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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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村の意志

 ブライトタウン王国から南に向かって、俺と日坂の2人で転移しながら移動をしていた。

 南下していく先にパープルニア軍隊兵を見つけた。

 人数は1500人。第一陣の先行部隊だな。

 

「どうする、氷河」

「こんなのに一回一回召喚してたらキリがないだろ。道中での敵ぐらい俺達で倒してないと、トップとして示しが付かねぇぞ」

「国王は本来前線に出るものじゃ無いと思うが……それもそうだな」


 今回の作戦に置いて、俺と日坂は全くと言っていいほど出番が無い。

 前線で戦って良い立場でないと言うのは分かるが……分かるが国家最大戦力だぞ?

 今回は何かあった時の予備戦力みたいな扱いだ。

 俺や日坂の出る幕が無いほど、うちの兵士達は頼もしいという事でもある。

 王宮の攻略を他に任せるんだから、道中の敵ぐらい俺らだけでも良いよな?

 

「指揮官は俺が始末する。日坂は派手なパフォーマンスで敵をビビらせろ。逃げる奴は追わなくて良いが、北上はさせるなよ」

「通行止めにしろって事だな。了解した」


 行軍中の敵の目の前に日坂を置いて、俺は指揮官の背後に転移し――そのまま首を断ち切った。

 

「……っ!」

「――!? テノール将軍っ!」


 テノールと呼ばれた男は死んだ……声はバリトンボイスみたいだけど。

 スニ―キング全開で近寄ったため、将軍が死んでもなお、俺はまだ気付かれていない。

 

「な、なんだ!?」


 地震が起きたかのように地面が揺れる。

 発生源は敵軍正面に居る日坂。地面を強く踏みつける事で地鳴りを起こした。

 敵軍が揺れに耐えかね膝を着く中、俺は暗殺術を解いて姿を現す。

 

「ブライトタウン王国、国王の月島氷河だ! パープルニア軍兵士に告ぐ。踵を返し国に帰るなら深追いはしない! だが、抵抗すると言うのなら俺と大公、日坂統也が相手だ!」


 敵は奇襲を受けて将軍が戦死、早くもほとんどが戦意喪失状態だが、一部の兵士はまだ折れてない。

 替えの指揮官がまだいるからな。

 

「怯むな! テノール将軍の仇を我々が――っ!」


 鼓舞しようとした指揮官を始末した。

 抵抗の指示は認めない。俺が許可するのは撤退の指示のみだ。

 日坂が二度目の地鳴りを起こす。二度目ともなれば自然災害では無く、人為的に起こされた事だと理解するだろう。

 まあ、1500じゃ足りねぇよ。

 

「て、撤退だぁあああ! こんなの敵う訳がねぇぇえええ!!!」


 割と偉めの奴が逃げると同時に、兵士達も1人また1人と逃げて行く。

 頑なに残る一部の度胸ある奴を始末した後、雪崩れる様に逃げて行く兵士達を追う。

 というか、追い越して敵の本陣へと向かう。

 彼らは今、一体何から逃げてるんだろうな。全力で飛ばし過ぎたらまた再会する事になるな。

 仮に追われて無い事に気付いて再編しなおしたとしても、度胸のある奴は全て始末済みだ。度胸の無い奴らに落とされるほど、うちの国の兵士は弱くない。

 脅威は去ったと見て良いだろう。

 俺と日坂はパープルニア軍隊兵と遭遇するたび蹴散らして回った。

 戦場としてしまった友好国や中立国には少し立ち寄って、すまないねと、気持ち程度のブライトタウン印の調合薬品を譲り渡した。

 道中の国々は関係無いのに国土を荒らされる訳だからな。良い気分はしないだろう。

 主にこっちの方に時間を食ってしまい、パープルニアにたどり着いたのは日が沈んだ後だった。

 

 

 

 ニンファーとリリーの故郷である辺境の廃村に攻略メンバーを召喚した。

 ふむ。賠償金は下げてもいいから、この村の土地も飛び地として貰うか。

 

「みんな、今のうちに寝て置け。全員が睡眠を取れたら夜襲を仕掛ける」


 翌朝には回さない。短期決戦で確実に終わらせる。

 何時召喚される分からなかった為、みんなずっと待機状態だった様だ。

 つまりずっと起きていた。そんな体で睡眠もとらずに夜襲はキツイ。

 一度寝かせて日付が変わる頃にでも、万全の状態で挑む。

 

「私達よりも、ご主人様と日坂君が休みなよ。私達が呼ばれるまでの間、ずっと戦闘と移動だったんでしょ?」

「国々に訪問したりもしてたが……まあ、そうだな。でも俺達この後、戦闘参加しないに等しいしな」

「それでもだよ、ちゃんと寝て」


 促されるまま、俺はフィサリスの膝枕を受ける。

 フィサリスの膝枕も良いな……柔らかいし、これもまた絶景だ。

 国民達の前で膝枕されている国王というのもどうかと思うが……まあ、今回はメンバーがメンバーだからな。別に構うまい。

 後頭部に柔らかい感触を味わいつつ、俺は眠りについた。

 

 

 

 交代制で睡眠を取り、全員の準備が整った。

 

「聞け、みんな。此度の戦は弔い合戦だ」

「……あの……氷河先輩? 私、死んでないです……」

「この地に眠る魂の弔いだよ。もちろん、お前の仇討ちでもある」


 リコリス討伐は、リノの復讐でもあり、リリーとニンファーの復讐でもある。

 人に恨まれる事はするもんじゃ無いな。俺とリコリスはそんな事ばっかしてんだよな。

 俺も奴も争いの種である事に変わりは無い。

 

「ほたる、お前がやられて腹を立てたのは、別に俺やリノに限った話じゃ無い。此処に集ったメンバーを見渡して見ろ」


 最高幹部の他に今回の作戦に参加するのは、自警団の幹部達。

 全員が『村』設立当初から居た初期メンバーだ。

 

「俺が作った炊き出し……同じ釜の飯を食った仲だ。それが殺されかけて、背中に一生残る傷を付けられたと聞いて、髪が短くなりすぎたお前を見て……腹が立たねぇ訳がねぇだろ……なぁみんな」


 これから夜襲とあって、声に出す者は居ない。だが、それぞれの目に宿る闘志が、それをはっきりと示していた。

 

「行くぞてめぇら……リコリスに、パープルニアに、目に物を見せてやろう――」

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