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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
344/346

『お膳立て』

「――私ってやっぱり子供にしか見えないのかなぁ……」

「…………どうしてそう思うのぉ?」


 水奈王女の部屋に伺い、話をしていた時、唐突に私をジッと見て王女はそう言った。

 コンプレックスがあるのかしら?

 

「……2年前。グライブさんと初対面の時、ガキって呼ばれたんだけど……私当時22歳で今のミラちゃんより2つ上、1歳になる子供も居たんだけど……」

「……………………」

「当時18歳の奏先輩は女扱いされてたし、15歳で成長が止まってるエリーザちゃんも吸血鬼って呼ばれて子供扱いはされてなかった……」

「……吸血鬼は見た目と年齢が、同じじゃないからじゃないのぉ?」

「…………何より24歳になった今も、グライブさんからガキって呼ばれるの」

「…………年を重ねてもお若く綺麗なままって事じゃなぁい? むしろ良い事よぅ」


 水奈王女は本当にお若い。私の年下と言われても違和感が無いし、リノ王女の姉と言われても違和感が無い。

 身長の低さは大きな理由だと思う。身長が低くても、顔が歳相応であれば違ったのかもしれないけど、水奈王女はその……童顔なのだと思う。

 その上で、肌はきめ細かい上に、もちもちと柔らかそうである……世の中の女性たちが羨ましがりそうであるけど……身長、顔、肌の三つの条件が揃って子供扱いされる事を気にしてらっしゃるのね。

 

「柚奈はお母さんって呼んでくれるけど、煌輝君や結衣香ちゃんはお姉ちゃんのままだし……叔母さんって呼ばれるよりは良いけど…………ミラちゃんの隣に並んだ時、私が年下に見られるのかなって思って」


 ………………見られるんじゃないかしら。それは私も少し複雑よね。

 

「――あ。ごめんね? 愚痴零しちゃって……今日はお話があって来てくれたんだよね」

「いえいえ。私でよければ何時でも聞きますよぅ」


 そう。私は水奈王女に話を聞こうと思って来た。

 

「――陛下の側室になるに当たって、必要な事って何だと思いますか?」

「――!? …………ミラちゃん、お兄ちゃんの側室になりたいの……?」

「いえ、アイリスちゃんを側室に押し込もうと思ってまして」

「奏先輩かぁ……」


 うーんうーん、と唸るその姿は可愛いけれど、その直前……私の話だと思って質問して来た時の水奈王女は、警戒し敵意を向く女そのものだった。

 水奈王女。貴女は子供では無く、1人の女性ですよ。

 

「――最低条件は何だと思われますか?」

「んー? 最低条件はお兄ちゃんからも好意が向く事、穂乃香に許可を貰う事、リノちゃんに認められる事の三つだと思う」


 一つ目は言質を取っている為クリア。

 リノ王女は、アイリスちゃんの膝上に座って食事してた事もあるし、アイリスちゃんの尻尾気に入ってるし、遊び相手にアイリスちゃんが呼ばれた時は、私が孤児院の方を任されて積極的に送り出してるから……懐かれてはいると思うのよね。

 一番の難関は穂乃香王妃か……彼女に認めて貰える基準って何なんだろう……

 戦闘力で言えば、国内5番目……女性だと2番目と言われてるアイリスちゃんは、穂乃香王妃と競い合える好敵手だと思う。

 王族と言われても違和感ない気品さがあるし、平和の女神として崇める人まで居るし……アイリスちゃん凄く困ってたけど。

 スペックとしては問題ないと、むしろ良過ぎるぐらいだと思うのだけど……基準が穂乃香王妃の好みだったりすると、難しいのかしら?

 

「あ。あと女の子同士でも出来る人じゃないと厳しいかも」

「………………私にそっちの気は無いから、鍛えるのは難しいわねぇ」


 そうだ、水奈王女と穂乃香王妃はそういう関係だった。

 フィサリス様もそうなのかしら? 陛下の奥様方が揃ってしてるのなら、そうなってる可能性は高いわね。

 私はアイリスちゃんの事大好きだけど、肉体関係を持ちたい訳じゃ無いのよね。一緒にお風呂入るぐらいの関係……家族なのよ。

 

「……水奈王女的に、アイリスちゃんはアリですか? ナシですか?」

「……………………アリかな」


 よし。言質とった。

 陛下と水奈王女を攻略済みとなれば、残るは王妃とフィサリス様……フィサリス様は陛下の意見に傾くと思うから実質王妃かな。

 問題はアイリスちゃんにどうやってそっちの気を植え付けるか、ね。

 

「奏先輩は私の憧れだった……綺麗でカッコいい上に優しくて…………でも転生してからは――更に可愛さまで追加されて……! あれはズルいよね! もう! なんか最強じゃない!?」

「いやいや、分かります。分かりますよぅその気持ち」


 水奈王女の言葉に強く頷く。

 見た目、性格、立ち振る舞い。理想を具現化したような素敵な女性。

 唯一の欠点は付き纏うアマリリス…………アマリリスめ……

 

「奏先輩には幸せになって貰いたい……けどお兄ちゃんのお嫁さんかぁ……可能性が高いのは、ほたるちゃんだと思ってたけど」

「――! ほたるがですか?」

「ほたるちゃん最近穂乃香と仲良しさんなんだよ。リノちゃんからも認められてるし、お兄ちゃんもほたるちゃんの事気に入ってるしさ…………私の立場が危ない」


 陛下の気に入ってるは別の意味だと思うけど……

 ほたるが王妃と…………それは知らなかった。リノ王女はほたるの事大好きだから、むしろ側室に押し上げようとしてるかもしれない。私がアイリスちゃんを押し上げようとしてるみたいに。

 

「……水奈王女はその事について、どう思われますか? ほたるが王妃と仲が良いと言う件について」

「……もちろん嫉妬するし、穂乃香に怒っちゃうこともあるけど…………もしほたるちゃんとそう言う関係になったとしても、私は文句言えないんだよね……星原先輩に言われた事なんだけど、私はお兄ちゃんと穂乃香に甘えてる立場だから。2人の優しさに甘えてる私が、我が儘は言えない……私に出来るのは『穂乃香がほたるちゃんと浮気するなら、私は美鈴と浮気してくる』って言って穂乃香の気を引こうとするぐらい……ほたるちゃんに負けない様に頑張ってみるだけなの」


 嫌とは言えない……否、言わないのね……

 水奈王女は陛下と王妃に引け目を感じている……それは柚奈王女を出産した今でも変わらない。

 フィサリス様にもそれは当てはまるかもしれない…………アイリスちゃんを仮に側室に押し込めても、引け目を感じさせてしまう事になるのかしら…………

 

「――……美鈴と浮気してくるって言うより、奏先輩と浮気してくるって言った方が、リアルだし穂乃香を刺激できるかもしれない……穂乃香、奏先輩にライバル心燃やしてるし」

「そうなのぅ?」

「穂乃香はお兄ちゃんの腐れ縁の統也さんと、唯一の友達の奏先輩、左目のお師匠様にライバル心を向けてる……あと忠臣として扱われるグラジオラスさんもかな? う~ん……透視持ちで影として扱われるピアニーさんと、心眼で会話できるラミウム様もかな?」

「関係者ほとんどじゃない……」


 でも、始めの方で名が挙がったって事は、王妃に認識はされてる方なんじゃないかしら?

 

「アイリスちゃんと浮気したい(あいたい)時は、ぜひ何時でも孤児院にいらしてください。なんなら私がセッティングしますよぅ? ――……お風呂で見たんですけど、アイリスちゃんの裸すごいですよ」

「――!」

「鍛えて引き締まったスタイルはまるで天女の様だしぃ、尻尾を洗って上げたりすると……同性でもドキドキしてしまうような甘ぁい声を出すんです」

「――!!」

「私はアイリスちゃんと2人で入る事もあるので、私と3人で入れば不自然な事はありませんしぃ……疚しい事はありません。女同士で一緒にお風呂に入るだけです……――セッティングしましょうか?」

「………………疚しい事は無い…………き、機会があれば……ぜひ」


 水奈王女の返答に私は笑顔で頷く。

 ノーマルの私でもアイリスちゃんの甘い声には、このままじゃマズイと思う事がある。

 でも普段、慈愛に満ちた聖母の様な物腰の柔らかいアイリスちゃんが、私の手によって恥ずかしそうにしていると、陛下の前で照れている姿並に見て居たくなってしまう。

 母をしていたアイリスちゃんが私の手で少女へと変わる瞬間……陛下の前で乙女に変わってしまう瞬間に似たものを感じてしまう。

 私ですらこれならば、そっちの気があり、アイリスちゃんをアリだと言った水奈王女には相当効く筈。

 水奈王女を完全に攻略する事……これがアイリスちゃんが側室になる為の一歩目だと思う。

 アイリスちゃんにそっちの気が芽生えれば更にまた一歩近づく。

 水奈王女の力量次第かもしれない……水奈王女は水奈王女で同性殺しも持ち合わせていて、幾多の心を打ち抜いている…………私に出来る事は――――

 

「――全力でお膳立てさせて頂きます。お任せ下さい」

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