価値観
イエンロードへと向かう。
方法は空間魔法によるテレポート。これが早いからね。
国境付近まで一気に飛ぶ。空間魔法での移動は距離が遠いほどMPを使う。
人が増えれば尚更である。MPポーションが無ければすぐ使い物にならなかったなコレ。
国境には関所がある。入国、出国に当たっての個人情報の確認だ。
しかし、俺らのパーティーには王女であるラミウムと、元宮廷魔術師フィサリス、元近衛騎士団ロータスがいる。バレるのはよろしくない。
そのため、関所も空間魔法で通過させてもらう。
空間魔法阻害? 国境全てになんて設備されてないよ。 費用高いし。
イエンロードはブルーゼムとは敵対寄りの中立国だ。
奴隷アリアリのイエンロードと、奴隷ダメ絶対のブルーゼムは仲が良くない。
ただ小国であるイエンロードは完全敵対は出来ず、だからと言ってモンスターの強さや、国の情勢などの理由から奴隷制度の廃止も出来ない。
そんな半敵国であるイエンロードに、ブルーゼムの王女が居ると言うのが知られるのは色々と不味い。
あまり目立たない様に活動していかなければならない。
(ご迷惑をお掛けします)
気にすんな。
さて、イエンロードに入国完了。
新拠点だが、王都はそういった理由から却下。
だからと言って地方の治安悪い所に行くわけにもいかない。
村なんかに拠点を置けばこいつらが目立たない訳無いからな。
よって第二都市に行く事にする。
初日はとりあえず宿を取るが、8人なんだよなぁ……
家を借りるか、買うか、建てるか、また洞窟に作るか、検討せねばならない。
イエンロードの第二都市、ルバークに着いた。
さて、8人泊まれるそこそこに良い宿は――
「てめぇら! また商品盗み食いしやがったな!」
「がっ!」「ひぃっ」
スラム街に住む子供二人組が、露店のおっちゃんにとっちめられている。
こういう時うちのパーティーの反応って別れるよなぁ。
助けようと行動に移すのが、ラミウムとロータス。
どうにかしてあげられないかと思うのが、日坂と水奈。
完全野次馬の傍観者が、神奈とフィサリス。
全く興味を示さないのが、俺と穂乃香。
興味? ないない。
「すみませんが、料金は私が払いますので放してあげて貰えませんか?」
「あんた……俺は別に構わないが、そんな事したって何にもならないぞ?」
「承知の上です」
「貴方達も盗み食いなどしてはいけませんよ?」
「はい……」「ごめんなさい、ありがとうございます」
こんな事は、これより過激な事だって1日のうちに世界中でいくつもあっている。
それを一つ一つ気に掛けてなどいられない。
助ける内容によっては助けられた者が第二、第三のフィサリスとなりかねない。
それに俺は加害者の事情も、被害者の事情も知る事が出来る。片方に同情などしてやれない。
今、ロータスに助けられラミウムに諭された子供だって、片方はきちんと感謝しているが、片方は助けるならもっと早く助けろよと思っている。
所詮そんなものだ。
(それでも私は、目の前で起きている事を見過ごす事は出来ません。救えるものは救いたいと思います)
知ってる。お前はそういう奴だ。
だからこそ、俺はお前を苦手と評したんだ。
その価値観だけは――共有出来ない。
(……承知しております)
さて条件にあう宿を見つけた。とりあえず部屋をとっておこう。
空いてる部屋は全部3人部屋。3人部屋って使いずらくない?
部屋割は話し合いの結果。
氷河&日坂&ロータス
水奈&穂乃香&神奈
ラミウム&フィサリス
となった。まあ、妥当。むさいけど。




