大精霊
街を歩きながら分かった事だが、予想通り8人カラフルローブ集団は目立つ。
そこでレベリングに当たっては二手に別れる事にした。
4人ならパーティーに見えなくないからね。
戦力的な意味と相性の悪さから、フィサリスとロータスは分けておく。
俺とラミウムも別ける。こちらも戦力の分散的意味合いもあるが、少し距離を置くべきだろうという判断だ。
喋らずに意思疎通が出来るから、気付けばやたらと話してるからな。
(すみません……)
謝るな。
そしてこういうのを減らして行くんだよ? いいね?
(はい……かしこまりました)
……うん。
あと同じ剣術を扱う日坂と神奈は同じパーティーにする。
そのため必然的に穂乃香と水奈が同じパーティーになる。
結果こんな感じ。
パーティー1
氷河、穂乃香、水奈、フィサリス
パーティー2
日坂、神奈、ラミウム、ロータス
うーん。フィサリスと同じパーティーになった。
でもこれ仕方ないんだよなぁ。フィサリスを向こうにすると、日坂と神奈に接近戦を教える人が居なくなる。
俺が教えれない事もないが、日坂は俺からは教わりたくないだろうし、結果としてフィサリスと同じパーティーになってるから意味なし。
出来るのは俺とラミウムを入れ替える事ぐらいだ。明日はそうする。
因みにする事は俺が居るパーティーはスキルアップを、もう一方はレベルアップを中心に行っていく。
レベリングは俺の十八番なのに……スキルが豊富だから仕方ない。人のだけどな。
日坂たちをレベリングのしやすい草原まで送り、俺たちは精霊の泉へと向かう。
水奈の精霊契約のためだ。
「ここがお兄ちゃんの言ってた精霊の泉?」
「ああ、俺が行ったのはブルーゼムのだが、イエンロードのも似た感じだな」
早くも水奈に精霊が集まり始めてる。早くない!?
俺全然寄って来なかったんだけど。
頑張って警戒心を解いて、それでも来たのフィアだけなんだけど。
『水奈凄いね。大精霊が二人で取り合いになってるよ』
水奈の周りを2匹の精霊が争うように飛び回っている。
『水奈ちゃんのパートナーになるのは僕だ!』
『水奈様のパートナーになるのはあたいよ!』
「あの……精霊様、そんなに争わないで下さい」
水奈の一声で精霊2匹の争いがピタリと止まった。
え、なに、どうしたの? ああ、契約したのか。
『わぁ水奈凄い。普通大精霊ってプライド高いから一人に一人しか契約しないのに』
「じゃあ俺はずっとフィアだけって事か」
『何氷河、私じゃ不満なの!?』
「まさか。こんな頼れるパートナー他に居ねぇよ。フィアじゃないと困る」
『ふ、ふん! 全く氷河は仕方ないんだから!』
やはりフィアのツンデレは和む。
そして穂乃香、フィアに嫉妬するのは止めなさい。君の嫉妬対象は精霊にも向くの?
『僕は土の大精霊シアド、よろしくね水奈ちゃん』
『あたいは水の大精霊クアアです、水奈様よろしくお願いします』
「シアド君にクアアちゃんだね。これからよろしくお願いします!」
『『はい!』』
シアドはまあ良いとして、クアアの喋り方には違和感がある。
元々は姉御肌と言うか、自分をあたいと呼ぶ系なのだろう。
では何故、ちょいちょい言葉が丁寧なのか。答えは簡単、水奈の信者だから。
水奈の記憶に触れ、マジ惚れし、崇拝するにまで至ったらしい。
水奈マジ半端ねぇ。やはり天使だったか。
「ねぇ水奈の精霊も大精霊って事は、人間サイズになれるって事?」
(見たい……! 水奈の理想の姿見てみたい!)
『もちろんなれるよ。水奈ちゃんちょっとMP借りるね』
「あ、待って――」
シアドとクアアが人間サイズ化した。
シアドはまんま俺の姿、クアアはまんま穂乃香の姿になっていた。
水奈の顔が真っ赤である。可愛い。
「水奈ぁああああ! 私も大好きだよぉおおおお!」
「や、ちょっと穂乃香! 抱きつかないで!」
水奈が穂乃香を拒否しているが、目の前に真実があるため説得力が無い。
「あたいが水奈様の一番なんだから!」
「水奈ちゃんの一番のパートナーは僕だよ!」
一人称があたいの穂乃香、違和感。
一人称が僕の俺、凄く違和感。
俺の姿をした精霊と、穂乃香の姿をした精霊が水奈の取り合いをしている。
渦中の水奈は満更でもなさそうである。カオス。
(僕っ子の氷君……可愛い)
穂乃香止めて。
(はっ! 私も大精霊と契約すれば、マイ氷君が手に入る!?)
なんだマイ氷君って。一家に一台みたいな言い方をするんじゃない。
それに穂乃香に精霊魔法の適正はない。
「穂乃香には適性が無い。実物の俺で我慢しろ」
「氷君……!」
(それは氷君を滅茶苦茶にしていいって事!?)
「自重」
「うぅ~……」
お前は精霊と契約を結んで何するつもりだったんだ。




