11 エピローグ N→O
立方体の中に作られた完全な世界。
そこには完全な神がいて、完全な人がいた。
ある日、人は神の死に気付いた。
人は「自らが神を殺したものである」と嘘をついた。
すると人の中からあらゆる災いが飛び出し――、
世界は完全でなくなってしまった。
人の中には何が残ったのだろう?
……ここはどこだろう、白い部屋だ。
椅子に座っていた女性が、「初めましてO、私は慈 満夏」と言った。
その名前は、どこかで聞いた事がある気がした。
暗号鍵と名乗った男が、右目を閉じ、次に左目を閉じた。
その行為は、とても奇妙に感じた。
私も右目を閉じ、次に左目を閉じてみた。
私の視界は微妙に変化し、奥行きが失われた気がした。
私はその原因を考えた。
私は自分の手を見た。
銀色に光る私の手は、彼のものと違うように見えた。
手。
私はなぜ、これが手だと知っているのだろう。
私は指を動かしてみた。
私はどこで動かし方を覚えたのだろう。
暗号鍵と名乗った男は、口の端を上げ、去っていった。
世界は驚きと疑問に満ち、全ては新しかった。
それは0と1が見せる幻影。
あるいはその狭間。
私は自然に彼を追いかけていた。




