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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
322/346

王VS王

 人の不在中に好き勝手暴れやがった駄竜の顔面を蹴飛ばした。

 抱き留めた水奈を穂乃香の傍へ下ろし、首を絞められていた直ぐで悪いが、穂乃香の治療に当たって貰う。

 穂乃香以外にもアマリリス、ラミウム、マリン、ラミと重傷者が多い……アイリスやハピィ、エリーザも決して軽傷とは呼べない状態だ。水奈の体力次第ではあるが、もう少し頑張って貰う事になる。

 

「水奈。自警団本部に重傷患者を集めて、調合師団と協力して治療に当たってくれ…………穂乃香。俺の留守をよく守り抜いた――――後は俺に任せろ」

「…………ひょう…………くん……」

「………………ピアニー」

「――――此処に」

「穂乃香、水奈、エリーザ……それから付近に倒れている者達全員を連れて、自警団本部へ迎え」

「御意――『サークル』『テレポート』」


 負傷者の回収はピアニー任せる。

 付近に味方が誰も居なくなった事を確認して、こちらを見つめる竜モドキに視線を合わせる。


「よぉ月島ぁ……待ちわびたぜ……随分と遅かったなぁ……! 俺様と戦う気にはなったかぁ?」

「グライブ……お前は俺の逆鱗に触れた。故に、これから行うのは戦いどころか、躾ですら無い――――蹂躙だ」


 城土地内の地面を地中深くまで割り、その全てをナイフの形にする。

 作り上げたナイフは空間を覆い尽くすがの如く、宙に等間隔で浮かび上がらせる。

 

「大した数だ――が、そんな土塊のナイフが俺様に効くとでも思ってんのかぁ?」

「――――『アブソリュートゼロ』」


 浮かび上がらせた全てのナイフに、厚めに固体窒素でコーティングする。

 突如大量に現れた-210℃の塊によって、城は凍てつき、極寒の地と化す。

 固体窒素の塊と化したナイフを、目の前の竜モドキに合わせて背中に集め、二翼の翼とした。

 

「…………寒いなぁおい…………火竜の俺様ですらこんな寒いって言うのに……どうしてその中心にいるテメェはピンピンしてんだよ…………」

「お前には知る必要の無い情報だ」


 『氷河。全身の体温維持は出来るけど、代わりに自動回復で回復してたMP全て使っちゃてるから、MPは今ある分しか使えないよ』

 ――――十分だ、フィア。

 全身が燃やされる様に熱い……筈なのに、フィアの炎はやはり温かく感じる。

 両翼を広げて羽をまき散らす――即ち、固体窒素の刃が敵を襲う。

 

「がっ…………くっ……この!」


 敵も翼を広げて宙に舞い、避けようと動くが、この極寒の中では本来のスピードを出せない。

 俺は羽による追撃を行いながら、翼を羽ばたかせて一気に接近すると、片翼を振り上げて、切り裂く様に振り下ろす。


「――落ちろ」


 翼は敵の胴体を捕えて、地面に叩きつける様に吹き飛ばした。

 俺はそこに容赦なく羽をまき散らす。

 

「――っ! 舐めんなぁぁぁあああああ! 『フレイムブレス』」


 地に落ちた竜が口から火を噴き、こちらへと放射して来た。

 両翼で俺を包み込む様に丸め、ブレスを全て防いで見せた……代わりに個体窒素が融けてしまった。

 融けている……即ち現在フィアは俺のMPを使用していない……回復中だ。

 そして回復したMPを使い、俺はこう唱える。

 

「『アブソリュートゼロ』」

「――! 際限無しかよぉ……っ!」


 ああ、そうだ――お前の地獄はまだ始まったばかりだ。

 舞い散る羽は、一直線にしか飛ばない訳じゃ無い、全てが俺の制御支配下――――つまり、当たるまでお前を追い続ける。一本一本がアブソリュートゼロを纏ったナイフだ。

 俺の操る羽から逃げる様に、敵は宙を飛び回る。だが確実に飛来する羽によってダメージが蓄積し、飛行速度がどんどん落ちて行く。

 

「はっ…………はっ…………くそっ…………っ!」 


 そうして目の前の竜モドキが飛ぶことに精いっぱいで動けなくなった頃、俺は翼を全て羽に戻し、敵を中心に球に囲みこむ。

 

「360度包囲……俺が本気で死を覚悟した数の暴力だ――存分に味わえ」


 敵を囲む羽が、何十段階にも別れて、隙間余すことなく敵へと襲い掛かった。

 

 

 



「――――あれだけの飽和攻撃をくらっても生きてるなんて、相当のタフだな。ドラゴニュートの王」

「……………………」

「尤も、もう声も出せそうにないか」


 全身血傷だらけで、出血部から凍結している。

 このままだとHPや出血の問題では無く、凍死しかねないか。

 

「ホーリードラゴンは言っていたな。敗北者にあるのは死のみだ、と」

「……………………」

「だが俺はドラゴンでは無く、人間だ。敗北者に与えるモノも違って来る」


 ぶっちゃけ殺してやりたいぐらいにはムカついている。

 コイツは俺の大切に手を出した。穂乃香の骨を砕き水奈の首を絞めたと言うだけでも万死に値する。

 ただ……重傷者こそ出ているが、こいつは1人も殺してはいない。

 コイツは純粋に強い奴と戦いたくて俺のとこまで来て、穂乃香に目を付け一対一がしたいが為に全てを蹴散らし、腕を失くして手加減を止め、挑んで来る者の挑戦を受けていたのだ。

 言えるとしたらそう……悪意が無い分、質が悪い。

 事前にアポを取れ、そして時期を考えろ。タイミングが悪過ぎだ。

 

「おい、敗北者……俺の奴隷になれ。そしたら俺より強い日坂と戦わせてやる」

「………………!」

「衣食住は保証してやる、給金は出さねぇ。今回お前が出した被害の賠償額は洒落にならないからな。それを返済し終えるまではタダ働きで扱き使い倒してやる」

「……………………」

「俺とは違って政務は行ってない象徴としての王だろ。居なくなっても次に強い奴が王になるだけだ。此処で俺に殺されるか、俺の奴隷になって日坂と戦うか……好きな方を選べ」


 ドラゴニュートは竜人……扱いはエルフやドワーフと同じだ。

 『竜化』という特殊なスキルを持つが、扱いはコイツも人間、魔族と同じ人族だ。

 コイツが戦闘中に爪を使えど、牙を使わないのは、使う習慣が無いからだな。噛み付きを攻撃として用いるアマリリスがおかしいだけだ。

 元ドラゴニュートの王、グライブが俺の奴隷となった。理由が此処で死ぬよりもっと多くの強い奴と戦いたいって、どんだけ戦闘狂なんだよコイツ。奴隷を奴隷らしく扱うのは初めてだな。

 殺した所でメリットが無く、損しか受けてないからな。コイツには嫌って程働いて貰う、火竜の爪を安定して確保できるって事ぐらいだけどなメリット。扱いはアマリリスより下。

 隻眼の隻腕でコイツと鏡写しとか嫌だな……早いとこ義手を完成させるか。

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