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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
33/346

協力者

 夕食を終え、水奈の部屋へと向かおう……と思ったんだが、

 奴が、奴が俺を探している。

 俺としては一秒でも早く水奈の下へ行きたいんだが、

 水奈の部屋に向かうルート的に、このままだと出くわしてしまう。

 まあ、仕方ないか。奴も限界だ。

 むしろ6日間よく耐えたと褒めるべきだよな。

 

「あ、お兄さん~奇遇ですね~!」

 

 何が奇遇だ。探してたくせに。

 

「いつも言ってるだろ? 俺はお前の兄じゃない」

「いつも言ってるじゃないですか。水奈のお兄さん。略して『お兄さん』ですよ~」


 神奈美鈴。コイツが俺を探す理由なんて一つだ。

 俺はコイツが、日坂目的で俺に近づいた事を知っている。

 コイツは俺が、日坂目的で近づいた事に気付いている事を知っている。

 そんな神奈が俺に対してどうなったかと言うと、

 

「いや~それにしても最近のお兄さん、男子からの嫌われ方が凄いですね~!」



 神奈 美鈴

 ストレス 95

 

 

 コイツ俺の前で猫かぶるの止めやがった。

 俺を探してた理由? 憂さ晴らしだよ憂さ晴らし。

 クラスメイトの前じゃ猫をかぶり、水奈や穂乃香には当たれない。

 じゃあどうするか、ちょうどいい標的(おれ)が居る。

 

「ああ、まあな。つってもどうしよもねぇだろ?」

「最近穂乃香がキレそうと言うか、キレてるんでどうにかして下さい。訓練参加しないんですか~?」

「お前鑑定に何を訓練しろって言うんだ。ステータス見えるだけだぞ」

「まあ、そうですね。使えませんね~」


 ぐふっ。使えないとか言うんじゃない。

 鑑定士が泣いてるぞ。

 

「でもだったら、もう少し上手く立ち回って下さいよ~。お兄さんがヘイトを集める事で被害が及ぶのは、水奈と穂乃香なんですから」


 これでも結構頑張ってるつもりなんだけどなぁ……

 

「あーまあ努力する」

「ホントですかー? お兄さんってやる時はやるけど、やらない時全くやらないじゃないですか~」

「当たり前だろ。どうしてやらなくていい時に頑張る。俺は休みたいんだ」

「うわ~ダメ人間の発言だ。お兄さん日坂先輩が居なくなった今、水奈に愛想つかされたらお世話係居なくなりますよ?」

「その時は穂乃香に頼む」

「ヒモだ、ヒモがいる」


 うるさい。大体水奈が俺に愛想つくなんて事ある訳ないだろ。

 ……ないよね? 大丈夫だよね?

 っていうか日坂には世話された覚えねぇよ! あいつ居ると便利だったけど!

 

「はぁ、どうしてこっちが残ったんでしょうね……」

「俺が残って無かったら誰が穂乃香を抑えるんだ?」

「お兄さんで良かったです!」


 すがすがしい程の手の平返しである。

 でも結局こいつはそうなのだ。日坂が居なくて寂しいのである。

 

「日坂だってスキルが優秀だったから前線に出されただけで、レベルが高いわけじゃ無いだろ? スキル使ってるとき以外は俺とそんな変わんないと思うぞ?」


 あいつ実質今ニートだし。

 

「お兄さんと日坂先輩を一緒にしないで下さいよ! 前線で大活躍の先輩と、訓練にすら参加しないお兄さんとでは天と地の差です。太陽とすっぽんです」

「お前俺を月からすっぽんにまで下げやがったな。返せよ、天に返せよ」

「ダメです~! お兄さんはすっぽんで十分です~。亀じゃなくてトイレの方」

「そっちのすっぽんかよ!」


 掃除用具じゃねぇか。

 

 

 神奈 美鈴

 ストレス 85

 

 

「それで? 少しは気は晴れたか?」

「……お兄さんやっぱり分かってたんですね。分かった上で相手するなんてМなんですか~?」

「アホか、俺はノーマルだ」


 ノーマル……だよね? そうだよね!?

 水奈はМ、「いじわる……」って言いながら実は喜んでる。可愛い。

 神奈はS、反応の面白い水奈や俺を弄って楽しんでいる。俺含まれてる!?

 穂乃香は両方、あいつは俺に苛められたくもあるし、俺を苛めたくもある。

 あいつ俺の事大好きすぎだろ。

 

「ただ、お前に壊れられると水奈や穂乃香にダメージが行くからな。仕方なく、仕方なーくお兄さんが捌け口になってやろう」

「うわっ偉そー」


 君ちょくちょく敬語抜けるよね。別に良いけど。

 

「まあ、でもいいなら使わせてもらいますね~。私も余裕ありませんし」

「別に構わないが時間ある時に頼む」

「お兄さんに時間無い時があるんですか~?」

「ある。今だって水奈が待ってる」

「あーはいはいシスコーン。私はそこそこ満足したんで、どうぞいってらっしゃ~い」


 神奈にシスコン扱いされながら別れて水奈の部屋へ向かう。

 ナチュラルに今後、神奈の捌け口相手をする事が決まった。

 しかし、変わるものだな。

 まさか、神奈との掛け合いが心地いいと思う日が来るなんてな。

 俺と神奈はギブ&テイクだ。

 俺は水奈と穂乃香の為にあいつを利用し、あいつはそこに日坂が加わる。

 互いに遠慮はしないし、損得でしか見ていない。

 だが、俺と神奈はそれでいい(・・・・・)

 互いの大事な者が一致した。ただそれだけの協力者だ。

 今はそんな事より、寂しがっている水奈の下へ行かなければ。

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