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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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『側近と補佐官』

 王宮内へと侵入後、私と美鈴ちゃんは王宮の中庭に居た。

 開けたスペースがあるので、そこが一番戦いやすいだろうという指示だったそうだ。

 私達の役目は本命であるリノ達に意識を向けさせないための搖動、即ち囮だ。

 私が派手目に魔法を打ち鳴らす事で、侵入者が此処に居ると相手に教える。その間にご主人様が日坂君とロータスを通して、リノ達を敵に見つかりにくいルートに案内する。

 『今回の戦いに置ける必須討伐対象はリコリスだけだ。他は無理に殺す必要は無い、必要は無いが、殺さないために自分達が被害を受けるなんて事になるぐらいなら、迷わず殺せ』ご主人様から作戦開始前に全員にそう伝えられている。

 だからここでの戦いはどう戦おうと自由ではある。でも――

 

『――フィサリス、神奈に人を殺させるな。あいつも戦争に参加するとあって覚悟は決めて来てこそいるが、あいつは気にしいだからな。人を殺したとなれば後日引き摺る結果は目に見えている。育児もあるのに精神を病んでなどいられない……必要となればお前が処理をしてくれ』

『――フィサリスさん、神奈の事……よろしくお願いします』


 ――……あまり過激な事は出来ないかな。

 大事にされてるなぁ美鈴ちゃん。大公夫人で国王の愛弟子、国家トップの男2人に大事に扱われてるなんて、国内の女性に羨まれるポジションに居るなぁ。

 まあ仕方無いかな。美鈴ちゃん可愛いし良い子だもの。私もこの子に人を殺させるのは反対だ。

 そんな役目はこの子には似合わない……汚い仕事は――私の役目だ。

 

「――痛いっ!?」


 ――!? 何事っ!? なぜ故に私は美鈴ちゃんからでこピンされたの!?

 

「ご、ごめんなさいフィサリスさん……でも、日坂先輩がお兄さんに『今すぐフィサリスにでこピンを喰らわせろ、今すぐだ』と強く言われたそうで……何を考えていたんですか?」

「………………え、いや、うん…………何でもないよ~」

「………………顔赤いですよ?」


 美鈴ちゃんに胡散臭げな目で見られてしまった。

 もぅ~~~! ご主人様っ! そういうのがズルいんだと何度言えば分かるんだっ!

 今回は間に日坂君と美鈴ちゃんを挟まれたせいで、余計に恥ずかしいじゃないかっ!

 大体、処理を私に任せて置きながら、私の役目としては認めないなんて、ご主人様こそ矛盾してるじゃないか…………私に処理させるのが、ご主人様にとって不本意な事は分かってるけど…………むぅ……

 

「――! フィサリスさん、敵が来ます! パープルニアの近衛騎士団長や宮廷魔術師筆頭もいるそうです!」


 パープルニアの宮廷魔術師? う~ん、確かそんなに強くなかった様な気がするな。

 パープルニアという国自体そんな強い兵が居た気がしない。

 

「宮廷魔術師の方はサーシス以下の雑魚だから私に任せて。騎士団長の方は確かクーデター前に、ロータスと同等って言われてたから少し気を付けて」


 まあ、今のロータスでは無く、昔のロータスだ。つまり美鈴ちゃんと私の敵じゃ無い。

 

「美鈴ちゃんが私の対応できない、高速戦闘を行う奴だけ抑えてくれれば、後はこっちで片付けるから……任せて?」


 遠目に迫りくる敵を確認して、私と美鈴ちゃんは重力魔法で宙に浮く。

 転移が出来ないこの空間の中では、空中戦が可能な私たちは有利だ。

 少し高めに上昇すると頭上にシェルターの天井が見える。

 室内の明かりが零れているからこそ、中庭でも見渡せるレベルには明るいけど……

 牢に閉じ込められてた時を思い出すな……朝も夜も無い世界…………太陽も月も見る事の出来ないこんな場所に、自ら好んで住んで暮らすなんて理解できない。

 私は自身の周りに、ファイヤー、ウォーター、サンダー、サンド、ウィンド、アイス、ライトニング、ダーク、ホーリーの9種の球を、5つずつ作り出した。

 無詠唱の良い所は別属性魔法をタイムラグ無しに扱えるところだ。

 私は前衛を担う美鈴ちゃんを避ける様にして、魔法球を敵に飛来させる。

 

「全てレジスト出来るのならしてみせろっ!」


 出来るとは思わないけど。うちの国でだって出来るのは穂乃香ちゃんぐらいだと思う。

 他は結界術や錬金術で防ぐか、奥義級のフレアバーストなどで掻き消すしかない。

 魔法球が敵兵を塗りつぶす。魔法球と魔法球がぶつかり合って被害が嵩む中、勢いよく一人の男が飛び出してきた。

 あれが騎士団長なんだと思う。美鈴ちゃんが迷わず行く手を止めに掛かった。

 敵の騎士団長と美鈴ちゃんの実力はほぼ互角……剣の腕で言えば騎士団長の方が上かもしれないが、美鈴ちゃんは持ち前のスピードと、重力魔法を使ったアクロバティックな動きで敵を翻弄している。戦闘のセンスは美鈴ちゃんの方が上だと思う。

 

「――――はぁっ!」

「――! 行かせない――っ!」

「――貴女の相手は私だ!」


 騎士団長の後方から1人の兵士が飛んでこちらに向かっている。

 敵兵士の中にも重力魔法を使える者が居た様だ。

 美鈴ちゃんが重力魔法を使える兵士を止めようとしたが、騎士団長に妨害を受けてしまった。

 あの騎士団長を無視して、美鈴ちゃんがこちらの援護に向かう事は出来ない。

 敵兵は私の魔法球を避けながら接近してくる。ただ重力魔法が使えるだけでは無く、実力もある様だ。

 私に接近戦の心得は皆無だ。棒術の扱いは、酷ければ喧嘩が強いだけの子供にも負けるお粗末さだし、攻撃を避けるのだって転移頼りだ。重力魔法で自分を動かすのだってたかが知れている。

 動かずにいる私に向かって敵兵が剣を振り被る。

 

「死ねぇえええええ!!!!」

「………………」


 そして――――――

 

「ぐっ……!?」

 

 ――――敵兵は電撃を纏い地上へと落ちて行った。

 ……魔法球が当たらない時点で、誘導されているとは思わなかったのかな。

 魔法は、MP……魔力を使用して始点に現象を起こし、魔力で誘導戦を描き制御を行って、敵に当てるのが通常だ。

 この誘導線と制御を杜撰に行うから、無駄撃ちを増やす魔法使いが多い。

 現象を起こす際の始点は自身に近いほど作りやすく、遠いほど無駄に魔力を消費してしまう。そして一定の距離を超えると作り出す事自体不可能となる。

 さっきの敵兵は私に近づいた――近づき過ぎた。

 美鈴ちゃん程のスピードがあるなら話は別だったが、さっきの敵兵の動きは私にも捕捉出来た。

 だから私は――――敵の心臓を始点にサンダーボールを作った。

 本来外部から受ける筈の魔法を、内部から受けた敵はなすすべ無く地へと落ちた。

 これの気を付けないといけない所は、サンドボールなんかでしてしまうと、人体を内部から破裂させてしまう所だ。美鈴ちゃんにそんなスプラッターな光景を見せる訳にもいかない。

 ファイヤーでも中から炙る事になってしまうので、選択肢として選べるのはサンダーぐらいだ。受ける側の生存率が一番高くなると思う。

 仮にショックで止まっていたらそれはそれ、向こうも私を殺す気で来たんだから諦めて欲しい。

 

「美鈴ちゃ~ん! こっちは大丈夫だから気にしなくて良いよ~!」


 私の支援射撃が無くなって敵兵に押され始めていた美鈴ちゃんを助ける為に、再度魔法球を敵の上空から落とす。

 前衛の美鈴ちゃんと後衛の私、どちらかが倒れない限り――私達に敗北は訪れない。

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