表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
320/346

『弱肉強食』

『おら! おら! どうしたぁ!!!』

「くっ…………」


 この竜……硬すぎる……!

 炎に対し、水で相殺を試みているけど、属性の相性なんて関係ないと言わんばかりに打ち消される。

 まるで炎に水が吸われているみたいに…………水が吸われている……?

 ………………試してみようか。

 

「ハァっ!」

『ぐっ!?』


 水から電撃に変えて蹴りを入れたら、今までよりもダメージが入った……!

 雷が弱点……? いや、まだ判断するには早い。

 私はこの世界の属性の概念に囚われて、このドラゴンの弱点は水だと考えた。

 でももし、そうでないならば…………

 

「はぁぁぁあああああああ!!」


 火は――雷と変わらない。

 つまり雷が弱点なのでは無く、このドラゴンは水に強かったのか。

 風は――雷と変わらない。

 土は――またしても変わらない。

 氷は――――――攻撃を避けた……?

 

「……氷か」


 両手両足に冷気を纏う。

 ドラゴンのこちらへ対する警戒度が上がっているのが、目に見えて分かる。

 

『ちっ! 気付かれたか…………だが、少し遅かったなぁ。そっちのジジイはもう持たねぇぞ!』

「…………ハァ…………ハァ…………私も、年老いましたなぁ…………」


 敵の攻撃を防ぎ続けていた執事が肩で息をしている。

 ドラゴンは軽々と攻撃してくるが、それを受け止める執事は、一撃一撃を全力で行わねばならない。

 体力の消耗度が違う……このままだと私がドラゴンを倒すより先に、執事がやられる。

 

「……セバスチャン、下がりなさい。後は私が戦います」

「――いえ……それは、出来ません…………妃様に何かあれば……私が陛下に叱られますからな……っ!」

『――――そうか。じゃあ叱られて来い!!!』


 ドラゴンの振るった尻尾が、執事を王城の壁へと吹き飛ばす。

 今までの戦闘の中で一番重い攻撃……弱点がバレた事で敵の余裕がなくなったか。

 死んではいないと思うが、水奈が回復をしてくれても戦闘の復帰は不可能……私はドラゴンと一対一になった。

 

『さぁ……遊ぼうぜ月島の女ぁ!』

「……私、氷君以外の男お断りなんだけど」


 敵の爪と私の拳がぶつかる。弱点属性を付いても相殺がやっと……ふざけた攻撃力だ。

 敵は爪に交えて、尻尾も振り回してくる。これを直撃で受けるのは不味い……転移で避ける必要がある。

 一対一になった事で攻撃がまともに当たらなくなってくる……このままじゃMPが先に切れてしまう……――

 

『――――痛っ! なんだぁ? どっからの攻撃だ!!!』


 ドラゴンの頭に魔法矢が刺さっている――っ! 

 バカラミウム! 碌な回避手段を持たないくせに、狙われる様な真似を!

 

『――! そっちかぁ!!!』


 ドラゴンがラミウムに向かって飛んでいく。

 させるか――っ!

 転移で先回りし、『グレイシャー』を放つ。

 

『「ファイヤーブレス」邪魔だぁ!!』


 氷の弾幕は敵のブレスによって消し飛ばされ、私自身の攻撃も躱されてしまった。

 ドラゴンの爪がラミウムへと迫り――――――ラミウムの姿が消えた。

 あれは転移……透視の暗殺者か…………今回だけは、よくやった。

 

 

 



「――ラミウム様! 無茶はなさらないで下さい!」

「――――……ピアニー様…………あのドラゴンを囲むように連続の転移は可能ですか?」

「…………可能ではありますが、しかし――」

「――穂乃香様お1人では限界があります……出兵中の兵が戻るまで耐え抜かねばなりません――――我々は今、国家の底力を試されているのです!!!」






『おいおいおい……こりゃ何の冗談だぁ?』


 ラミアに、グリフォンに、ケロべロス……喰らい合うだけの獣共が、仲良しこよししてやがんのか。

 それに関しては別に良い。牙抜かれたと言うだけの話だ。

 問題は人間、魔族と違い、完全な弱肉強食であるこの獣共が、頂点であるドラゴン《おれさま》を囲んでいやがる事だ。

 

『人族に飼われて思考まで人族に染まったかぁ? テメェら俺の前に立つってどういう意味か分かってんだろうなぁ……』

『…………分からない訳ないでしょ。今だって震える体を、逃げたくなる本能を、どうにか押さえつけてんのよ』

『本能に逆らってでも、俺に歯向かう義理が人族にあるってぇのかぁ?』

『……違うわ。理由なんて単純よ――――アンタなんかより! 本気でブチギレたボスの方が何百倍も怖い!!! 穂乃香に何かあってボスが我を失ったら、国家消滅なんて物じゃ済まないわよ! アンタに挑む方がまだ存命確率が高いわ!!!』


 ボス……? 月島か? 俺様より月島の方が怖ぇつったのか……?

 俺様より人間が怖いと……?

 

『くっくっくっく! はっはっはっは!!! 良いぜ獣共! テメェらに現実を教えてやる!!!』


 月島が来るまでは『ドラゴン』として遊ぶつもりだったが――止めだ。

 竜化を解いて、元の姿に戻る……ああ、良い反応だ。

 

『人体化……ドラゴニュート!? ――――っ!』

「…………遅ぇ」


 ラミアの胴体に右腕を貫通させる。

 俺様の動きに反応し目で追えたのは、月島の女だけみてぇだな。

 やっぱ他は相手にすらならねぇか。

 ラミアの胴体から腕を引き抜き、女の蹴りを左腕で受け止める。

 もれなく冷気を纏ってんのが厄介だな……だが、獣共は大将が潰された事で大人しく――

 

『――貴様ぁぁあぁああああぁぁぁぁあああああ!!!!!』

「……あん?」


 マーメイドが鬼の形相を浮かべて高圧縮水流を飛ばしてきやがる。

 ラミアがやられてブチ切れたか? 陸の上なのに粋が良いじゃねぇかぁ!

 

「――おらぁ!」

『――――駄目よ! マリンちゃん!』


 俺様が拳を振りぬく前に、マーメイドがスライムに飲み込まれ、広範囲に広がったスライム体の中に移動された。

 緊急避難が可能な移動型水路か? 邪魔くせぇな――――

 

「『ファイヤーブレス』」

『――嘘っ!? 人型でも出来るなんて聞いてないわよ!!!』


 スライムの大半を消し飛ばした。恐らく中に居たマーメイドも一緒に燃えたな。

 

『「ブリザードストリーム」!!!』

「まだいんのかぁ!」


 月島の女とは別方向から氷魔法が飛んできた――――あれはレイスか。

 動こうとした時、地面から生えてきた蔓が俺様の足に絡み付いて来やがった。

 植物系がいるな……だが、この程度じゃ俺様は止まらねぇ!

 蔓を引き千切ってレイスへと接近し、拳に青き炎を纏わせる。

 霊体と言えど、炎のダメージは入るだろ――

 

「――させるかっ!」

「お前の相手は後だ女っ!」


 度々転移から奇襲してきやがるが、こいつとの戦いを楽しむよりもまず、外野の排除が先だ。

 蹴りに蹴りを合わせてぶつけ、脚力で強引に吹き飛ばす。大したダメージは入らずとも時間稼ぎにはなる。

 レイスを始末するか。

 

『ダメェェええええええええ!!!』

「失せろ鳥ぃ!」


 レイスの前に入り込んできたハーピーをレイスごとぶん殴る。

 ここの獣は面白ぇな。ラミアが倒されて激怒するマーメイドに、レイスを庇うハーピー……本来喰らい合うだけの獣の癖に、仲間の様に本当に仲良しこよししてやがる。

 だが……実力がある方の獣はこれで最後か。後は動けそうにねぇな。

 

「――それじゃあ、月島の女ぁ……こんどこそ――」


 一対一で……そう思った矢先、土塊で出来たナイフが、俺様の上空から降って来やがった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ