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やめておけ、(色んな意味で)死ぬぞ

※注意・この作品にはパロネタとか、ついていけないノリが満載です。それでもいいという寛大な方はどうぞ読んでみてください。

 

「あぁ――――っ! お前、今の絶対ヘッドショットだったろ! さてはラグか、ラグ神拳の使い手か⁉」


 あぁ、またいつものか。

 大学生の自由を縛る数少ない存在、めんどくさい講義を終えた俺はいつもの癖で部室に足を運んでいた。

 そして、その扉の前で我らが『サブカルチャー研究部(通称・サブ研)』の名誉部長こと、留年生の前園(まえぞの)先輩のあげた雄叫びが聞こえたのだ。


「越えられない……! キルレシオ一・五の壁が……! 万里の長城なんて比じゃねぇ、高すぎる壁が……」

 先輩がやっていたのはやはり、特殊部隊の隊員を操作して戦う所謂FPSゲーム。部室に置いてある大型の液晶テレビと最新ゲーム機であるP○4を使って遊ぶそれを、先輩はまるで本当に自身が戦っているみたいにやっていた。よくあそこまで必死になれるな、と思いながら俺は近くにあるパイプ椅子へと座る。


 先輩は睨み据える様な三白眼で液晶テレビのモニターにかじりつき、ぼさぼさの黒髪を左手で掻いていた。あれは相当頭にキてるな。

「もういい、もう本気だすわ。次のラウンドは、とっとと突撃して終わりにしてやんよ」

 先輩は一応年頃の女性だというのに、まるで化粧などしていない。すらっとした目鼻立ちや、少し小さめな顔の輪郭は着飾ればモテるだろうに、本人が「アタシはオタク文化と結婚した」と宣言するほどのダメ人間なので、もう手遅れだろうな。

 服装も『働いたら負け』と書かれた何処かで見た事のある白いTシャツと、ベージュのチノパンという時点でお察しだ。おまけに煙草吸ってるし、眼つきも悪いしで役満だわ。


「キルレの壁を越える前に、大学卒業の壁を越えてください。それと、顔真っ赤にしてたら勝てる勝負も勝てないッスよ」

「確かに、百理あるわ。流石は我が後輩。落ち着け、落ち着くんだ前園麻綾(まえぞのまあや)……」

 画面を見ながらテーブルに置いてるハイライトの煙草咥えて、なおかつ敵をばしばし倒してるよこの人。無駄にめちゃくちゃ器用だ。煙草の煙で前見えなくなったりしねぇのかな。

「っしゃあオラァ! アタシが一位だこのヤロー! ……、疲れたもうやめる」

 おまけに躁鬱の差が激しい上に気まぐれだから、始末に負えない。何処からか持ってきた名誉部長専用の柔らかいソファーに座ってコントローラーを持っていた先輩は、大きなため息をつくと共にコントローラーをテーブルに置く。そしてコンビニで買ったと思われる、きな粉餅アイスなる物を美味しそうに食べ始めた。


「やっぱFPSで疲れたらコレだよなぁ~。――――さてと、じゃあ気分転換にフォー○アウト4でもやるか」

 ずっこける俺。

「いやいや! ゲーム疲れたんじゃないんスか⁉」

 パッケージを開けてディスクを入れ替えながら、得意げな顔で俺の方を指さす先輩。

「アタシは、誰かと戦う事に疲れただけだ」

 何上手い事言ったみたいな顔してんだ。つうか、そのゲームも核戦争後のアメリカで好き勝手暴れまわるゲームじゃねぇか。

「いや、マジでベ○スダは神に近い何かだわ。ただちょっと今回はRPG要素が少ねぇかな。おらぁ、そこにあるガラクタよこせ化物共」

 コントローラーを再度持ち、金属バットを持った主人公で次々と化物やらレイダーやらを倒していく先輩。一応この状況、年頃の男女がひとつの部屋で二人きり。まぁ、女性の方は暴言をまき散らしながら、世紀末アメリカで暴れまわってるんだけどな。


 折角の青春だというのに、コレはあんまりだろ。今からでも遅くはない、先輩をダメ人間から真っ当な女性に更生させよう。思い立ったが何とやら、俺は先輩に向けてぐさりと刺さる質問を投げかけてやる。

「――――先輩って、ゲームしかしてなくないッスか? 流行のファッションとか、知らないっしょ。一応年頃の乙女として、それはどうなんスか?」

「……いやいや、そんな事ないから。乙女パワー全開な事、色々やってるから」


 一瞬の沈黙。


「好きな異性のタイプは?」

「スパ○ク・スピー○ル。もう一話見た時からひと目惚れだから。しかも声が山○宏一さんとか反則かよ。」


「最近感動した事は?」

「久しぶりにやったスー○ァミ版のドラ○エⅡ。あのメニュー画面のBGM聞いただけで涙腺崩壊したわ。おじさんの家でやった、幼き日の記憶が思い返されたわ」


「……好きな洋画は?」

「ダー○ナイト。ヒ○スのジ○ーカーが鳥肌モンの厨二発症ウイルス、マジでおすすめ。あの監督はマジで見せ方分かってる」


「……なら、好きな邦画は?」

「ソナ○ネ。何かこう、見た後で自分に監督の芸術家オーラが注入された様な感じになる。後、結構バイオレンスっつうか、えげつないシーンがあんだけど、それを帳消しにするくらいいちいちカットとかが綺麗なんだよ」


 またも沈黙。冷や汗が一滴、先輩の額に流れた。

「――――ダメ人間、いやダメ乙女じゃん!」

 俺は先輩を指差して糾弾する。

「なんでだよ! どこにダメ人間要素があんだよ! 見事な乙女だろうが!」

 ゲームを止めて、必死に自身がダメ人間である事を認めようとしない先輩。

「全部だよ! 今までに至る全てだよ! 完全に男じゃねぇか!」

 先輩も俺もヒートアップし始め、互いに椅子から立ち上がって激論を交わす。その時の俺は、言い様の無い使命感に駆られていた。もうすぐ長い夏休みに入ろうかという、大学二年生の七月。周りのリア充どもはやれ海水浴だ、やれ花火大会だと浮かれている。そんな中一年前の俺たちサブ研はというと――――。


「夏は何かするんスか先輩!」

「は? 何テンション上がってんだ、我が後輩。だがまぁ、昂るのもしゃあねぇか。夏はPCゲームのサマーセールにコミ○で出た同人誌のチェック、おまけにアニメの一気見まであるからな……。人生のモラトリアム期間、全力で楽しもうぜ!」


 問その一、この言葉が先輩から放たれた当時の俺(花の大学一年生)の心境を答えよ。

 答えは、絶望だ。黒よりも黒く、地球上のどんな穴よりも深い絶望だったよコノヤロー。ここで、そんな事を言うならリア充サークルへ入って一緒にパリピにでもなっとけ、と人は言うだろう。

 だが、違うんだ。俺が求めた青春は悲しいかな、この人抜きじゃあ始まらないんだ。あの時、新入生を一人でも獲得しようと、多くのサークルの先輩たちが入学式の会場である体育館を取り囲んだ時。


 まさに、ひと目惚れだった。

 萌えイラストが描かれたサブ研のプラカードを持ち、恥ずかしそうにしながらも人の波の中で必死にプラカードを掲げる、黒い髪のまごうことなき美女を。上目遣いでこちらを見て、目線があった瞬間恥ずかしそうに顔を赤らめながら背けた、奇跡の美女(めがみ)を。

 あの時から今もずっと、俺はその女神の虜になってしまったのだ。


「カウ○ーイ・ビ○ップが好きな女子だって、いるかもしれねぇだろうが! エンディングの曲を聞きながらかっこつけて飲んだウィスキーのマズさと高さに、むせび泣く美少女がいる可能性をアタシは信じてる! くそぉ、わたしもあのくっそ脳に届く声で『あぁ、悪い夢さ……』って言われてぇ!」

 まぁ後に、その女神はこの絶望的なダメ人間が新入部員を釣る為に、知り合いの美容師に頼んでフルカスタムしてもらった姿だった事が分かったんだけどな。

 マジですごいよ、その美容師。どうやったら埴輪から銀の女神像を錬成できんだよ。等価交換の対価として、本人どころか一族郎党根こそぎ持ってかれちまうよ。

 とまぁそんな訳で、あの日から俺はこのダメ人間極まりない女神に魂を握られてしまったのだ。


「しょうがねぇじゃ~ん。だって好きなんだもんよ~。それが好きだからオタクやってんだもんよぉ。アタシにとってオタクってのは生き方なんだよ~」

 ソファーに座って体を左右に揺らしながら、口をとがらせて世の中への不平不満を垂れ流す先輩。しかしその内、何かよからぬ事を閃いた様で悪そうな笑みを浮かべ始めた。あ、これ俺も確実に巻き添えくらうパターンだわ。


「……、ふっふっふ。なるほど、つまり乙女だの真人間だのって概念を、そもそもぶっ壊せばいいんだな?」

 おい、何言ってんだこのアマ。おいおい、何かきわどい萌え絵が描かれたCDを段ボールから何枚も取り出して、アンタは一体何をするつもりなんだ!

「先輩、武力行使へ移る前に一応聞いときます。何するつもりッスか」

 俺は、恐らくエロゲの特典ドラマCDと思われるものを、両腕一杯に抱える先輩の前へ立ち塞がる。そんな俺に、神妙な顔で先輩はこう言った。


「催眠オ○ニー用のエロい音声を、放送部の設備を使って垂れ流すんだ」


 いっけねぇ、もっとやばかったわ。

「アホなんスか⁉ 前回も放送部と軽音部の機材パクって中庭でゲリラアニソンライブを敢行したら、エレキギターと無線機で殴られかけたばっかじゃないッスか!」

「どけ我が後輩! この音声使って大学中を興奮させて、よくあるエロアニメみたいにするんだ! そうすりゃ乙女がどうだの、常識がどうだのなんて綺麗事はまとめて霧散する! アタシは混沌の配達人なんだよ!」

 エロボイスCDという名の爆弾を手に抱えて、防衛線と化した俺を突破しようとする先輩を、カバディー選手ばりに素早い左右のステップを繰り出す事で押しとどめる。

 そんな感じで俺が機動防御を展開している部室の入口の近くへ、また面倒な女がやってきた。

「また何かやるつもりなんですか、センパ~イ。ウチでよければ手伝いますよ~」

 ギャルっぽい喋り方と、先輩と言う呼び方の独特なニュアンス。間違いない、奴だ。

 オタギャルこと、三條彩音(さんじょうあやね)。如何にも巷のギャルっぽい、流行の雑誌に載ってそうな服装やアクセサリは、まさに先輩と相対極にある。先輩ほどではないが白い肌と綺麗にウェーブがかかった茶髪、耳につけたイヤリングや爪に塗られたピンクのマニキュアなど、もはや先輩とは別の星からやってきたんじゃないかと思うほどだ。

 そしてこの人も無駄に顔立ちが整っている。少し垂れた目と高い鼻、そして先輩より少し小さいと思われる胸。先輩が磨かれていない原石だとしたら、彩音さんはきっちりと華美になりすぎない程度に磨かれた宝石だ。

「良いところに来たな、彩音! ちょっと我が後輩をどかしてくれ! これも革命の為だ!」

「なんですか、バスティーユ監獄でも襲撃するんですかぁ? とりあえずオッケーで~す」

 くそっ、流石はサブ研で一番武力のパラメーターが高いと先輩が評するだけはある。羽交い絞めにされた俺は身動きがとれない。このままでは校内がエロアニメみたいになってしまう! 

 だが彩音さんの胸が俺の背中に当たっている事を考慮すると、俺はこの状況をしばらく堪能する事にした。

 あっ、なんか今の状況ってラブコメっぽくね?

「うわ。なんか後輩クン、幸せそう。んじゃあ、絞めるわ」

 前言撤回。彩音さん、俺にチョークスリーパーかけて来たわ。ラブコメ的じゃなくて、プロレス的な意味で俺を落とす気だわコレ。

「フハハ! 革命成れり!」

 放送部の部室へと疾走していく先輩。一方の俺はというと。

「ちょっ、彩音さん? これ、気道をガチで締めてるんスけど?」

「頸動脈じゃないから、イケる逝ける」

「アレ? なんか二回目のイケるって、ニュアンス違ってる気がするんスけど? 意識が遠のいてきたんスけど?」

 これが、青春を目指している俺の日常だ。おかしい、まだサブ研には何人ものイかれポンチがいるといっても大前提として今、俺は美女二人に囲まれてるんだ。何故、ここまで青春っぽくない?

 やはり、惚れた女神はダメ人間だったからか!


 ちなみに先輩は、放送部から危うく有線マイクのケーブルで絞殺されかけたそうだ。


 という訳で、試験的に脳髄の赴くまま書き切ったお話を投稿します。いやぁ、これだけパロネタをぶち込みまくって大丈夫なんですかね?

 本来はまったく、いやちょっと毛色の違うファンタジーものを書いているので、こういう大学で馬鹿騒ぎをする話を書くのは新鮮でした。

 こちらの方は、次を書くのかどうかも決まっていません。

 最後に、私の趣味を全力で垂れ流して、こんな駄文を書いてしまった事を深くお詫びします。

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