スケジュール
水奈の部屋の前に来た。
「水奈、俺だ」
「お兄ちゃんっ!」
またしても扉前待機。
そして部屋に入るよりも早く抱きつかれてしまった。
月島 水奈
恐怖度 50 寂寥感 30
「今日はもう来てくれないのかと思った……」
やだもう、水奈ちゃんたらそんな訳無いじゃない。
むしろ来なくていいと言われても来るぞ。
いや、そんな事言われたら立ち直れるか分かんないけど。
俺が来なかった事がそんなに寂しかったのか。可愛い奴め。
とりあえず廊下は目立つので部屋へと入った。
魔剣術の子がこっそり見てたしね。
そんなに見たって撫でたりしないって言ってるでしょ!
心の中でだけど。
「遅くなって悪かったな。神奈に捕まってたんだ」
「美鈴が? お兄ちゃんに用があるなんて珍しいね。何だったの?」
「日坂が居なくて寂しいってさ」
うん。間違ってない。
「なんて答えたの?」
「頑張れ、って」
「お兄ちゃん雑」
いや、だって神奈だし。
「お兄ちゃんと統也さんの関係もよく分かんないけど、それ以上にお兄ちゃんと美鈴って不思議な関係だよね」
俺と神奈の関係? 水奈に仕える武官と文官。
やる事は違うけど目的は一緒なんだよ。
対立もすれば協力もする。
もちろん俺が文官。
そして統也さんとは? 俺は絶対に呼んでやらないけど日坂の事である。
今でこそ慣れたが、最初は日坂に毒されたかと心配したもんだ。
どうやら俺のお世話係同盟のようなものらしい。
だから日坂にお世話された覚えがないって言ってるでしょ! 便利だったけど!
因みに穂乃香は日坂さんと呼んでいる。
うん、普通。
ただ、俺の傍に居る事の多い日坂は、穂乃香にとってライバル的存在らしい。
ライバルってどうゆう事!? 俺やっぱりヒロイン扱いなの!?
俺と日坂の関係は親友では無い。腐れ縁。
腐れ縁としか呼びようが無いのが、俺と日坂だ。
月島 水奈
恐怖度 40 寂寥感 0
俺が来たことで、もう寂しくは無くなった様だ。
しかし神奈の話聞くのって、いつすればいいんだろうか。
夕食後は水奈が寂しがるから無しだし、朝は穂乃香の笑顔見なきゃだし。
これは絶対だ。絶対に譲らん。
まあ、あいつ自分から来るんだけどな。
夕食前は穂乃香の怒りを鎮めないといけないから……どこだ。
朝食後、戦闘員組の出発までの時間かな?
俺の一日スケジュールが大分埋まり始めたな。
起床(穂乃香)→朝食→神奈→レベリング→穂乃香→夕食→水奈→レベリング→就寝。
うん。空いてる時間無いな。というか穂乃香多いな。
神奈は毎日する必要ないんじゃないかって?
あいつは穂乃香と真逆で上がりにくいんだけど、下がりにくいんだよ。
つまり今一番ヤバいのは神奈。
あいつ余裕ぶってたけど一番余裕ねぇから。
俺を頼らざるえない状況になってる時点でもう末期。
じゃあなんでそうなるまで放置したかって?
あいつが折れないと俺も不用意に近づけないからだ。
今、実質クラス美少女トップ3全部回る事になってるからな。
男子がより敵意を向け始める。
神奈はその辺理解していたからこそ、ギリギリまで折れなかった。
つまりもう限界。
早く日坂を連れ出さないと。
「ねぇお兄ちゃん、今日も一緒に寝て貰っていい……?」
水奈は最近恋愛度が上がって来てるんだよなー。
ここは心を鬼にして断るべきか。
「ああ。いいぞ」
「ありがとう」
断れなかったー!
いや、無理だって。あんな不安そうに見つめられてさ?
許可すると嬉しそうに微笑むんだぜ?
俺この天使に逆らえる気がしない。
水奈と一緒にベットに入り、手を繋ぐ。
月島 水奈 恐怖度 0
月島氷河 親愛度 ERROR 恋愛度 75
こっちの世界に来て恐怖が0になったのは初めてだな。
恋愛度高いよなー。
水奈は元々その気質はあった。俺の部屋の匂い好きだしな。
でもそれがこの世界に来て、所謂吊り橋効果で開花してしまった。
恐怖に怯えていると必ず来てくれる存在だもんな。
俺が思ってる以上に水奈にとって俺という存在は大きい。
俺は……俺は――どうしたらいいんだろうな。
水奈が眠ったのを確認して手を放し、頭を撫でて部屋を出る。
最近先延ばしにしている事が増えた気がする。
穂乃香の好意、水奈の好意、男子の敵意。
解決方法も分からず、先延ばしにした結果、いつかツケが来るかもしれない。
でもだからと言って悩む時間も無ければ、手間かける時間も無い。
今出来る事をする。もう既にギリギリなんだ。
俺は自室へと戻り、夜の草原へ飛び出した。




