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勇者ですが逃亡生活を送ってます  作者: 猫ぱんてぃ
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空の旅


 俺は今、竜化したエレーネの背で快適な空の旅を満喫している最中である。

 ここ辺りの地域は雪が降る事が多く、昨夜のような猛吹雪になる事もある。

 現在は日の光も心地よく、少し暖かい。

 エレーネが風で飛ばされないよう結界を張っているおかげで、風は一切感じない。

 風を感じる事が出来ないと言うのは、それはそれで寂しい気もする。それこそ、結界が無ければ自身を吹き飛ばすほどの突風を浴びる事が出来るが。


「どうだ、エレーネ。それっぽい所はあるか?」


 それっぽい所、と言うのは人が住んでいそうな地域の事だ。大きく発展した町でも、少し廃れているような村でもいい。

 そこに人がいて生活しているのなら。

 食料を補給し、宿をとる事くらいは出来るだろう。


『今のところ見当たらんな。見つけたら連絡する』

「ああ、頼む」


 いつまでも外を風景を見ているのも退屈なので、横になって楽な姿勢をとる。

 猛スピードで移動をしているが、エレーネの背はあまり揺れを感じないので眠る事も出来る。

 さすがに少し硬いので、長時間寝ていると少々体が痛むだろうが、仮眠を取るくらいならば何の支障もない。

 さっそく、エレーネの声がかかるまで仮眠を取ろうと瞼を閉じる。

 それなら意識が沈むまで、そう時間はかからなかった。


『…い、おい…。おい、ハルト!』


 自身の名を呼び声が聞こえたので、意識を覚醒させていく。


「ん…。見つかったのか?」

『いや、そうではない。あれをどうするべきが聞きたかったのだ』


 どうやら、他の理由があって呼んだようだ。

 既に移動はしておらず、一箇所に留まって飛んでいる。


「あれって…?あぁ、なるほどな」


 エレーネの言うあれ、と言うものがなんなのか一目見て分かった。

 三人の男女が、エレーネには到底及ばないものの、それでも人の数倍以上はある竜と戦闘をしている。

 格好からして、唯の冒険者という風には思えない。装備が豪華すぎる。

 いいとこの貴族が、格好だけ揃えて冒険者を気取ってるようにも見えない。

 一人の少年と、二人の少女で構成されていてその全員が黒髪だ。

 その時ふと思い出した。

 召喚された異世界人には黒髪が多い、と。


 もしかすると彼らは、アンコントローラブルな勇者である俺を倒すために召喚されたのかもしれない。それならば、冒険者にしては不自然なほど小綺麗な装備にも納得がいく。

 

 だとすれば、関わりたくないのが本音だ。

 だが、見るからに状況は劣勢である。

 このままいけば、彼らは竜に生きたまま食われるか、そのまま殺されるかだろう。

 どのみち碌な未来は待っていない。

 年も自分の幾つか下くらいだろうか、彼らにはまだ未来があったはずだ。

 それを無理やりこの世界に連れてこられて、訳も分からず人生を終えるというのは、あまりにも可哀想すぎる。


 仮に自分の命を狙っている相手を助けるのだとしたら、それほど愚かな事はないだろうが、確証もない。

 これはたまたま異世界人と特徴が一致した冒険者を助けるだけだ、と自分の中で言い訳をしつつエレーネに指示を出す。


「エレーネ、頼む」

『うむ。その選択はやはり、お主らしいな』


 やはりエレーネにはお見通しだったようだ。

 なんだかんだ付き合いも長いので、当たり前なのかもしらない。

 それほど俺は、単純な奴なのだ。


 ぐん、と滑空しどんどん竜と彼らの方へ近づく。

 あっという間に目の前まで来た。

 一人、竜に剣を向けていた少年が気づき、遅れて後衛職と思われる少女二人がこちらに気づく。

 竜もこちらに気づいたようだが、時既に遅し。

 竜化したエレーネの鋭い爪によって首を引き裂かれ、竜の首が空に舞う。

 そのままスピードを維持し、過ぎ去っていく。

 あまりに突然の事で混乱しているのか、全員呆然と立ち尽くしているだけで幸いにも顔は見られていないようだった。

 これでいい。

 助けはしても関わらない。

 彼らが俺の命を狙う異世界人であろうと、知ったことか。


 もし仮に、彼等と対峙する時が来るならば。

 その時は、正々堂々相手をしてやろう。


『本当に良かったのか?奴ら、おそらく異世界人だろう』

「そうかもな。まあいいさ。今のところ何の脅威でも無い。ひょっとしたら、お前を倒せるくらい強くなるかもしれないな」

『お主は本当に大馬鹿者だ。自身の命を狙う者すら救うとはな。しかしまあ、そのおかけで我はこうして生きているのだがな」

 

 確かに俺は大馬鹿かもしれない。

 エレーネと戦った時もそうだった。

 あの時、勝利を収めた俺は弱った彼女にとどめをさす事も出来た。

 だがどうしても出来なかった。

 彼女には最初から最後まで、殺意が感じられなかった。戦闘中でさえ。

 そんな彼女を殺す事は出来なかった。

 俺は甘っちょろい勇者なのだ。

 このままでは、いつか身を壊すかもしれない。

 魔王を倒しても、俺はヘタレな勇者のままなのだ。


『町が見えてきた。ここら辺りで降りるぞ』


 どうやら町を見つけたらしいエレーネは、人に見られぬよう離れた場所で上陸するする。

 竜化した彼女の背から飛び降りる。

 それと共に彼女は再び光に包まれ、人の形となる。


「さあ行こうか」


 これからは町まで歩く事になる。

 どうせなら町まで飛びたいものだが、飛んでしまえば更に面倒くさい事に巻き込まれるのは目に見えている。

 俺とエレーネはともに、隠蔽効果のあるフードを深く被る。

 人前に出る場合はこうしておかないと、俺たちの顔が誰に知られているかなど分かったもんじゃない。

 平穏な生活を送るためには、しなければならない事なのだ。


♦︎


「今までの町とはまた、随分と雰囲気が異なるな」


 エレーネの言う通り、門を通ってみれば奇妙な雰囲気のある町だった。

 今まで訪れた町や村は基本的に人族が多くを占めていたのだが、この町は圧倒的に人族が少ない。

 エルフやドワーフ、獣を思わせる耳を生やした獣人が殆どだ。

道沿いに展開している商店を切り盛りしているのも人族は少ない。

 

「確かにこんな町は初めて来たなあ。元々人族は住んでいなかったのかもしれないな」


 人族の間で戦争が起こり、その戦争から異種族が多く住む町に移り住むというのはよく聞く話だ。

 この町も、同じような事が起こった結果なのかもしれない。


「独特な町ではあるが、基本は変わらんだろう。さっさと食料を買い宿を取ろう」

「それもそうだな」


 エレーネの意見に同意し、まずは食料を売っている店を探す。

 丁度、近くに肉や野菜と言った食材が売り出されている店を発見する。

 保存の効くパンや干し肉も揃えていたので、肉を少量とパンと干し肉を二人分購入する。


 「あとは適当に宿を探すか」

「うむ。我は何処でもよいぞ」


 ぶらぶらと、町の観察も兼ねて歩き回る。

 やはり人族は少ない。

 こうなってくると理由が気になってくる。

 思わず、通りすがりのエルフの男性を呼び止める。


「すいません、この町は随分と人族が少ないみたいですけど何故ですか?」

「ん?あぁ、この町はな元々人族が多かったみたいだけど、他種族の各国で大きな黒い竜が暴れたせいで住む所を無くした者たちが住み始めて、寿命の短い人族はどんどん数を減らしていくからこうなってるんだよ。かく言う俺も里を黒い竜に襲われて住む場所を追われた身だ」


 大きな黒い竜って、エレーネが竜化した時の姿と完全に一致してるんですがそれは。


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