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その5

……今にして思えば。

数年ぶりに帰って来た秋音ちゃんなのに、私ってば大分冷たかったかもしれないけれども。


 ちょうど大学受験を控えたナーバスな時期だったし…魔法少女としてはもう3年近くはキャリアを積んでいたくらいだったかなぁ。

 

 社会人は3年目にひとつの山やら谷やらを迎えると聞いたことがあるけれど、魔法少女も3年目になるとそれなりの経験とその世界のルールを知る事となり、私は勉強も魔法も燻らせていたのである。

 ぶすぶすとくすぶるブス……まぁ受験生なんてみんなそんなものだろう。


 当時の私は大学に合格するしかもう生きる術がないと決めつけていたから、それはそれはもう必死だった。

 お母さんが認めるような都会の難関大学へ行き、そして誰も私の事を知らない場所で普通の女の子として人生をリスタートする。


 いざ、花の女子大生デビュー!!

 そんな割と日本各地の僻地にありふれていそうな高校生然とした願いを抱くようになったのは、そう…必然でしかなく――。



 まだ、魔法少女になる前の私。

 小学6年から、中学2年のあの夏までの――無垢な純粋さをよからぬ方向へと走らせてしまった、魔女秋音唯一の弟子時代の私。



 最初はお母さんにおねだりして、ピンクにフリルにレースにリボンにまみれた正統派魔法少女になろうとしたものの。

 それらしい服を初めて試着したときの店員さんのざわざわ感と、お母さんの心のこもっていない「可愛いかわいい」が、あの日の私には一切の高揚感を与えてはくれず、むしろ恥辱に膝が崩れて顔を伏せたのは忘れられねぇよ。

 

 ――まぁ、しかし。

 それが後に続く、私が私の為に編み出した魔法使いになるための試練開発のきっかけとなった様には思う。



 後日。

 結局正統派への道とお別れした私は、本格派として生きてゆくことを決意。

 ――まぁ、秋音ちゃんの弟子から始めた時点ですでに邪道でしかなかったのだけれども。

 纏うものはすべて黒、お小遣いが貯まれば文房具や小物も黒へと染めてゆく本物志向な私。


 そんな私のとめどなくあふれる予兆は、徐々に周りの人たちにも感知される事となる。



「おとめちゃん、最近なんか大人っぽいね」

「そうかな? 瞑想中にひょっとしたら時間の流れが…? そうか――」

「……え?」

「ううん、なんでもないの。少し集中するね」

「あ、はい」




「おい、黒○◆▽(自主規制)」

「ΨΣζ☸クソ☤ΞЖコロЗΩΩ★Ё△Ю(規制なし)」

「!?!?」



「明治さん、最近少し様子が変わった気がするのだけれど。先生はいいと思うのだけれど、もしかしておウチで何かあったとか、悩んでるとか……ないかしら?」

「悩みは尽きませんね」

「そう……例えばどんな悩みがあるの?」

「先生にも分かるような次元のものであれば」

「えっ」

「無機物への魂の固定化とかですかね」

「えっ」

「愛を知った人形に魂が宿る」

「――はい、えっ」

「愛されなかった人形に宿るものは?」

「えっ」

「そういう事です」

「えっ」

「ここは魔素が薄すぎる」

「明治さんっ!? 気を付けて帰ってねぇぇぇ!!」




 ……あれ?

 私、将来性ありすぎじゃね?

 やべぇ奴ドラフト1位余裕過ぎじゃね??

 はぁ少し思い出しただけで余裕で吐ける――秋音ちゃんの事笑えない、いや秋音ちゃんのせいだ!!

 ってかなんでお母さんは気づかなかったこれ!!


 ――そんな感じで周りから只人を滅した私は、それすらも選ばれし者の宿命とはき違え…いやあながち間違えでもなかったと、結果が伴ってしまっている今なら言えなくもないのだけれども。


 秋音ちゃんが言うところの――魔導の神髄。

 そこへ至るが為の試練を、神の啓示というか、悪魔のいたずらというか……。


 1パーセントの閃きを我が物とし、それを99パーセンツの努力で見事に実践したのである!!



 私、バカッッ!!



 ――はぁ。

 これでまだ魔法少女になる前だから、辛い。

 私の人生ほぼダークサイド……。



「…と、ちゃ……おとちゃん」

 

 心地よい揺さぶりと優しい声でゆるやかに目が覚める。


「あ、ごめん寝てたみたい」

「ううん、おとちゃん今日頑張ってたからね。私、先に休憩入ったからもう行くねぇ」

「ありがとう、私もすぐ行くねぇ」


 そうしてとんがり帽子を被ったウィッチゆみちゃんが、休憩室からいまだアイドルタイム真っ最中のホールへと召喚されていった。


 

 ……こんな私だけど、今こうしてデリシャス・ヘルでゆみちゃん達と働いたり、お客様に喜んでもらえるのが楽しいと感じている以上、すべてが闇だと言うつもりは毛頭ない。


 嬉しいことや楽しいことは、私の気持ちとともに高く高く上がってすぐに離れてゆくけど、悲しいことや辛いことはどんどん沈んで積み重なり、私を引きずったままいつまでも溺れさせようとする。


 だから。

 そんな気持ちに負けないためには、私自身がひたすらにひたむきにもがいて泳いで、上へ上へと飛んでゆくしかない。


 ……よし!!


 魔女帽、ケープ装着!!

 働きまウィッチ!!


 ――デリヘルって言ったやつはΨΣζ☸クソ☤ΞЖコロЗΩΩ★Ё△Ю!!(規制あり)


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