お揃い
「――、―――」
……眠い……
「――、―――」
……あぁ、朝か……洞窟の中だといまいち分かんねぇな……
「おはよう、氷君」
うん。凄く満足そうな笑顔。
とりあえず、
「穂乃香、服着ようか」
「うぅ……穂乃香もお兄ちゃんも酷い……」
服を着て広間へ出た時、巻き込まれた水奈がそんな事を呟いた。
「と言ってるけど氷君、実際は?」
「満更でも無い」
「お兄ちゃん!」
水奈に怒られた。この辺にしておこう。
「いや~お兄さん。昨夜はお楽しみでしたね」
神奈が茶化しに来た。
こいつらはなんだかんだでやってない。
直前で神奈がひよったからだ。
「うるさいヘタレ」
「お兄さんだけには言われたくないです。良いんですキスはして貰いましたから! これからなんです!」
日坂も満更ではないからな。そう時間は掛からないだろ。
「さて、ちょっと買い物行ってくる」
「何か買いたいものあるの?」
「食材と装備だ」
朝食分の食材はあるが、人数が倍になったためストックが無い。
そしてローブを買わねばならない。
「氷君! 私も行きたい!」
「それは構わないが……他は?」
「私は疲れたから休んでるね……」
水奈はお疲れの様子。
むしろ穂乃香のその元気はどこから来てるのか。
結果、穂乃香と二人で買い物へ行く事になった。
(氷君とデート~氷君とデート~)
ルンルンである。
「氷君、眼鏡似合ってるよ」
「お前は前から、やたら俺に眼鏡付けさせてたもんな」
「眼鏡付けてる氷君も良し、眼鏡を取った後に現れるいつもの氷君も良し」
俺であれば結局良いんじゃねぇか。
「とりあえず食材買っちまうぞ」
「はーい」
食材を買い足していく。
今回は前回ほどお金に余裕がある訳では無いので安く済ませる。
自重、自重。
「さてローブだが、日坂が赤、ロータスが緑、フィサリスが黄色、俺が紫を着ている。あと4つ買う訳だが穂乃香は何色が良い?」
「紫!」
迷いない。でもダブりは駄目。
「他の色で頼む」
「え~……うーんじゃあ青」
近い色が良いのね。
どんだけ俺の事好きなのよ。
その後少し考えて、水奈に水色、神奈にオレンジ、ラミウムに黄緑となった。
カラフルローブ集団の出来上がりである。
いっそ一色で統一した方が良いんじゃないかって気がしてきた。
みんな黒にする? 白はそれはそれで威圧感あるけど汚れやすそう。
「ねぇ氷君! この指輪って氷君が付けてるのと同じ奴?」
(私も欲しい!)
見えてると分かってて、穂乃香が妙なおねだりの仕方を覚えた。
幸運の指輪か……まあ持ってて悪い事は無いな。
買ったら穂乃香が指を差し出して待機していた。
(付けて! 付けて!)
言われなくても付けてやるって。
俺は暫し考え、新しく買った指輪を自分に、俺が付けていた指輪を穂乃香の左手薬指に付けた。
「……これでいいか?」
「うん! ありがとう大好き!」
(ひゃぁあああ! 氷君の指輪! お揃いの指輪! 私の薬指に~~!)
内心大騒ぎである。
因みにお揃いって、ラミウムもお揃いだし、他の5人の分も買ったからみんなお揃いなんだけどね。
まあ、穂乃香が幸せそうだからいいか。
買い物を済ませた俺は、穂乃香を連れ洞窟へと戻った