崩壊と希望
「――、―――」
頼む……寝かせてくれ……
「――、―――」
あぁ……朝だな……
「氷君、おはよう」
あぁ、やっぱり良い笑みだ。
だからこそ、俺の胸はこんなにも痛む。
『穂乃香、俺、水奈の事も好きなんだ』
そう言えば、穂乃香は笑って許すだろう。
こいつはそういう奴だ。
大好きな俺が、大好きな水奈を好きだった所で、こいつの俺に対する好意は変わらない。
だから、穂乃香に告げて、許されては駄目なんだ。
こいつの好意に、甘えちゃ駄目なんだ。
これは俺が背負うべき罪。許されるなんて許されない。
楽になろうなどと、考えるな。
「ああ、おはよう」
ハーピークイーン? 全て斬り捨てたよ。
レベルも上がらなかった。まだ、足りないらしい。
如月 穂乃香
発情度 85
穂乃香はいつも通り唇を触っていたんだが、
昨日の朝キスした事を思い出して、またキスしたくなったらしい。
俺が眠ってる間に何回かしようとしてたが、直前で踏みとどまって俺が起きるのを待ってたらしい。
そういうとこ律儀だよな。それ以外は割とやってるのに。
「ねぇ、氷君……その……キス、して良い?」
………………
「ああ、いいぞ」
「んっ」
穂乃香の唇が、俺の唇と重なる。
俺の中で、何かが、壊れた音がした。
朝食後、今日は神奈の下へは行かない。
というか行けない。
戦闘員組の出発前に勇者は皆、王女を謁見する事になっている。
王女のスキル『心眼』による国への不満、反逆の可能性が無いかのチェックだ。
つまりは俺探しだ。
だが、王女も王に絶対服従という訳では無い。
王女は王女で目的がある。
故に俺と協力関係を築く事も不可能ではない。
でも俺と相性悪そうなんだよな。
「お兄ちゃん何してるの? 早く行くよー!」
「おう」
クラス30人+俺、の31人は謁見の間へと通された。
「あれが王女様……綺麗……」
水奈が目を輝かせている。
王女は高そうなドレスに身を纏っている。
でもぶっちゃけ言おう。穂乃香の方が可愛い。
男子共が騒ぎ立っている。特にキタコレの3人がうるさい。
まあ、心の中でだけどな。
ヒロインにしたいのか、そうか、頑張れよ。
あの王女、既に思い人居るけどな。
げ、王女がこっち見た。こっち見んな、あっち向け。
(貴方様も『心眼』のスキルをお持ちなのですか?)
持ってない。心眼じゃない。
だからこっち見るんじゃねぇ。
男子がまたうざったい視線向けて来るだろうが。
あと穂乃香が敵意持ち始めるから。ほら向こう向け。
(心眼では無い……? では貴方様はいったい……)
あー分かった少し情報やるから。
だからこっち見んな。
(これは――! あぁ……見つけましたわ! 私の『希望』!)
ほら、めんどくさい事になった……




