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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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ファインプレー

 ふと目が覚めて、私はご主人様の左脇に眠っていたのだと気付く。

 昨夜は激しかった……ご主人様は手加減を知らないのかまったく…………気持ち良かったけど……

 脱いでいた筈の衣服は全て着せられていた……きっとゴーレム達に拭かれた上で着せられたんだと思う。

 ゴーレムと言えど、操っているのはご主人様なわけで……全身を拭かれるのはまだ良いけど……下着を履かされるのって、脱がされるよりなんか恥かしい。

 ご主人様はまだ眠っている……もう少し腕枕を堪能していたいけど、気になる事があるので、ご主人様が寝ている間に行動を起こさないと。

 …………名残惜しい……ご主人様の二の腕に頬擦りして、ご主人様の頬っぺたを摘まむ。

 起きてる時に仕返しは出来ないから、出来るのは寝てる時だけ。

 私は静かにそっとベットを抜け出すと、空間魔法で転移した。

 

 

 

「……こんな朝っぱらから、どうしたんだ姉ちゃん……」


 グラの屋敷へと転移して眠っているグラを叩き起こした。

 眠そうにしてる所悪いんだけど、ご主人様が起きてからじゃ、たぶん真実にたどり着けない。

 

「グラに聞きたい事があるんだよね~。グラは北の戦いで総大将務めてた訳だから、敵とも話したんでしょ?」

「あー……まあ、そうだな」

「その中にさ――――私の名前を出した奴っていた?」

「…………そういや、居なかったな」


 おかしい。やっぱりおかしい。

 敵は魔王軍の関係者で、一万人が殺された事に対して思う事があった魔族たちだ。

 なのに、私の名前が出てこないのはおかしい。

 

「絶対におかしいよね? だって半分は私が殺してるんだよ? なんで全部ご主人様に敵意が向くの?」

「それは……姉ちゃんがボスの部下として動いてたからだろ? 魔人族領に流れた噂にはボスの名前はよく上がってたけど、姉ちゃんの名が挙がる事は無かったからな」

「…………ご主人様に情報操作されてる気がする……」

「…………仮にそうだったとして、姉ちゃんは何が不満なんだ?」

「だって……ご主人様は私の罪まで背負うのに! 私はご主人様の罪を背負えないなんておかしいじゃん! 理不尽だよ!」


 ご主人様は私を左目と呼んでくれる……それは私の望んだ事だから素直に嬉しい。

 だけど、私がした事の罪は左目の罪……ご主人様の罪になるのに、ご主人様の罪が左目の罪……私の罪にならないのはおかしい。一心同体であるなら私にも分けるべきだと思う。

 

「まあ、確かに、ボスは1人で抱え込み過ぎだな。でも分けてくれって言った所で、ボスは分けてはくれねぇだろうから、俺達に出来るのはその分ボスを支える事じゃねぇか?」

「…………グラ。今後魔王軍関係で、ご主人様に話があるって奴は全部私に通して。これは私も背負うべき罪だから」


 話があるなら私の所に来い、戦いたいなら私が相手してやる。

 一々ご主人様の心を抉るんじゃない。


「――…………あー……悪いんだが姉ちゃん……俺……と言うか北の戦い参加者には、魔王軍関係者を姉ちゃんに合わせねぇようにボスに厳命されてるんだわ……」

「――――~~~~~! やっぱりご主人様のせいじゃないか!!!」


 情報操作の件は黒! ご主人様に詳しい説明を求める!!!

 

 

 

 

 

 穂乃香に泣かされた翌朝、フィサリスに叩き起こされた。

 

「ご主人様起きて! 私に説明して!」

「…………俺まだ昨夜のワインが抜けきってないんだが……」

「ご主人様はどんなに飲んでも一睡すれば回復する体質でしょ! というかそっちも気になるけど、今は私の質問に答えて!」


 バレたか。いや、まあ知らない訳が無いよな。

 普段はありがたい体質だがこういう時に使えないな。

 

「いくら俺でも情報操作までは出来ねぇよ……事実は事実として残る、改変は不可能だ」

「……………………本当に?」

「ああ、精々出来て誘導ぐらいだ」

「してるじゃん!」


 一万人が殺された事実は変わらない。その情報として魔人族領に流れていたのは、人間族の男女2人という情報だけだった。

 顔の情報こそ割れていたが、名前を知る者は居なかった。そこに俺は『月島氷河』と名を刻んだ。どうせ、村が目立ち始めてすぐバレる事だったからな。

 仕込み自体は半年間の時から行っていた。極力、目撃者が残る場合は俺が、残らない場合はフィサリスにさせていたからな。文句があるなら俺に言いに来い。

 

「俺は人間と魔族共存の国の王と名乗る為に、実績が必要だった。人間族との戦争を起こそうとする魔王軍含め魔王を滅ぼし、魔族を滅ぼそうとするレッドリアの教皇を殺したんだ。例え恨まれ畏怖されようと、一万人殺しは俺には必要な肩書だったわけだ。国王として舐められないためにもな…………でもお前には必要ないだろ?」

「………………ご主人様が国王になるって決めたの、きっかけリノだよね?」

「…………さて、朝飯の時間だ」

「ご主人様!? そういうのがズルいんだよっ!?」


 知らん。1つ言えるとすれば、それはお前が背負う肩書では無いと言う事だけだ。

 俺は魔王を下し、教皇を下し、ドラゴニュートの王まで下し、国民からは神様扱いだ。もう幾つぶっ飛んだ肩書が増えようが、大して変わらないだろ。

 こうやって英雄譚って作られて行くんだろうな……増える肩書と話の誇張、俺が良い奴で語られるか悪い奴で語られるかは、俺の今後の人生の歩み方と話の作り手次第なんだろうなぁ…………真っ当に生きなきゃ子孫に迷惑かけちまうな。

 真っ当に生きれる様に頑張ろう。明日から。

 

「今日は褒賞、爵位授与式があるんだから、さっさと食べるぞ。文句はまた後で聞いてやる」

「うぅ…………分かった」

「水奈、穂乃香、お前らも起きろ。朝だ」

「はーい」「…………んみぅ?」


 寝たフリをして抱き着いていた穂乃香と、素で寝ていた水奈を起こす。

 水奈は相変わらず朝が弱い。陸上部の朝練に間に合うギリギリに起きるから、素で弁当を置いて行ってたんだよな。俺が持って行ってたから良いけど。

 それがきっかけで俺も今、異世界にいるんだから不思議なもんだ。水奈のファインプレーだな。

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