力を貸してほしいの……かまわないかしら?」


「もちろんです!何をしますか?」


「あなたには索敵と、アサルトドローンの操作をお願い出来る?敵を発見してもとりあえず攻撃しなくてもいいわ、報告を最優先に」


「はい、でも敵って?」


「あ……そうね……今の敵はCBC/RUS連合よ、これから味方と合流しにいくわ」


 そして二人で指令室へと戻る。


 アソシエイトフェローとは『フリーダム・ファンタジー・オンライン』においてプレイヤーを手助けするAIで動くNPCの一人だ。

 プレイヤーには及ばないがある程度までは育成しスキルを伸ばすこともできるのでソロのお供や着せ替えといった育成ゲーム擬きの遊び方が出来るので所持しているプレイヤーもそれなりにいると思う。


 市販の汎用合成ボディをもとに容姿や性格、声などは私がカスタマイズしている。

 つまりは美しい声というのも私が聞いて美しく聞こえるということであり、『お姉様』と呼ぶのも私がそう設定したからで……

 こんな妹が欲しかったという私の願望の現われかもしれない……


「お姉様、宙域C-1-N20にてギルドの艦隊が集結してるようですけど、どうしますか?」


 しばらく物思いに耽っていた私はヤスコの声で意識を集中させる。


「宙域C-1-N20か……割合近いわね、了解。船をそこに移動させるわ」


 移動しながらも辺りの索敵はそのまま続行する、移動中単独で敵艦隊に遭遇したらシャレにならないかだ。

 そしてしばらく移動すると指令室の外部の様子を映し出すスクリーンに集結しつつある艦隊が見えて来た。


 って、この数……すごい、ギルドは全力出撃なの?

 うそ……あれってもしかして超弩級戦艦のジュピター……それも1隻じゃないわね……何隻いるの?


 超弩級戦艦ジュピターは『フリーダム・ファンタジー・オンライン』でも特別な戦艦だ。

 戦艦というより移動要塞といったほうがイメージが近いだろうか。

 これを複数隻持つことが大手ギルドの条件の一つと言われている。

 ジュピターは攻撃力、防御力共にこのゲームのいわば最強の船。

 しかしそれ以上にこの船の特徴としてはHDPハイパードライブポータブルを展開できることにある。

 簡単に言ってしまえば一個艦隊を丸ごとHDハイパードライブで送りこめたりしてしまう、まさに戦略兵器といってふさわしい性能をもっていた。


 しかしジュビターを操縦するには効率的な育成をしても最低2年程かかり、しかも一人では動かせない。

 製造も資材のストックがあることが前提で最低2か月以上かかるという代物だった。


「お姉様、ジュピターX-05より通信です、繋げますね」


 スクリーンには赤毛の男性が映し出される、ギルドの幹部の一人であるアドルだ。


「アドルか……お久しぶり、元気だった?」


「ヨシコもログイン要請でINしてきたのか、ご苦労だったな」


「ギルドはジュピターを何隻出してきてるの?あれが複数ある戦場なんて初めてなんだけど」


「あぁ……馬鹿な事をしでかしてくれた奴のせいでこっちも大変だよ。ギルドの上級幹部の一人が『いかなる犠牲を払ってでもCーS6S星系を取り戻せ!』って息巻いててな……」


 と言う台詞と共に溜息を付く。


「ここにあるジュピターは13隻だが、聞いて驚けよ、ジュピターを50隻まで運用許可が出てるぞ」


「……えっ?、本当に?それギルドにあるジュピターを殆ど出すってこと?」


「直接戦火を交わるとも限らないが………運用人員も足りないし準備だけで終わる艦もあると思うからな、それでも許可は出ている」


「それで……戦況はどうなの?ギルドで聞いた話じゃあまりよくないって話だけど……」


「それな、あんまり外にはだせないが結構悪い……。実の所ジュピターが何隻か沈んだ」


 そういうとアドルは渋い顔を作って話す。


「あたりまえだがCBC/RUS連合もジュピターを出してきている……おまけに星系は奴らの手の内だ、こちらは不利な状況で戦ってるから当然といえば当然なんだが……」


 ジュピターを沈めるにはジュピターしかない、と言われているからそれは当然だろう。


「幹部の間じゃこれ以上の戦闘は回避して撤退する意見も大きくなってきている……星系を失った上に艦隊をこれ以上失うのはまずいと俺も考えてるからな」


「それで?今ここに集まってる艦隊はこれからどうするの?」


「それはこっちも指示待ちだ。別動隊との集合地点がここでそれを今まっているところだが……」


「じゃ私もここで待機してればいいのね?」


「あぁそうしてくれ、こっちはもう半日以上戦い続けてる……。運がよければそのまま撤退、悪ければ星系に乗り込んで艦隊とやり合うことになる」


「できれば前者で有りたいわね、私の船を傷つけたくないわ」


「ヨシコは自前の船で来ているのか?そいつは災難だったな。俺も出来れば前者がいいな、もう疲れたし早くログアウトしたいよ」


 そして最後にお互い苦笑いしながら通信は終わった。

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