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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
70/346

ご飯

 部屋から出ると水奈が穂乃香に抱きしめられているのが見えた。

 っ! 駄目だ俺! 見るな! 穂乃香を(・・・・)見るんじゃない!

 俺が出てきた事で視線が集まる。

 ラミウムは言った通り何も説明してないようだな。

 まあ、これは俺の口から言うべき事だからな。

 

(氷河様、どうかご自分をあまり責めぬように……)


 難しい相談だ。

 

「何から説明するか……まず、俺の固有スキル『鑑定(極)』だが、これで見えるのはステータスだけじゃない。見えるのはその対象の過去と今、その全て(・・)だ」


 水奈と神奈はいまいち理解できてない。だが、他の4人はそれで伝わった様だ。

 

「そっか……氷君は全部知ってたんだね」

「ああ、知ってた。日坂のスキルが奴隷に纏わるスキルである事、それが理由で牢に入れられる事、日坂が居なくなれば神奈が不安定になる事、全て知っていた」


 神奈が目を見開いて俺を見る。

 ああ、その怒りは尤もだ。

 

「それだけじゃない。参謀リコリスがクーデターを起こそうとしている事、それに勇者を巻き込もうとしている事、ダンジョンについて来ていた二人はお前らを取り込むための手先である事も、全て知っていた」

「……ダンジョンに居た神奈たちが、ピンチだと分かったのは何故だ?」

「勇者は20のレベルを迎えるごとに固有スキルが増える。ピンチだと分かったのは俺の新たな固有スキル『千里眼』によるものだ」

「つまり離れてても見えるわけか……氷河がスキルをたくさん使えるのは?」

「他人の経験した過去を見て追体験する事で、経験だけを奪い取る。スキルを扱う感覚だけ教えて貰ったから、俺は大量のスキルを使う事が出来る」

「氷河が『奴隷強化』を使えたのは、俺が使った感覚を知ったからか……」

「ああ、俺はクラスの人間だけじゃない。千里眼でこの国の国民全員の過去を見て、スキルの経験を貰っている」

「――そっか……氷君はずっと、1人で戦ってたんだね」


 ――っ! ほんとに……

 

 

 如月 穂乃香

 月島氷河 親愛度 ERROR 恋愛度 ERROR

 

 

「お前は……どうして……!」

「氷君はもう分かるんでしょ? ずっと頑張ってたんだよね。色んな事実を知って、でも誰にも言えなくて、眠たい目を擦って、一人で背負い込んで。……もう、本当に意地っ張りなんだから……でもそんな氷君だからこそ――私は大好きなんだよ」


 くそ……くそっ! 穂乃香に……穂乃香に泣かされるなんて……!

 情けない……情けないが涙は止まらず、俺は穂乃香の胸に抱かれて泣いていた。

 

「お兄ちゃん…………ごめん……ごめんね……私が……たくさん迷惑かけたんだよね……!」

「……馬鹿言え。俺がお前を迷惑に思う事なんてある訳無いだろ」

「……っ……お兄ちゃん……」

「氷河。今更カッコつけたって、穂乃香ちゃんの胸で泣いた後じゃカッコ付かないだろ」

「うるせぇ。分かってんだよ」


 茶々入れるんじゃない。日坂の癖に。

 

「日坂……その、悪かったな」

「別に氷河が謝る事じゃないだろ。俺が捕まったのはスキルのせいで、お前が知ってたとしてもあの場でどうにか出来る事じゃない。それに俺を助け出したのはお前だ。感謝こそすれど、責める理由なんてねぇよ」

「……あぁお前はそういう奴だ。神奈みたいに少しでも怒ってくれれば、まだ気が楽なのに、お前は他人を責めたりしない。こちらがまるで度量の狭い、人間として劣ってるかのような感覚になる。お前のそういう所が俺は大っ嫌いなんだ」

「奇遇だな。普段は面倒くさがりの癖に、やる時はやる。そのやる内容が俺が人と協力しても出来ないような事を、お前は一人で平然とこなしてみせる。格の違いという物を本気で感じる。そんなお前が大嫌いだ」


 俺と日坂は親友じゃない。腐れ縁だ。

 始まりはこいつが俺に対して抱いた、憧れ、羨望、嫉妬、敵対心だ。

 俺がこいつに劣等感を感じていたように、こいつも俺に劣等感を感じていた。

 他人を明るく照らす太陽と、他人に干渉したがらない月。

 対極にあったからこそ俺らは互いに嫉妬し、互いにこいつにだけは負けたくないと思ったんだ。

 

「お互いに嫌いって言う割に、お兄ちゃんと統也さんは仲良いよね」

「嫌いである事と仲の良さはまた別だろ」

「普通は直結すると思うんだけど……」


 直結した結果はフィサリスとロータス。つまり水と油だな。

 さて、俺に対して怒りを抱いた神奈は……

 

(日坂先輩が牢に入れられている事を知っていながら、話さなかった事にはイラッとしましたが、私を名実ともに日坂先輩の物とさせたから良しとしましょう。GJです!)


 相変わらずお前は上からだな。そして強かだ。

 軽くサムズアップするんじゃない。

 

「私は月島様に対し、こうして再びラミウム様に会わせて頂いた事、牢から出して頂いた事の感謝しかございません」

「お姉さんも、全て知られるのは恥ずかしいけど、牢から出して貰うための必要経費だと思えばなんて事ないかな~」


 ……んだよ……ここにはお人好しの馬鹿しかいねぇのかよ……


(貴方もその一人ですよ。氷河様) 

『氷河ぁ! 良かった、良かったよぉ! どうなるのか私、凄く心配だったんだから!』

「フィア……悪かったな。お前には心配かけてばかりだ」

『ホントよ……もう、手間がかかるんだから!』


 お前は義理堅いとなんというか……

 泣かせてばかりでなんか悪いな。

 

「さて、皆様。ご飯にしましょう」

「なんだ……? まだ食べて無かったのか?」

「人数が増えたので追加で作ったんですよ。それに――私の料理を食べたいと言ったのは氷河様ではありませんか」


 そうか……そうだな……あぁ……ご飯にしよう……

 各部屋から椅子を持って来て、8人で、ラミウムの料理を食べた。

+1匹

『お肉貰うわよ』

「俺の肉!」

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― 新着の感想 ―
[一言] >私の料理を食べたいと言ったのは さらっと爆弾落としてく……
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