崩壊の兆し
ブックマーク100件ありがとうございますっ!
「――――!―――――!」
やだ、まだ寝ていたい……
「――――!――――――――!」
あれ……?
「お兄さん! ようやく起きましたか!」
穂乃香じゃない……神奈だ、神奈が居る。
「何が目的だ」
「一言目がそれですか!?」
いや、だって神奈が俺を起こしに来るって、何か企んでると思うだろ。
ん? おい、マジかよ……
「お兄さん昨日殴られたらしいですね~。男子が話してたのを穂乃香が聞いちゃって、ブチ切れたのを現在水奈が止めています。ほら、お兄さん。仕事ですよ」
昨日の今日でバレたのか。馬鹿じゃねぇの。
マジでやってくれたな!
如月 穂乃香
憤怒度 ERROR
どうやって止めるんだあれ! くっそ!
俺は神奈と共に急いで穂乃香の下へ行く。
既に魔法が飛んでる痕跡があるんだけど……
「穂乃香っ!」
ファイヤーボールを大量に浮かべる穂乃香、穂乃香に抱き着く水奈、怯える昨日の男子の姿があった。
他にもギャラリーが集まっている。不味い!
「穂乃香! 落ち着け! 止めろ!」
「そいつが、そいつが氷君を殴ったんだよね……?」
駄目だ! 俺の声も届いてない!
どうする……どうする……!
ふぅ……落ち着け俺。俺まで焦ってどうする。
俺は穂乃香にどうして欲しい?
決まってる。こいつに手を汚してほしくなんかない。
じゃあどうする? ――覚悟を決めろ。
恥も、自己嫌悪も殴り捨てて――穂乃香の為に尽くせ。
「穂乃香――」
「――!? ~~~~!?」
俺は――穂乃香の唇を奪った。
「「「なっ……!」」」
「「「「「「「「「「キャー!」」」」」」」」」」
「……いやーお兄さんやりますねー」
「…………」
如月 穂乃香
憤怒度 0 羞恥心 100
穂乃香の怒りが消えた事を確認して唇を放す。
俺の感情も少なからずあっただろう……でもそれが全てか? 違うよな!
感情だけじゃない、すれば穂乃香の怒りが収まるだろうと言う打算! つまりは作業だ!
それは俺が最も嫌っていた行為なのにな……あぁ……最低だ。
穂乃香は……穂乃香はこんなにも純粋に、初めてのキスを喜んでいるのに――
「穂乃香……落ち着いたか……?」
「氷君……えと、私……」
「穂乃香。そんな奴の為なんかに手を汚すな……俺はお前に、そんな事して欲しくない」
「~~! うん!」
あぁ……綺麗な笑みだ……お前はやっぱり、それが良い。
如月 穂乃香
月島氷河 親愛度 ERROR 恋愛度 ERROR 発情度 90
周りの目が無ければ押し倒されてたレベルで、穂乃香の中が俺で凄い事になってる。
「そんな奴だと……? ふざけやがって!」
「止めろ、落ち着け」
俺にそんな奴扱いされた男子が、キタコレ学級委員に止められた。
だが、一番俺に対し敵意を持ってるのは他でもないコイツだ。
コイツは初日から変わらず自分が主人公だと思っている。
にも拘らず、コイツがハーレム要員と希望した3人は、クラスの部外者にして一番の足手まといであるはずの俺と関わりが多く、そんな奴がクラスの輪を乱している。
コイツのシナリオ上では、俺は邪魔者でしかない。
今はあくまで学級委員という、まとめ役の立場として動いたに過ぎない。
あぁ、お前も俺も、道化という意味では似たもの同士だな。滑稽だよ。
月島 水奈 恐怖度 50 寂寥感 50 嫉妬心 50 罪悪感 50
月島氷河 親愛度 ERROR 恋愛度 80
水奈の心が、荒れている。
俺と穂乃香のキスを見ても、変わる事のない恋愛度。
恋愛度の高さから起きた、穂乃香に対する嫉妬。
嫉妬が芽生えて、穂乃香を応援してたのにという罪悪感。
俺と穂乃香が近づいた事で、俺が遠くに感じる寂寥感。
妹であるが故に、自分は叶わないと分かってしまった恐怖。
今まで水奈が、理解しつつも見ない様にしてきたものが、全て爆発している。
水奈に声を掛けてやりたい、でも何を言えばいいのか……俺には分からない。
そして水奈自身が、今は俺と話したくないと思っている……
――!? はぁ!? 嘘だろ……
どうして悪い事って重なるんだろうな……
明日、王女の緊急帰国が決まりやがった……
どうする……全て破綻しかねないぞ。




