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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
318/346

終わりと始まり

「――――――――…………終わったか」

「終わった? 勝ったのか?」

「ああ、リコリスはリノの手によって消滅。勇者4人はロータスに敗北し、敵の大将格はフィサリスによって壊滅状態だ。まあ、うちの側近と騎士団長を抑えられるような、強者はいなかったと言うだけの話だ。――ああ、神奈が敵の騎士団長と一対一で勝った事で、敵の士気低下に大きく貢献した。後でちゃんと褒めてやれよ」

「…………美鈴は戦闘に関して俺に褒められるより、師匠であるお前に褒めて貰いたがってるぞ……フィサリスさんと出て行った夜以来褒めてないんだろ? リノちゃんや弥生ちゃん、美空も褒められてるのにって躍起になってたぞ」

「あいつはその方が伸びるからな」


 他の奴の前では神奈と呼ぶくせに、俺の前だと隠すの諦めて美鈴って呼ぶの止めてくれない?

 俺とお前が仲良しだと思われちゃうじゃん。

 神奈が俺に褒められたいと思っている事は知っている。でもあいつは褒めるより、褒めない方が自身の今に満足せず、成長する事が出来る。

 褒められたいと言うより、俺に実力を認めさせたいか。戦力になると言う証明。

 神奈は俺に言葉で認めさせるより先に、免許皆伝を受けたから肩透かしをくらった気分だった。

 水奈や穂乃香、リノは事ある事に褒めていたが、ほたる、アイリスはそうではなかった。

 だが、ほたるはリコリスからリノを守り抜いた事で、アイリスはホワイトールの副騎士団長に勝った事で俺に褒められている。

 弟子の中で自分だけ褒められてない、今回の作戦でほたるとアイリスの出兵は決まってたのに、自分だけ国内待機だった。戦力に数えられてないと思ったわけだ。

 クーデターの時も神奈は、水奈と安全地帯に置かれた事に不満を持っていた。

 ……褒めてやった方が良いのか? 騎士団長に勝った事は大手柄ではあるが……

 褒めたら今後もちゃんと、戦闘に参加させろと言われそうなんだよな。

 子持ちの母親があまり戦闘に出張るもんじゃ無い。フィサリスやラミウムと一緒に国内でママさんトークに花を咲かせていればいい。戦闘は俺や、日坂や、ロータスの仕事だ。

 まあ、フィサリスが大人しくしてる訳が無いんだけどな。ロータスを連れて行くともなれば余計に。

 

「――さて、俺らも仕事をするか」

「来るのか?」

「ああ。ピタリだ」


 俺と日坂は自警団幹部達を王城地下に召喚した後、王城の北にそびえ立つ山脈……その中腹部存在する洞に来ていた。

 王宮からの距離はそこそこ離れているが、千里眼の範囲内の為、情報は全て読み取れた。

 そこから此処に訪れるその人物たちもな。

 

「――ついに出口で……な、何者だ貴様らは!?」

「ブライトタウン国王、月島氷河だ。待ちわびたぜ――パープルニア国王陛下殿」


 前列を歩いていた兵士の後ろ、如何にもな装飾の施された服を着る男に視線を合わせる。

 此処に現れたのは護衛の兵士と王族家御一行だ。

 シェルターと化している王宮に入口は1つしかない。だが出口は2つある。

 王宮でも王族と一部の者しか知る事の無い、隠し通路。ご丁寧に空間転移阻害と内側からしか解除不可能な装置が複数存在する為、外からの侵入には使えない脱出通路だ。

 こいつらは門が空いたと同時に、シェルター内の戦力のほぼ全てを足止めに使い、逃走を開始した。

 フィサリス達の所に戦力が集中したのはその為だ。

 リコリスは門が空いた時点で腹は括っていたようだな。俺が来たなら逃げ場など無い、あいつは身を持って知っている。

 ただあいつの予想と違ったのは目の前に、ほたるとリノが再び現れた事。そして片方を倒す事も出来ず2人に敗北した事。あいつはせめてもの報復として、2人を殺して俺の下に晒すつもりでいた様だが……結果は俺が出るまでも無かった。

 

「何故貴様が此処にっ!? 王宮を攻めている筈では――」

「――王宮はうちの兵だけで落とした。俺らはずっと此処でお前達を待ってたんだよ……強いだろ? 我が国の兵は。『怪人』や『懐刀』だけじゃない。お前達が一体何を相手に喧嘩を売ったのか、身を持って知って貰おうと思ってな」


 『怪人』と『懐刀』が居るから勝てない。居なければ勝てる……それは違う。

 俺と日坂にではなく、ブライトタウン王国そのものに逆らう気など起きなくさせる為、今回俺と日坂は王宮攻略に参加していない。ブライトタウン王国軍兵士だけで、難攻不落を落としてみせたわけだ。

 まあ、サポートはがっつりやってたけど。言わなきゃ分からないでしょ、そんなもの。

 

「ブライトタウン王国大公、日坂統也だ。大人しく敗北を認めてくれると無駄な血を流さずに済んで、こちらとしても有難いんだが」

「くっ………………」

「――ああ、時間を置けば出兵中の兵が、ブライトタウンを落としてくれるなんて希望は捨てて置け。うちの友好国とのぶつかりを避けて、我が国まで辿り着くための立派な行路作りだったが、全て俺と日坂で蹴散らしてきた。今頃この国向かって撤退中だろう」

「――――――――」


 リコリス作の行軍策は立派な物だったが、あいつが俺の千里眼の範囲に入り、殴られた時点でその辺は全て筒抜けだった。

 一番の敗因は、機密情報を有してる参謀が俺と遭遇した事だな。

 

 

 

「――リノ」

「……パパ」

「仇討ちをしてみてどうだった? スッキリはしたか……?」

「………………」

「……一瞬の達成感、後に残るは虚しさばかり……だろ?」

「…………うん」

「……もう、復讐の炎になんか囚われるんじゃないぞ」


 リノを抱き締めて頭を撫でてやる。

 リノも俺の背に腕を回して強く抱き締めた。

 ……大きくなったな。昔は抱き上げてたのに、今は立ったままでもリノの頭が俺の胸板に当たるんだ。

 リノの心に復讐心は燻っていない……もう大丈夫だ。

 

「――で、ほたる。お前は俺に何を望んでいるんだ?」

「え! いや、えっとですね…………その、私も頑張りましたので……その、ご褒美と言いますか……何と言いますか……」


 ほたるが何やらもじもじと、しかしキッチリと期待の眼差しをこちらに向けている。

 まあ、心で何を思っているのかは見えてるけども。

 リノが俺を抱き締めるのを止めて離れる。ほたるを褒めて上げてとの事だ。

 

「……ったく」

「わっ…………えへへ……」


 ほたるの頭を撫でてやる。

 こいつはブルーゼムの王城に居た時から、俺に撫でて貰う事を望んでたからな。

 ほたるは目を細め、ただ撫でられてる感触を味わっている。

 ご褒美か……そう言えばこいつ、俺の頬にキスしただけで満足してたな。

 ……………………

 

「――――っ」

「――……え」

「今回一連の事への褒美だ。信念、よくぞ突き通した」


 ほたるがリノを守り重傷を負った時と同様に、額にキスをした。

 意味は前回と変わらない。俺のほたるへ対する信頼だ。

 

「……――!? /////~~~! ――――……」

「……ん」


 顔を真っ赤にし、情報を処理しきれなくなったほたるは、リノの身体へと倒れ込んだ。

 リノが抱き留めてくれたので、後は任せて大丈夫だろう。

 こいつは変態的行動が多いくせにウブなんだよなぁ。

 さて、後はこちらに視線を向けている神奈とフィサリスか。

 フィサリスは素直に自分もと望んでいるが、神奈は複雑だ。

 褒められたいけど、褒められたいと素直に心でも言いたくない。凄く考えない様に葛藤しているが、その葛藤すら俺には全て見えている。

 

「……よくやった」

「――――!」


 撫でる……という程では無い。頭を軽くポンと叩く程度、神奈にはそれぐらいで丁度良い。

 

「フィサリス、帰るぞ」

「はーい!」


 フィサリスへのご褒美は夜に回す。

 今じゃできないからな。

 

「――帰るって……これからパープルニアと条約を結ぶ話し合いだろ?」

「日坂……俺が何の為に、お前に外交官としての知識と振る舞いを、叩き込んだと思ってるんだ」

「――! 俺に丸投げするつもりか!?」

「北の戦いの行方も気になる……土地は俺らが休眠を取った廃村と、アーメルト子爵家領地、この2つは確実にもぎ取れ。賠償金の適正額はロータスに聞け」

「…………グラジオラスさん達の方か…………はぁ、分かった」

「採点はこっちに戻って来てからしてやる」

「………………」


 嫌そうな顔するな。これも経験だ。お前は大公、国王の代わりを務めろ。

 フィサリス達にはブライトタウンについてから召喚すると告げて、俺は1人ブライトタウンへと向かった。

 

 

 

 

 

「ねぇ~ミラ姉ちゃん~! アイリス姉ちゃんは~?」

「アイリスちゃんは今、お仕事中なのぉ。夜には帰って来るわぁ」


 国外では戦争中、でも国内ではそれを全くと言っていいほど感じることが無い。

 国王様や大人達が頑張ってくれているから。国内は今も平和に過ごせている。

 

「――――! 何アレ~?」

「うん? どうしたのぉ?」


 指が示す上空に……青い炎……?

 ――っ! 違うっ! あれは――どうしてこんな所にっ!?

 

「――みんな急いで! 今すぐ院の中に避難してっ!!!!!」


 平和が――終わろうとしていた。










 本当だ……本当に人間と魔族が共存してやがる……!

 ついに見つけた……此処に居るのか月島氷河――!

 

『出て来い月島ぁああああ!!! 俺様の相手をしやがれぇえええええ!!!!!』

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