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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
88/346

遠慮

 夜になり俺は外に居た。

 外と言っても宿屋の屋根の上だけどね。

 レベリングには行かないよ、約束だもの。

 水奈の手を握る事なく夜を迎えるのは、転移して来て初めてだな。

 水奈の為にと思ってしていたのに、思っていたよりも俺も寂しいらしい。

 水奈も同じくだったようだが、穂乃香が手を握ってくれたようだ。

 あいつ水奈の事大好きだからな。寂しがってるのを理解して握ってくれたみたいだ。

 俺は寝付けなくて外に出た。前まではあんなに眠たがってたのに、寝てよくなってから眠れなくなるとは皮肉なものだ。

 

 

 月島 氷河

 新スキル『MP自動回復Lv1』『召喚術』『調教Lv7』

 レベルアップスキル『盾術Lv5』『斧術Lv7』『蹴技Lv5』『居合術Lv5』『結界術Lv5』『聖剣術Lv9』『軽業Lv7』

 

 

 今回はイエンロード全域だけでは無く、隣国の『グリントス』の一部まで見る事が出来た。

 イエンロードはブルーゼムほど国土が広くないからな。

 MP自動回復は少し前に手に入っていた。MPの消費と回復をしまくった結果だな。

 初めて自分で得る事の出来たスキルでもあるな。

 新スキル『召喚術』。

 これは契約対象を呼び寄せるスキルらしい。

 この契約対象は、もう一つの新スキル『調教』でティムしたモンスターや、奴隷術の奴隷も含まれるらしい。

 つまり空間魔法を使わずとも、水奈、穂乃香、ラミウム、フィサリスは呼び出せるわけだ。

 いよいよ奴隷という立場が明確になって来たな。見ない様にしていたが。

 フィサリスは望んでやった。ラミウムは望まれてやった。

 でも水奈と穂乃香は違う。

 俺は奴隷にするつもりはなかった、でもしてしまった。

 妹と幼馴染にして彼女を、手元に置くために奴隷にしたんだ。

 俺はどれだけあいつらに甘えてんだろうな……

 

『ふゎ~……ねぇ氷河。まだ寝ないの?』

「ああ、まだ寝付けそうにない」

『……やっぱりまだ悩んでる?』

「……ああ」

「――悩み事? お姉さんが聞いて上げよっか? ご主人様」

「フィサリス、何しに来た……って聞くまでもないか」

「うん。ポイント稼ぎ」

「正直だな」

「隠しても意味ないでしょ?」


 あぁその中に、善意と心配も含まれていると分かるからこそ、俺は反応に困るんだ。

 

「ご主人様この国に来てから何かずっと悩んでるよね~」

「よく分かったな」

「だって私ずっとご主人様の事見てるもん」


 うん、知ってる。

 

「ご主人様は一体何に悩んでるの?」


 ………………

 

「……イエンロードの隣国グリントス。平和そのもののその国に――前回召喚された隠居中の勇者が居たんだ」

「前回……というと60年前の?」

「あぁ64年前に召喚された勇者だ。そいつの記憶を見てな……」

「……何があったの?」

「……フィサリスはレベルが100に達した者がどうなるか知ってるか?」

「レベル100? 相当戦いに身を置かないと、それこそマグオート団長並じゃないと無理だと思うけど、人間の限界って呼ばれてるぐらいだからそこで終わりじゃない?」

「ああ、人間は(・・・)そこで終わりだ。レベル100を迎えた人間は魔人と言う名の魔族に進化する」

「魔族に!? でも魔族ってレベル100以上って訳じゃ無いよ!?」


 ああ、確かに魔族にはレベル一桁とかも普通にいる。魔族にはな。

 

「魔族とはそもそも魔人の眷属だ。人間から違いを否定され迫害された魔人。その魔人が人間を襲い孕ませて出来たのが魔族。つまり、魔族も元をたどれば人間なんだ。俺ら勇者は人間と元人間による戦争の為に呼ばれたようなもんだ」

「…………それで、ご主人様は何に悩んでるの?」

「決まってるだろ。あいつらを巻き込んでいいかどうかだ。俺らの中で人を殺した事があるのは俺とお前、ロータスだけだ。魔族と言う名の異種族ならまだ問題なかったかもしれない……でも元人間となればまた話は別だ」

「……ご主人様は優しいね。でもそんなの今更じゃない? クーデターを止めるのだって、言い方を変えれば殺し合いだよ?」

「ああ、だからダリアの相手をロータスに、サーシスの相手をお前に、リコリスの相手を俺にする予定なんだ」

「ふふふふ、ご主人様って私とロータスには容赦ないよね~。そういうとこ嫌いじゃないよ」


 ほんと、お前の好感度ってどうやったら下がるんだろうな。

 

「それに64年前に召喚された勇者がいるって事は、やっぱり元の世界に戻る方法は無いって事だ。俺らはこの先もこの世界で生きていく事を想定して、立ち回りを考えないといけない」

「……ご主人様は元の世界に帰りたいの……?」

「……そうだな……未練が無いわけじゃない。面白味には欠けるつまらない世界だったが、平和で幸せがありふれていた。こんなに色んな事が見えなくたって十分幸せだったんだ。……今はもう、見えない世界じゃ俺は生きられないんだろうけどな」

「……私はご主人様に居て貰わないと困るな~。じゃないとずっとあんな牢の中だっただろうし。私の人生はあそこで一度終わって、ご主人様に拾われてもう一度始まったんだもん。ご主人様が居なかったら今の私は無い、今の私はご主人様があるが故、もしご主人様が元の世界に帰れるってなったら私も連れてってね」

「……それもうほとんどプロポーズじゃね?」

「少しは揺らいだ?」

「相手が居なければ揺らいでたかもな。俺には穂乃香が居る」

「ちぇ~、次は揺らがせるように頑張るからね。諦めるつもりは全く無いから」


 全く油断も隙もねぇ。

 

「穂乃香がお前を警戒してるんだよ。実力的な意味で俺の隣に立てるのに、恋愛的な意味でも隣に立たれたら、自身が俺にとって不要になるってな。んな訳ねぇのに」

「贅沢な悩みだね。私はその立場の方が欲しくて堪らないのに。ご主人様的にはどうなの? 側室でもいいから私を貰う気無い?」

「穂乃香がそれを望んでないから無しだな」

「つまり正妻の許可が下りればOKと」


 どうしてそうなる。いや、そういう事なのか?

 いやいやいや。水奈は特例だ、あんなの穂乃香だから許された事だ。

 いけない事なんだ、ラミウムに対する事も。

 

「良いわけないだろ。そろそろ眠くなって来たから俺は戻るぞ」

「あ、ご主人様! 私とロータスには遠慮しないんだよね? じゃあ私が遠慮せず悩みを話せる相手になってあげるから、いつでも話してよね! 好意を向ける気が無いなら問題ないでしょ?」

「…………問題しかねぇよ馬鹿っ!」


 んな扱いできるかっ!

 やはりフィサリスと話すのは危険だ。

 悩み事の際は頼れる相棒フィアに話そう。そうしよう。

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