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その1

永遠(とわ)なる命――其方にくれてやろう」

「……」

「…………」

「永遠――」

「結構です」

「なっ!?」


 私の頭上をゆらゆらと漂う男――如何にも悪魔然とした整った顔立ちに鼻持ちならぬ上から目線で喋ってくるそいつは、どうやら私の返事に御理解頂けていないご様子。

 ――いやいや。

 こっちの方が理解出来ないって。

 見えぬ聞こえぬ素振りをして、いなくなってくれるのを期待してみたのはかれこれ1時間ほど前だったろうか。

 トワナルイノチソナタニクレテヤロウ――いろんなパターンでそれしか言わないもんだからこっちも覚えちゃったわ。

 何回か「あれ、見えてないのかな?」なんつって超至近距離で見つめられたりしても、恥じらう乙女の動揺は必死に心の中に留めておいたりしたのに……なんで悪魔なんだよこのイケメンはちきしょうめ。


「お前……やはり見えていたのだな!? この、悪魔めっ!!」

 お前が言うな!!

 いや、そのうるうるした目はやめてほんとやだ嫌いじゃないむしろ好き!!


 好きだがっ!!


「……お帰りください」

「何故だ!?」

「帰れ」

「怖いっ!! だがこちらとて悪魔の矜持――」

「てぃやっ!!」


 ぬおぉぉぉっ――という不快な奇声をあげながら、悪魔は突如として後方へと吹き飛ぶ。そしてそのまま部屋の壁にぶつかる事なくすり抜け、やがて奴の(さえず)りもまったく聞こえなくなった。


「まったく。私の結界を躱すって事は、割と上位の悪魔なんだろうけど――」

「そうに決まっておろう、我が名は――」

「ていやっ!!」


 ぬおぉぉぉっ――というデジャヴボイスを遠ざけながら、私は新しい結界を家ごと囲むように再構築する。

 二重……いや三重にしておけばとりあえず一週間くらいは保つだろうか。



 永遠の命ぃ?

 そんな安い売り言葉で私を飼おうなんて、なんて浅はかで恐ろしいのであろう。

 そんなものより仕事――そして、愛をくれ。

 奴らにとっては価値のないであろう、常ともなく落下し続ける星屑の如き拙い感情と営み。

 私は……ただただ普通の人生を送りたいそれだけ、それだけしか望まないのに。



 ――明治乙女。

 

 只今就職浪人真っ盛り。


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