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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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『グライブ』

 人生で初めて敗北って奴を知った。

 俺様にとって勝利とは当然の結果で、強ぇ奴と戦う事が生きがいだ。

 ガキの頃から兄弟にも親父にも負けた事は無かった。同年代で強ぇと言われてる奴に挑み打ち破った。俺様の住む集落で強ぇと言われてる奴に挑み打ち破った。一族で次の王候補として名の上がる奴に挑み打ち破った。一族最強と言われる王に挑み打ち破った。

 強ぇ奴と戦うのはやっぱり面白れぇ。心が躍る。

 だが一族に最強と呼ばれていた王以上に強ぇはいなかった。それどころか俺様が王になっちまった。

 王として扱われるのは悪くは無かった、女にも金にも困る事は無かった……だが俺はもっと強ぇ奴と戦いたかった。

 俺様らドラゴニュートの先祖と言われているドラゴンにも挑んで回った……けども納得がいくほど強ぇ奴は居なかった。だが同族共と戦うよりは十分楽しめた。

 そうして暇さえあれば戦いに来てたある日だ、ホーリードラゴンのジジイに圧勝した人間族が居た。辛勝じゃねぇ圧勝だ。

 コイツと戦うのは絶対に面白れぇ、そう思い戦いを挑んだが、戦う気を見せやがらなかった。

 俺様にあてがわれた10体の土人形……だがどれも並ではねぇ動きをしてた。

 これを操る奴が弱いわけがねぇ。土人形が動かなくなってから、すぐさまジジイに奴について問いただした。

 ジジイから得られた情報は奴がどっかの国の『国王』という事だけだった。

 人間族の王とドラゴニュートの王では王の意味合いが違ぇ。ドラゴニュートの王は最強の証だが、人間族の王は偉そうに踏ん反り帰ってるだけで強くはねぇ。

 だが奴は人間族の王で在りながら、ドラゴンを圧倒する強さを持ち、単身で乗り込んで来やがる頭のおかしさも持っていた。

 絶対にあいつを見つけ出して戦う、そう決めて探しに行こうとしたら、一族の者達から待ったが掛かった。

 ドラゴニュートは他種族の前に姿を見せてはならぬ、だどうのこうのと言いやがる。

 ドラゴンまでなら許容出来たが、人族は許容出来ねぇと抜かしやがった。

 個々の戦闘力はドラゴニュートが勝るが、人族の数の多さは馬鹿に出来ないと……つまりこいつらがビビってるだけだ。

 俺様がいくら言っても聞きやしねぇから、無視して出て行こうとしたら、一族総出で止めに襲い掛かって来やがった。久しぶりに血が騒いだ。

 戦闘員全員を打ち破った後、俺様は近くの魔族が済む国で情報を集めて回った。

 あんだけの戦闘力を持った人間族国王だ、敵対してるこいつらでも情報は持っているだろうと思ったら案の上だ。

 ブライトタウン王国の国王……月島氷河。魔王殺しの一万人殺しで、けど奴の国は敵対してる筈の魔族と人間が共存しているという。どこまでもぶっ飛んだ野郎だ。

 その国の位置を聞きだし、道中強そうな奴を見つけては、戦いを挑み下しながら目的の国に着いた。

 ブライトタウン王国に着いた俺様は、パフォーマンスとして完全な竜化をして国民共をビビらせる事で無理矢理でも月島と戦う腹積もりだった。

 だが出てきたのは月島の嫁とその護衛だった……がむしろ好都合だった。

 明らかに今まで戦ったどの人族より強ぇ。護衛のジジイは俺に負けた王候補レベル……月島の女に関してはここまで強ぇ女は生まれて初めてだった。

 月島の女と一体一でやり合いたかったんだが、邪魔ばっかり入りやがって、右目と左腕を失った。

 油断していた……にしてもこの国は面白れぇ。俺様に欠損、ダメージを与えれる程の女が3人も居るとは思わなかった。

 だから俺様も本気で相手した。竜化を部分的に留める事で、竜化した際に重さ故に犠牲になるスピードを無くした。これにより攻撃力、防御力は鱗が圧縮される事で厚くなり、スピードは本来以上に出せるようになる。攻撃ってのは、素の威力に速度が乗れば爆発的に跳ね上がる。

 俺に欠損を与えた女2人を始末し、俺に矢を放ってくる女の弓兵を、空間魔法が使われる前に仕留めた。

 その後月島の女を仕留めに掛かったが、俺様の攻撃に合わせて後ろに下がる事で威力を逃がされた。

 その後吸血鬼の女と雑魚……月島の妹が出てきた後、待ちかねた月島が出てきた。

 だが此処から先は奴の言った通り蹂躙だった……まさか手も足も出ねぇとは思わなかった。

 俺様も一族の奴らによく言われたが、あれが理不尽な程の戦闘力って奴か。世界は広ぇな。

 人生初の敗北はケチのつけようのねぇほど、圧倒的だった。

 だが、そんな奴よりも強ぇ奴が居ると聞いた……日坂……そいつと戦わずして死ぬわけにはいかなくなった俺様は、奴の奴隷になる事を受け入れた。

 そしてついにその日坂と戦った……あれはヤべぇな。人間ってそこまで強くなれるのか。

 俺様の本気の一撃をくらっても少し痛そうにしただけで、むしろ俺様が一撃で勢いよく吹き飛ばされた。

 俺様の攻撃を一切喰らわず、じわじわと体力を削り切った月島とは違う。勝ち筋すら見えて来ねぇ、本物の強者だ。

 月島に日坂……そいつらには及ばないが国内にはロータス、グラジオラス、イクシオンと接近戦がそこそこ出来る男共も居る……俺様の人生はまだまだ血肉の踊る未来が待っている。

 

 

 

「――はーい、グライブさーん。ご飯の時間ですよー」

「………………」


 …………この状況は一体何なんだぁ……?

 『グライブさんのお世話係に任命されましたー、卯月遥香と申しまーす。よろしくお願いしますねー』

 と言ったこの女……俺様の世話係だぁ?

 んなもん頼んだ覚えはねぇし、付けるにしても、もっと色気ある女にしろよ月島の野郎。

 

「はいグライブさん、あーん」

「………………」

「あーん」

「要らねぇ。んなもん自分で出来る」

「駄目ですよー。グライブさん片腕になったばかりで、食べにくいでしょーう?」

「利き腕は残ってんだから飯ぐらい食える」

「まーまーそう言わず。あーん」


 ……テメェがしてぇだけじゃねぇかそれ。

 ……まあしてぇならさせてやるか、王やってた時も女共が世話焼きたがるのはよくあった事だ。

 俺様が黙って差し出された飯を食らうと女は嬉しそうに微笑んだ。

 

「意外と素直ですねー。あ、竜化した時の爪切りも私の仕事なのでー、後で切らせて貰いますねー」


 ……はぁ? 爪切り?

 

「あとー、片腕じゃ髪や体を洗うのも大変だと思うのでー、私がお手伝いしますねー」

「はあ? んな事俺様一人で十分――」

「――あとー……溜まった性処理も片腕じゃその……なので、その時は我慢せず私に申し出て下さいね……私も頑張りますので……///」


――――……月島ぁぁぁああああああ!!!!! この女どうなってんだぁっ!!!

こんな奴を世話係につけるんじゃねぇぇぇえええ!!!!!



「――……大丈夫です、私がお世話を任されたんです……役目を果たして見せますよー!」

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