『落とし穴』
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ひょんな事から異世界に飛ばされた俺に与えられたスキルは、
『奴隷強化』。
その力は人を集めれば集めるだけ強くなれるという物だった。
効果だけを見れば悪くないのだが、人を奴隷とする事に抵抗がある。
俺の知っている奴隷程扱いの悪いものでは無いのかもしれないが、
逆らう事が出来ない、人権が奴隷主の物っと言った点は変わりないのだろう。
となると、出来れば使いたくないのだが、
このスキルは大変優秀なスキルとされているらしく、すぐにでも前線に出て欲しいと頼まれた。
自分のステータスにはレベル1と書いてあるんだが、足手纏いにはならないのだろうか?
だが、俺たちが呼び出された理由は魔王の討伐で、倒さないと元の世界には帰れない。
このスキルを使う事に気乗りはしないが、仕方ない。協力は惜しまずに行こう。
俺はみんなとは別れ、城の兵士に部屋へと案内された。
何かある訳でも無い普通に部屋だ。ここで人を待てばいいんだろうか?
俺が首を傾げていると、突如床が真っ二つに割れた。
「は!?」
俺は急な事で対処できず、そのまま深い穴へと落ちて行った。
「痛ぇ……」
かなりの高さから落ちたようだが、下に藁の様な物が大量にあったため、死ぬことは無かった。
しかしなんなんだこれは一体、どこなんだここ、真っ暗だ。
いや、薄暗くは見えない事もないんだが、出入り口らしきものが見当たらない。採光部も見当たらない。
どうなってるんだ? 前線に行くんじゃ――
「貴方は、何を犯したのですか……?」
突如声が聞こえてそちらへ振り向く。人が居た。
こんな真っ暗な所で何をしているんだろうか。
それに……犯した?
「なあ、ここは一体どこなんだ? 異世界に勇者として召喚されたと持ったら、今すぐ前線に来てくれと言われて、付いて行った部屋の床が割れてここに落とされたんだが」
「勇者!? なぜ……いや、そんなまさか…………失礼ですか、貴方のスキル名をお聞きしてもよろしいですか?」
「奴隷強化だが?」
「…………落ち着いて聞いて下さい勇者様――」
「――はぁ!? じゃあなんだよ! 勝手に呼び出しだされた上に、この国の理由で俺はここに閉じ込められたって言うのか!?」
「……はい。かつて召喚された『奴隷強化』を持った勇者が膨大な力を有し、傍若無人に振る舞い第2の魔王と呼ばれた事から、『奴隷強化』並びに『奴隷術』を有する事をこの国では禁止されました。それほどに危険なスキルなのです」
「なんだよそれ……」
「……心中お察しします……」
ふざけんなよ……勝手に呼び出して、一生牢の中なんて……あんまりだろ……
「ここは終身刑の者が送られる牢。出入口ははるか上空の穴だけ、空間魔法阻害の施しまでされています。食事は時折落ちてくる残飯、排尿排泄はそちらにある下水に繋がる穴へ、睡眠は床か、落ちて来た地点にある藁で行われて下さい」
「……あんたは何をしてここに入れられたんだ? どれぐらいここに居るんだ?」
「私は王女様を愛した。身分の違う許されぬ禁断の恋。ただ傍に居られるだけで良かった……ですが、それを利用し私を恨む者に冤罪を被せられこの牢へと入れられました。……正確な時間は分かりませんが、落ちてくる残飯が1日2食であると考えると――約2ヶ月程かと」
「2ヶ月……その間ずっとここで一人だったのか……? 本当に出れないんだな……」
「……はい……ここから出る事は――不可能です」




