封印指定
「……氷河……?」
日坂がアホ面を晒している。
アホ面でもイケメンなあたりがムカつくが、置いとくとしよう。
「よう、囚われの王子様。助けに来てやったぜ」
「お前……どうして……どうやって……」
「日坂様の知り合いという事は、勇者様ですね? 一体どうして壁からやって来られたのですか?」
おう、元副団長が警戒してるー。
絶対出られない筈の牢の壁に穴開けたんだから当然か。
やる事はそう難しくない。
城の近くの湖付近から錬金術で穴掘って地下水路に侵入。
千里眼で方角を確認しながら進んで、突き当りから再び錬金術で穴掘って牢を目指す。
牢の堅い壁も錬金術でちょちょいのちょい。
錬金術様様である。
空間魔法使えないのがめんどくさかったけど、それ以外は壁が属性魔法で壊せない使用になっているってだけだったからね。
まさか外から穴掘って牢に来るなんて誰も考えないよね~
土の中正しい方角と高さを揃える事が出来たのは、千里眼のおかげだしね。
「近衛騎士団元副団長、ロータスだな。俺は確かに日坂と共に呼ばれた勇者だ。そして日坂が国にとって重罪人であることを理解した上で、助けに来た。あんたも今でこそ重罪人だが、元々は国の人間だろ? 俺はあんたを信用できない。もし日坂の奴隷になるんだったら一緒に連れ出してやるが、どうする?」
「氷河、ロータスさんは信用できる人だ。無理に奴隷にしなくても――」
「――日坂、それはお前の信用であって、俺のじゃない。さあ、どうする?」
「…………」
うーん迷ってるね。
元々無実なのに2ヶ月も閉じ込められてるからね。
それでも消えきっていない国への……正しくはラミウムへの忠誠心の高さには感服だよ。
もうひと押しかな。
「ロータス、あんたに牢に入れる様に仕向けたリコリスだがな、あいつ20日後にクーデターを起こす予定だ」
「何!?」
「その為にアンタとフィサリスを牢に閉じ込めたんだ。今も少しでもマグオートに対抗するため勇者の取り込みを行っている。さて答えを聞こうか、ここでクーデターが行われてる間も残り続けるか、日坂の奴隷になって俺と共に来るか」
「…………貴方はどちら側の人間ですか?」
「どちらでもない。だが、俺の利益としては、王に勝って貰った方が都合が良いから、クーデターを止めに回るつもりだ」
現状、重罪人とされている君としても、そっちの方が都合が良いだろ?
「分かりました。日坂様、どうかわたしを奴隷にして下さい」
「ロータスさん……良いんですか?」
「はい。私はまだ死ねません。守るべき者を守れずにいるぐらいなら、たとえ相手が悪魔だったとしても魂を売りましょう」
「……分かりました」
誰が悪魔か。
いや、でも裏切らないだろう事は何となく分かってて奴隷にさせてるんだから悪魔か?
でもそうでもしないと日坂弱いし、何より未来までは予測できない。
この副団長は真面目で性格が固い。
だからこそ手段を選ぶつもりのない俺に反する可能性がある。
とありえず今はこれで良いだろう。
日坂が副団長を奴隷にした事を確認する。
日坂 統也
Lv 1
HP 15/15
MP 15/15
STR 15 (+45) 〔60〕
DEF 10 (+28) 〔38〕
AGL 12 (+48) 〔60〕
DEX 7 (+18) 〔25〕
MIND 9 (+12) 〔21〕
INT 15 (+22) 〔37〕
LUK 10 (+6) 〔16〕
固有スキル『奴隷強化』
初期ステータスの時点で何なんだその攻撃の高さは!
俺なんか4だったんだぞ!
まあ、それは置いといて。1.5倍化された副団長のステータスの1割が日坂のステータスにプラスされている。
元々レベル70代の副団長を更に強化した結果、1割でも+48とか洒落になんねぇな。
封印指定になる訳だ。
さて、とりあえず牢から出ようか。




