水奈の兄
明日からどうしていくかの話し合いは、学級委員の二人を中心に行われた。
え? 年長者の俺がしないのかって?
無理無理、完全に『水奈のクラス+α』のαよ? 俺?
日坂がいればあいつがしてただろう。
しかしあいつは牢の中。
そしてあいつ無しだと俺は月ですらない。
ほら月って太陽の光反射して光ってんじゃん?
つまり日坂が居ないときの俺は目立たない。
じゃあ今の俺のポジションは?
ズバリ! 『みんなの頼れる水奈』の兄。
俺の立場って妹あり気じゃないと成立できないのね……
日坂にしろ、水奈にしろ、俺って寄生虫?
まあ、みんなからしたら所詮、鑑定だからね。
一部じゃ鑑定(笑)だからね。
じゃあ、その唯一俺に残された『水奈の兄』として、俺のするべき事をするか。
「水奈ー今大丈夫か?」
『お兄ちゃん? うん大丈夫だよー』
俺は水奈の部屋に訪れた。
水奈の部屋。そう、全員一人ずつ部屋を貰ったのだ。
クラス30人に+1で31部屋。それ全部入るって城広いなー。
まあ、過去にも何回か召喚してるみたいだから、召喚した時様にあけてあるんだとか。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
部屋に入れて貰った。
ふむ。俺の部屋とさほど変わりないな。
まあ、入ってすぐなのにそんな変わってる訳もないか。
「水奈……」
「お兄ちゃん!? え!? なんなの急に!?」
ん? おっと急すぎた。
部屋に入って来たと思ったら、突然抱き締めてくる兄。
シスコンかな? シスコンだな。
むしろ拒絶されないだけ良かった。キモイとか言われて振り払われてたら……
お兄ちゃんちょっと立ち直れないかもしれない。
しかし水奈、小さいな。そして柔らかい。
あ、胸じゃないよ? そっちは絶賛成長中。程良く当たってます。
「……こうしてると落ち着くな」
「なぁにお兄ちゃん。実は怖かったの?」
水奈に頭を撫でられた。
ふむ。これはこれで悪くない。が、
月島 水奈
恐怖度 90
「なあ水奈。この部屋に居るのは俺とお前だけだ、だから――もう強がんなくていいぞ」
「……何を言ってるのお兄ちゃん? 私別に強がってなんか」
「いつも言ってるだろ? 俺と二人の時は自分を偽らなくていい。怖いんだろ?」
さっきは俺が撫でられた。
じゃあ次は俺の番だよな。
「っ――お兄ちゃん……怖いよ……」
「ああ」
「怖いよ……どうして、っどうしてこんなことに…………毎日がっ……くだらないけど……幸せな毎日が続くと思ってたのに……こんな、いつ死ぬかもわからないところで……お父さんお母さんにも……会えなくて……」
「そうだな……」
「お兄ちゃんっ……お兄ちゃんは……私と一緒に居てくれるよね……? 死んだりなんかしないよね?」
「死ぬわけないだろ? 俺は鑑定だぞ? まず戦闘自体参加できねぇよ。俺の運動神経の無さは水奈が一番良く知ってるだろ?」
「そうだね……お兄ちゃん動くの嫌いだもんね」
ああ、動くのは嫌いだ可能なら動きたくなんかない。――可能ならな。
俺は嘘つきだ。でもなりふりは構わないと決めた。
俺はお前らの為にどんな十字架でも背負おう。
いや、お前らを理由にするのは良くないな。
俺は俺の為に動く。それが例え、罪だとしても。
月島 水奈
恐怖度 60
しばらく抱き締めて、頭を撫でてたが、
下がって60か……この辺が限界だろうな。
ん?
月島 水奈
月島氷河 親愛度 ERROR 恋愛度 30
待て。親愛度のエラーはこの際置いておこう。
恋愛度30? 30?
水奈ちゃんやい。それ……下げようか。
確かに! この世界には近親相姦という概念はない!
が、俺たちの精神には深く刻まれてるじゃない?
いや、もちろん兄冥利に尽きるんだけども……それは上げちゃダメじゃない?
ヤバい急に難易度が上がった。
水奈の精神ケアは今後も必須だが、下手すると水奈が俺の攻略対象に名乗りを上げかねん。
恐怖度を下げつつ、恋愛度を上げない様にしなければ……
つまり水奈からの認識を完全に兄にしたらいいって事か?
兄ってどうしたら良いんだ? 抱きしめて頭撫でるのはダメなのか?
日坂ー! 俺に答えをくれ! お前なんでそんなところにいるんだー!
「お兄ちゃん……寝るまでの間、手握ってて貰っていい?」
「……ああ。構わねぇよ」
断れなかったー!
いや、無理だってあんな顔でお願いされて断れる兄はいない!
月島 水奈
恐怖度 55
月島氷河 恋愛度 35
え? 何それ連動してるの?
恐怖下がると恋愛上がるの? ムリゲーじゃない?
「……おやすみお兄ちゃん……」
まあ、これで水奈の安眠が得られるんなら安いものだな。