魔拳術
水奈と精霊の契約は無事に終わった。
精霊魔法と精霊を通して魔法を使うものの、感覚としては普通の魔法と変わりない。
水奈は回復術は使っているものの、魔法を使った事がない。
まずはその感覚から覚えねばならない。
「フィサリス、水奈に魔法の使い方を教えてやってくれ」
フィサリスは元々王子に魔法の指導を行っていた。
教えるのは俺より適任だろう。
何せ俺の魔法スキルはほとんどコイツから貰った奴だからな。
「私が……?」
(ご主人様の妹……つまり義妹。仲良くしておくべき)
「うんいいよ~。お姉さんが教えてあげよう」
「よろしくお願いします!」
あいつ囲い込みに入りやがった。そんな所まで神奈に似なくていいから。
俺には見えてると分かった上でするんだから、何というか大物だよなぁ。
そんなフィサリスに甘えてる俺も俺だな……はぁ……
「穂乃香、お前は俺とだ。来い」
「うん」
(氷君とふったり~氷君とふったり~)
訓練だってば。
穂乃香と二人で木の生い茂る林に入る。この辺で良いか。
「まず、穂乃香には魔拳術を覚えて貰おうと思う」
「魔剣術? 剣持ってないよ?」
「剣ではなく拳の方だ。お前後衛の癖にスキル持ってるだろ?」
(有象無象の矯正の為に使おうと思ってたアレかな?)
怖い事サラッと言うんじゃない。
あ、言ってない思っただけか。いや、それも駄目だわ。
「お前はステータス的にも前衛で戦えない訳じゃ無いからな。覚えてて損は無いだろ」
如月 穂乃香
Lv 11
HP 90/90
MP 90/90
STR (35)=52
DEF (20)=30 (+15)〔45〕
AGL (40)=60 (+15)〔75〕
DEX (35)=52
MIND (50)=75 (+5)〔80〕
INT (50)=75
LUK (20)=30 (+5)〔35〕
うん。レベル11のスペックじゃないよね。
なんだいその高さは。お前主人公かよ。
これで武器装備してないっていうんだから恐ろしい。
「魔拳術は拳に魔法を纏わせて使う技だ。慣れない内は水魔法で練習しろよ? 他の魔法だと怪我しかねないからな」
穂乃香の綺麗な手が傷だらけになるとか溜まったもんじゃない。
「慣れてもグローブを付けるまでは禁止だ。買うか、作るかする予定だから少し待ってくれ」
「作る!? 氷君が作ってくれるの!?」
「市販のグローブに魔力が上がる奴って少ないからな。穂乃香は魔法も使うからいっそ俺が作ろうかと考えたんだが」
(ぜひ! むしろ氷君の手作りが良い!)
手作りって……間違っては無いけども。
例え性能が低くとも既製品より、俺が作った物が良いのね。
お前俺の事大好き過ぎだろ。
こりゃ気合い入れて作らなきゃな。
「少し使ってみせるから、良く見とけよ」
「うん!」
「技を発動している間はずっとMPが消費される。だがら打突の瞬間に使うのが消費が少ないくていい……『ウォーターナックル』」
近くの木に向かって魔拳術を放つ。
拳を渦巻く水流が木の幹を抉り、折り倒してしまった。
森林破壊、ごめんなさい。
「まあ、ざっとこんな感じだな。慣れたら火とか雷とかでも問題なく出来る」
「水を拳に纏う……うーんこんな感じ?」
穂乃香の右手に水流が纏わりついている。
え、いや、なんで出来るの?
見たのたった一回だよね!?
おまっ、魔拳術の使い手の人、取得するのに一年間掛かったんだぞ!?
勇者補正なのか……? いや、穂乃香がおかしいだけだな。
「その水流を大きくして殴る瞬間に発動させる感じだ。お前は覚えが良すぎて教えがいがないな……」
「えへへ~」
くそぅ……良い笑顔しやがって。




