精霊の泉
王女と共にやって来たのは城からそう遠くない位置にある泉だ。
「ここが『精霊の泉』精霊魔法を扱う者が精霊と契約を結ぶ場所です」
世界の各地に精霊の泉は存在する。
そこで精霊に気に入られれば契約が結べて、精霊魔法が使えるわけだ。
今俺は王女からスキルを貰ったから、レベルだけは高いものの、
契約している精霊がいないため、精霊魔法が使えない。
まあ、無理に使う必要もないかと思ってたんだけど。
王女の使い方を見て分かったんだが、
本来自分の低い適性の魔法も、精霊の力を借りる事で扱う事が出来るようになる。
なんせ王女自身は他の魔法全く使えないからな。
「お恥ずかしい限りです」
精霊魔法使えるんだから十分だろ。
適性が無い、低いの関係で魔法が使えない人も多い中、
こいつ8種の精霊と契約結んで、聖以外の属性魔法全部使えるからな。
俺は適正こそ全部あったが、火と土は低いんだよな。
だから属性が氷と雷を相手にしにくい。
属性は簡単に言うと、火<水<雷<土<風<氷<火。
闇と光は互いに弱点で、聖は弱点が無く闇に強い。闇は火~氷の6種に耐性を持つ。
頑張れ光。聖に立場潰されてるぞ。
「聖魔法を使える方は滅多にいませんので、闇属性に対抗できる光属性にも需要はあるんですよ?」
そう。王女が聖の精霊だけ連れて無いみたいに、この世界での聖魔法使いは少ない。
まあ、そんな事言ったら空間魔法や、重力魔法、精霊魔法も少ないんだけどね。
スキルを貰える俺と、精霊魔法以外が使える穂乃香がおかしいだけ。
「氷河様には精霊魔法の適性がございますので、契約は結べるはずです。行きましょう」
王女と共に精霊の泉に近づく。
『ラミウム?』
『あれーラミウムだー!』
『隣にいるのだれー?』
『だれー?』
小さな妖精みたいなのが周りを飛んでいる。
うん。ファンタジー。
「この泉に住まう精霊の皆様です。契約とは即ち泉から離れていく事になります。ですので精霊が住処から離れても一緒に居たいと思わなければ、一緒に来ては貰えぬのです」
つまり8種も契約している王女は精霊タラシというわけだ。
「私は幼い頃より良く来ておりますので、その際に遊び相手をして貰ったりもしていりました」
うん。周り大人ばっかりで遊べる子供居なかったんだよね。
魔法使えなくてダメな子扱いされたりもしたのね。色々大変だったのね。
「昔の事です。今はロータスに氷河様、精霊の皆様がいるので満足しておりますわ」
ナチュラルに俺を入れないでよ。ちょっと怖い。
弟くんとは仲良くないのね、姉弟なのに。
「シランは次期国王として育てられています。政略結婚の道具であり、国のマスコットである事を望まれる私とは、求められているものが違いますわ」
王女という立場って、おとぎ話程夢のあるものでもないね。
「現実とはこんなものですよ。得てしてそういうものです。氷河様いかがですか?」
いかがですかって見れば分かるでしょ?
王女の周りたくさん飛んでる。俺の周り全然飛んでない。
俺、精霊に嫌われ過ぎじゃない?
「氷河様、精霊とは写し鏡です。自らが心を開かなければ、精霊は心を開いて下さいません。気を楽にしてリラックスなさってください」
警戒心を解けって事か? 難しいなぁ……やってみるけども。




