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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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『王の妃』

 国内防衛を言い渡されたけれど、南から敵が攻めて来る事は無かった。

 やっぱり氷君が全て倒したんだと思う。氷君の過保護はちょっと度が過ぎる……そんな所も好き。全部好き。

 そうして戦うことなく、いつもと変わらない1日を過ごした翌朝……城内は慌ただしく人が行き来していた。

 原因は突如上空に現れた竜……ドラゴンのせいだ。

 

「ど、ドラゴンだと……」

「なんたってドラゴンがこんな所に!」

「ど、どうするんだ?」

「どうするって言ったって……」

「戦うしかないだろ! 俺達は陛下達に国を任されたんだぞ! ブライトタウン王国の名に懸けて剣を取れ!」


 ………………志を否定はしないけど……こいつらは氷君の意志を理解してない。

 

「――――落ち着きなさい!!!」


 私が大声を出した事で、全員の動きが止まった。

 大声なんて出し慣れてないんだから、出させないで欲しい。

 

「ドラゴンの目標は氷河国王……つまりはこの王城です! 騎士団員と自警団員は、城内の非戦闘員と王城付近の住宅に住む者達を、自警団本部まで避難させなさい!」


 一部の者はすぐさま動き出したが、末端と思われる兵士は私の指示を聞いてもポカーンと呆けている。あまりイライラさせないで欲しい。

 

「何をしてるのです! 早く行きなさい! 今すぐ!!!」


 私に怒られた兵士はようやく慌ただしく動き出した。

 一般兵がいくら集まった所でドラゴンに勝てるとは思わない。被害をでたらめに大きくするのは氷君の望むものじゃない。戦闘の参加許可が下りるとすれば、幹部レベルだけだ。

 彼らには避難誘導と同時に自身も避難して貰う。

 

「魔法師団員は我が子達を連れて自警団本部へ。何としても守り抜いて下さい」

「如月さ……王妃様はどうなさるのですか……?」

「私は……あのドラゴンを躾けて来ます」


 今、国内での最大戦力は私だ。氷君からも総大将を任されている。

 氷君から留守を任されたのに、守り抜けなかったなんてお粗末な結果は見せられない。

 いや、あってはならない。私は氷君の妻、氷君の伴侶として相応しい女でなければいけないのだから。

 ――氷君と私の愛の巣を守り抜いて見せる!

 

「――妃様。及ばすながら、私もお供させて頂きます」


 む。この執事は……確か緊急時の私の護衛……国内で私の次に強いと氷君が言っていた魔人……

 

「…………良いでしょう。付いて来なさい」

「御意」

「――……お母さん……」


 魔法師団員に護衛されながら避難をしていた途中の結衣香が、列を離れて私の下まで駆け寄って来た。

 この子が不安げな顔で、私を見つめて来るのは初めてかもしれない。

 

「結衣香、貴女はお姉さんなの。煌輝と柚奈、ビオラちゃんと悠真君をしっかり守るのよ」


 結衣香の頭を撫でて、魔法師団員に後は任せる。

 私は執事を連れて、王城の屋根の上に転移した。

 上空のドラゴンは、こちらの見定めでもするかの様に見下ろしていた。

 

『おい……月島はどうしたぁ……俺様はあいつと戦いてぇんだよ』

「お前如きの相手をしてるほど、氷君は暇じゃない」


 私だって最近全然構って貰えてないのに……! 部外者は引っ込んでろ!

 

『俺様如きだと……? テメェ、この姿が見えてて言ってんだな?』

「ドラゴン如きに臆する女じゃ、氷君の妻は務まらないのよ」

『………………面白れぇ!』


 ドラゴンがこちらに向かって急降下してくる。

 私はその行路に大量のファイヤーボールを作り出す。

 

『――! 無詠唱か!』


 ファイヤーボールは直撃したが、敵にはダメージが入った様子が無い。

 無詠唱って知って攻撃くらってるのに、なんで嬉しそうなんだろうコイツ。氷君と戦いたいって言うのも、もしかして戦闘狂だから? 

 ……私と氷君が嫌いなタイプだ。

 ダメージが入らないのであれば仕方ない、魔法戦は諦めて接近戦に切り替える。

 敵に火は効かなかった、ドラゴンで青い炎を纏っている事も考えると、相性も良くなかったのかもしれない。

 両手両足に水を纏い、重力魔法で浮き上がると同時に一気に接近し、拳を叩き込む。

 

『…………良いパンチじゃねぇか……』

「……ちっ」


 ダメージこそ入っているものの、そこまで大した威力を与えれていない。

 防御が堅い……これは長引きそうだ。

 

『今度はこっちの番だ!』

「――!」


 ドラゴンが勢いよく爪を私に向けてきた――!

 こいつ堅いだけじゃ無くて、速い――っ!

 

「――ふん!」『あぁ?』


 ドラゴンの爪は、執事の振るった短剣に弾かれた。

 

『俺の攻撃を弾いただと……? くっくっく! おいジジイ! 良い得物と技を持ってるじゃねぇかぁ!』

「最強の生物、ドラゴンに褒められるとは、光栄ですなぁ」

『月島の野郎とやり合うつもりだったが、その前座の余興にテメェらは丁度良い!』


 前座の余興……? あまり舐めるなよ駄竜。

 氷君の手を煩わせる事なく――お前は私が倒す。

 

「――妃様。攻撃は私が全て防ぎます」

「…………任せました」


 長期戦ともなると転移を繰り返すのはMPの効率が悪い。

 魔法型では無くバランス型の私は特に、弾切れに注意が必要だ。

 ……確実に削り取ってやる。

 

 

 

「いやー穂乃香ちゃん達派手にやってるなぁ……」

「やってるなぁ、じゃ無くて! 加勢には行かれないのですか!? こちらが押されていますよ!」

「え? 行かないよ。僕より強い2人でも歯が立たないんだぜ? 僕が行ったって無理な物は無理。無駄死にとかしたくないし、今回の戦争で僕声掛けされてないし、たぶん参加しなくても氷河ちゃんに怒られたりしないと思うんだよね。あのドラゴンの標的が氷河ちゃんって事は、この事態の原因は氷河ちゃんの過失だから」

「私達は国王の臣下ではありませんか!」

「臣下と忠臣は違うぜ、ピアニーちゃん。僕が氷河ちゃんに従うのは、僕にも利益があるからだ。でも今回は無い。利益が無いなら僕は動かない、動く理由が無い。奏ちゃんのピンチという訳でも無いしね! ……でもピアニーちゃんは活躍した方が良いかもね、故郷の処遇がマシになるかもしれないぜ?」

「…………っ! 私は、私の意志で加勢に行きます……!」


 加勢ね……あんな化け物クラスの戦いは、ピアニーちゃんじゃ厳しいと思うけど。

 まあ、出来る事が無いわけでは無いかもね。

 

「さてさて。氷河ちゃんが帰って来るのが先か、穂乃香ちゃんが負けるのが先か……けど死人が出るとしたら、それはきっと……水奈ちゃんなんだろうなぁ――――」

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