名前で
ふぅ…………こうか?
『…………』
「…………」
『…………』
「…………」
『……なんか言いなさいよ!』
「あ、済まない」
怒られてしまった。
いや、だってさ?
さっきまで近寄って来なかったのに、急に目の前に現れたら驚くじゃん?
『あんた契約結ぶの初めてなの?』
「ああ、そうなんだ」
『ふーん……ちょっと指出しなさいよ』
これどうしたら良いの?
(精霊様のおっしゃる通りになさって下さい)
了解。
『なっ!』
あ、精霊に俺の記憶の一部が流れ込んでる。
情報多いけど大丈夫?
そして意外と恥ずかしいなこれ、俺から見れれてる人ってこんな気持ちなのか。
(氷河様のスキルを知ってる人、つまりは私ですね。他の方は知られている事を知りませんので恥ずかしくないかと)
確かにその通りか。王女も恥ずかしかったんだな。
(ええ、全て知られてしまいました。責任とって下さいね)
おい止めろ。その気無いのにそう言う事言うな。
それで言ったら、俺国民全ての責任とらないといけない事になって来るだろ、勘弁しろ。
(王族になれば国民の責任を取る事が出来ますよ? 氷河様がお望みでしたら私の夫として向かえますよ? 氷河様には王となれる器がございますから)
だからそういう冗談は――って冗談じゃない!? はあ!? いや、お前副団長とくっついてろよ!
(ロータスは傍に居れば私はそれでいいのです。道具として知りもしないどっかの殿方に嫁がされるより、私は氷河様がいいです)
まあ、落ち着けって、そう自暴自棄になるな。自分を大切にしろ?
(氷河様はお優しいですね……ですがその言葉は氷河様にお返し致します)
あ、うん……人の事言えないね。
そして精霊様めっちゃ泣いてるんだけど……どうしたの?
『無茶し過ぎよ馬鹿!』
また怒られてしまった。
うーん。精霊とはいえ涙を流されるのは心苦しいなぁ。
まあ、そう泣くな。
小指で涙を拭う。
小指でもちょっと大きいな。
『決めたわ、私が契約してあげる!』
「え、良いのか?」
『そして、私があんたを幸せに導いてあげるんだから!』
俺ってそこそこ幸せだと思うけどなぁ……
まあ、契約して貰えるならして貰おうかな。
契約成立。おおっ。
火の大精霊か。大精霊? ふむふむ人間サイズになれるのね、スゲェ。
『私の名前はフィアよ、よろしくね』
「俺は氷河、月島氷河だ。フィア、早速で悪いんだが人間サイズになってみてくれるか?」
『良いけどMP貰うわよ?』
「問題ない」
月島 氷河
Lv 28
HP 145/145
MP 266/290
20ぐらいなら問題ないな。
「これでいいかしら?」
「…………」
「ちょっと氷河! なんか言いなさいよ」
え? え!? いや、だって……妖精サイズの時と姿違うじゃん!
「大精霊様が人体化を行う時は、契約者様の理想像に姿を変えるのですよ」
理想像……通りで見た目が、穂乃香と水奈を足して穂乃香多めに割った感じなのか。
俺、穂乃香の事大好き過ぎだろ。
「氷河様は本当にお二人を愛していらっしゃるんですね」
言わないでー!
しかも何、精霊って契約者の好みに近づいて行くの?
じゃあこれデフォルトになるの!?
……穂乃香には見せらんねぇわ。
「無事に契約が出来ましたね…………氷河様、これが私が氷河様に為に尽くせる今の全てです。信頼をとは言いません。ですが信用をして貰えませんでしょうか?」
「…………悪いが日坂の救出には俺一人で行く。お前を連れて行くと話がややこしくなる上、イレギュラーが起きかけないからだ」
「…………そう……ですか…………」
「……ただ、お前の分のローブは用意しといてやるよ。ラミウム」
「――! 氷河様……私を名前で…………! はい……っありがとうございます!」
むぅ……ラミウムにも泣かれてしまった。
泣かせてばかりは心苦しんだよなぁ……他の精霊めっちゃこっち見てるし。
「いえ、お気になさらないで下さい……」
「氷河! 女の涙は価値が高いんだからね!」
フィアに怒られると穂乃香と水奈に同時に怒られてる気がするなぁ……
「とりあえず場所を変えるか『サークル』『テレポート』」
ラミウム、フィアを連れて洞窟へとやって来た。
「ラミウム。食器食材、調理器具を渡しておくから料理を作っててくれないか? 牢の中じゃ碌な物食べれてないから、美味しい物食べさせようと買っておいたんだ」
「でしたら……スキルレベルの高い氷河様が作られた方がいいのでは?」
「ラミウム、俺はお前が作った料理が食べたいんだ。きっと副団長もそうだ。俺が作った料理じゃない。お前が作る事に意味がある」
「……はい……っかしこまりました!」




