交渉?
「では、お話の続きです」
喋らなくても意思疎通出来るのに喋るの?
「言葉にする事で伝わる事もあるのですよ」
ふーん。
俺は無駄な事はしない主義だから、口動かす必要ないなら使わないよ?
「構いませんよ。でも人が居る時は止めてくださいね。私が独り言をしてるように見られますので」
うん。今そんな感じだもんね。
「ではまず共に行動する理由ですが、氷河様と私の目的は同じですよね?」
ねぇ、それマジで言ってる?
「えぇ。氷河様はスキルで分かってらっしゃるでしょう?」
うん。そうなんだけどさ。でもさっき伝えたよね?
確かに王女の思い人である、近衛騎士団の元副団長は今、日坂と同じ牢に居る。
でも、その元副団長を牢から出す条件として、俺は日坂の奴隷にするつもりなんだよ?
あんたの騎士では無くなるけど、それでも良いの?
「ええ。構いません。それでロータスが牢から出れるのであれば、もう一度会えるのであれば私は構いません。会わせては下さるのでしょう??」
それぐらいはな。
俺としてはスキルをバラされる方が問題だ。
あんたには強力な手札があるにも拘らず、それだけしか望まない事に俺は驚きだよ。
「私にはロータスを助け出す手段がありません。氷河様にお願いするしかないのです」
脅す事もできただろう?
「その場合、氷河様は大事な方だけ連れて逃げ出したのでしょう?」
うん。
「それでは困ります。私のため、そして国の為に私は氷河様の味方を望み、協力を惜しまない所存です」
うーん勘違いはしないで居て欲しいんだけど、
俺は王が勝った方が、水奈たちに取って良いからクーデターを止めようとする訳であって、
王の味方では無いからね?
魔王はあいつ調子乗ったから、いつか殴りに行くけども。
「もちろん、それで構いません。私とて、私の言葉を信用せず、リコリスに唆されてロータスを牢に居れたお父上の、味方という訳ではありませんので」
心眼の言葉を全て信用すれば傀儡にされる。
お気に入りの騎士の為に自分の立場を利用し嘘を言っている。
いやーあの参謀も考えるね。
「お父様は実の娘より、リコリスを信用した愚か者です。尽くすに値しません」
娘に近寄る男を許せない、親父心を刺激されただけだと思うけど。
「知りません!」
まあ、あんたが日坂の『奴隷強化』、そしてそれ以上に危険な俺の『鑑定(極)』を、
王に報告する気がないっていうのは分かったよ。
「ご協力いただけますか?」
ああ。それはいんだが、
「ではレベル強化に私も連れて行って下さい」
なぜ、そうなる。
「私もクーデターが起こると分かりながら、大人しくなどしていられません」
いや、君王女でしょ?
前線出ちゃ駄目だって。
「私もそこそこ戦えるんですよ? スキルを集めてるとなれば、氷河様は私からも貰われたのでしょう?」
月島 氷河
新スキル『魔弓術Lv3』
レベルアップスキル『精霊魔法Lv5』
うん。貰ったね。
君、俺より7つレベル高いもんね。
「むしろ氷河様はどうして転移してまだ10日程にも拘らず、そんなにレベルが高いのでしょうか?」
狩ればいいんだよ希少種とか、はぐれスライムとか。
「狩ろうと思って狩れる物では無いんですが……いえ、氷河様のスキルあってこそなのでしょう」
うん。普通無理だと思うよ。
「足手纏いにはなりません。どうかお願い致します」
はぁ……言っても聞かないんでしょ。いいよ。
「ありがとうございます」
「『サークル』『テレポート』」
俺は王女を連れて外へと出た。




