手伝い
戦闘員組を見送る。
「行ってくるねー! お兄ちゃん!」
月島 水奈
恐怖度 30
水奈はもういつも通りだ。
いつも通りでは無いのは、水奈を撫でている、俺の心だけ。
「ああ、頑張って来い」
「ねぇ、氷君……だ、抱き締めて貰って良い……?」
如月 穂乃香
羞恥心 70 発情度 30
穂乃香は少し大胆になった。
長年思い続けてた恋がようやく成就したんだ。
ちょっと多めに望んだって、罰は当たらないだろう。
「穂乃香、怪我せず帰って来い」
「うん!」
(あぁ……氷君優しい……それにあったかい! 良い匂い!)
穂乃香も相変わらずいつも通りだ。
ちょっと欲に忠実で、変態チックになりはしてるがいつも通りだ。
いつも通りでは無いのは、やはり穂乃香を抱き締めている、俺の心だけだ。
今は、もう心にチクリと刺さる事は無い。刺さる事は無くなった。
ああ。何故なら今俺は何も感じてないからだ。
こいつらにしてやりたいと言う気持ちはある。
でも俺は、こいつらの笑顔を見て、肌で触れても、何も感じない。
受け取る余裕すら無くなったんだろうか。
戦闘員組が出発した。
俺は自室に戻り、外へと――
「月島氷河様。少しよろしいでしょうか」
お外へ行こうとしたら王女に邪魔された。
そういえば交渉がまだだったな。
「氷河様は鑑定スキルをお持ちでしたね? 私の仕事を手伝って下さいませんか?」
「……はい。構いませんよ」
どうして非戦闘員組が見てる前でするかな。
穂乃香、水奈、神奈に引き続き、王女とまで一緒に居るとなれば、
俺のヘイトが凄い事になるんだが。
(彼らの怒りの理由付けは、氷河様が働いていない様に見える事が原因でございましょう? ならば私の手伝いをしている事にすれば怒れぬハズです)
怒りの原因である嫉妬が解決されてないんだが。
むしろ加速したんだが。
(それこそただの嫉妬。氷河様が怒られる義理はありません)
牽制する代わりにヘイトが集まる。うん。プラマイゼロ。
(それに手伝いとして連れ出す事は、城の者に対しても言い訳として扱えます。私の役目は心眼による情報収集です。そこに鑑定の情報がプラスされるのであればより情報が多くなります。なので私が氷河様と共に行動していても問題はありません)
どうして俺と共に行動する前提なのでしょう。
(私と氷河様は――っと、部屋に着きました。どうぞお入り下さいませ。続きは中でお話しましょう)
気は引けるが交渉の為、
俺は仕方なく王女の部屋へと入った。