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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
309/346

秘境

 魔人族領の西の果てにドラゴンの住処と呼ばれる秘境があった。

 秘境とされているのはその深部まで辿り着ける者が居ないからだ。山ほど居るからな、ドラゴンが。

 そこへと向かう前日の夜、不安がる水奈とフィサリスを落ち着かせるため、両腕に抱きしめていたのだが、穂乃香の乱入によって営みに発展した。

 一人ずつでは無く三人同時に、それも穂乃香が作り上げた双頭二号が導入され、俺が穂乃香の前、穂乃香の後ろと水奈の後ろに双頭、水奈の前とフィサリスの前に双頭が入る事で四人で繋がっていた。

 代わる代わるしていると、体力的な問題で水奈とフィサリスは先に寝てしまい、俺と穂乃香の2人になった。

 

「ありがとな穂乃香」

「ん? 何が?」

「気を遣ってくれたんだろ、2人の事」

「私はしたかったから混ざっただけだよ?」


 穂乃香はそう言ったが、鑑定様は全てを知っている。

 優しき妃を俺は優しく抱き締めた。

 穂乃香は俺を心配していなかった。俺がドラゴン程度に負けるなどと微塵も思っていない様だ。穂乃香の信じる期待を、裏切る訳にはいかないな。

 

 

 

 翌朝、朝一で水奈に搾り取られ、他の2人にもされそうになったが、続きは今夜と告げて自重して貰った。一応仮にもドラゴンの巣窟に身を投げる訳だからな、体力は多く残して置いた方が良い。

 穂乃香は俺から貰えないと知ると、すぐさま水奈の口内に目標を変えた。それを察知した水奈は穂乃香に奪われる前に飲み込んでしまった。

 目の前で水奈の喉が鳴るのを確認した穂乃香は「ああっ……」と呟いた後、目標を水奈の下の口の中に残っているモノに変え……そこからは2人の世界に入ってしまった為、俺はフィサリスと共にシャワーを浴びに行った。

 そんな朝を終えて俺は1人、秘境の地へと訪れていた。

 洗礼代わりに一匹のドラゴンがブレスを放ってきたが、俺は結界術でそれを防いだ後、ブレスを放ったドラゴンの腹部に軽いパンチを放った。

 一発でドラゴンを鎮めると、周りのドラゴン達はうかつに俺に攻撃して来なくなった。

 この秘境は深部に進めば進むほど強いドラゴンが居る、手前の奴らには用が無い。

 着々と腹パンをしながら進んで行くと、中腹部にお目当ての奴が居た。

 

『此処まで辿り着ける人間とは珍しいな……小僧、何が望みで来た? 力か? 金か? 名誉か?』

「此処に来る奴ってそういうのが多いのか? どれも違うな。俺はお前の皮を少し貰いに来た」

『……は?』


 は? って言われた……いや、でも事実だし。

 

『……力試しをしたい者、宝玉を売って財を得たい者、ドラゴンスレイヤーの称号を得たい者……このどれでも無いと申すか』

「ああ、俺は皮を貰いに来ただけだ」

『……今まで山ほどの挑戦者を下してきたが、お前ほど適当な男は初めてだ』


 適当じゃないんだけどな……まあ、他はもっと大きな目標の為に挑むのだろう。

 俺みたいに皮が欲しい、なんて理由で挑みに来る奴は稀有なのかもしれない。

 

『敗北者にあるのは死のみだ、分かっていような?』

「ああ、弱肉強食だろ。理解してるぜ、掛かって来な――ホーリードラゴン」


 右腕を生やし、ミスリルの剣と刀を構える。

 

『……良かろう。己が愚かさを理解させてくれる!』






『……バカな……っ!』


 流石1000年を生きるドラゴンだな、中々強かった。

 セバスチャンでも厳しいだろうな、穂乃香なら良い勝負できそうだ。

 

「俺の勝ちだ、約束通り皮を貰おうか」

『…………何故殺さぬ……』


 なんだ? 死にたがりか?

 殺しなんかしたらリノに怒られるに決まってるだろ。レアドラゴンだぞ。

 

「殺すなんて勿体無いだろ。1000年以上を生きた竜ってのは、生きる歴史そのものであり、生きる財産だ。もちろん殺して腹の中の宝玉や牙や爪を売れば大金になるが……そんなの一時的だろ? それなら生かして爪を切らせて貰って、伸びてからまた切らせて貰った方が金にはなるんじゃないか?」

『小僧……! 儂を家畜にしようと言うのか……っ!』


 火竜の爪集めはそんな感じだ。殺しても一匹当たりに取れる量なんてたかが知れているので、爪だけ切らせて貰って伸びた頃にまた会いに行っている。

 向こうも殺されたくないから大人しく爪を切られている。爪砥ぎせずに済むんだから、向こうにも利はあると思うけど。

 

「もし金稼ぎがしたいならの話だ。俺はお前で金稼ぎしようとは思ってない。ただ負けは負けだ、皮をちょっと寄越せ」

『…………はぁ……敗北者は儂だ……好きにすると良い』


 満身創痍で動けないホーリードラゴンは諦める様にそう言った。

 俺の辛勝ならまた違ったのかもしれないが、圧勝だったからな。

 何度やっても俺が勝てる……戦う気にはならないだろう。

 言質は取ったので遠慮なく皮を剥ぎに掛かる。

 

「――ジジイがあっさり負けるとはな……随分と強そうな奴が現れたじゃねぇか……」


 うわっ……面倒なのが現れた。

 こちらを見下ろす男を鑑定で見て思う。

 

『……グライブか……』

「敵に負けた挙句、生かされるなんて情けねぇなジジイ」


 グライブと呼ばれた男を鑑定で見ると種族はドラゴニュートとあった。

 ドラゴニュートは一族の長、王を純粋な戦闘力だけで決めるらしく、この男の肩書に王とあった。

 つまりそういう事だ、めんどくせぇ。

 

「おい、そこの人間。俺様と戦え」

「断る。お前に用は無い」


 俺はホーリードラゴンの皮が欲しくて来たんだよ。

 お前はお呼びじゃ無い。

 

「お前に無くても俺様には用がある! 戦えっ!」


 襲い掛かってこようとする男の前に10体のゴーレム分身を出現させる。

 

「『グラビディ』」


 本日の無言の兵隊達は重力魔法を使った立体起動型だ。

 そいつらとでも遊んでろ駄竜。

 

「さて……こんぐらい貰えれば十分か」

『……小僧……儂との戦いでは手を抜いていたのか……』

「あんたとは一体一で戦おうと思っただけだ。10対1なんて無粋もいいとこだろ?」


 ゴーレム相手に善戦をしている男を眺めながら答えた。

 この男の戦闘力は俺や日坂と同格……即ちチート級だ。

 戦闘力が軒並み高いドラゴニュートの中でも、こいつは抜きん出て強い。

 まともにぶつかれば俺も無傷じゃ済まない。フィサリス達に必ず帰ると言った手前、こんな奴の相手なんぞしてられん。

 

『そんな少量の皮を持ってどうする。国に帰ったとして、権力者に取り上げられるだけだろう』

「それは大丈夫だ。俺が国王だからな」

『…………………国王が何故こんな所に1人で来ておる』

「俺より強い奴が国に1人しか居ないからだよ。まあ、そいつもステータスが高いだけの未熟者だがな」

『小僧よりも強い者が居るのか…………人間の成長も侮れんな』

「俺が此処に来ることはもう無いだろうが……そう遠くない未来……お前の皮で作った武器を持った、俺の娘が……お前をティムしようとここを訪れて来るだろう」

『ティムだと……? 儂は小僧への敗北は認めたが、弱き者に下る気は無いぞ』

「俺の娘は強いぞ? 後10年もすればお前に追いつく。1000年以上生きるお前にとっては10年も20年も大差ないだろ。必ずお前の前に現れる……楽しみにしてろ」


 そう告げて俺は秘境の入口のある方へと向く。

 

「じゃあな太古の聖竜。また会おう」

『ふん……娘の勝利を確信しておるのか……儂が喰らうかもしれんぞ』

「成長期の止まったあんたじゃ無理だと思うな」

『………………所であれはどうするのだ』


 聖竜が今もゴーレム達に足止めをくらっている男を見ながら問う。

 

「勿体無いが、制御範囲外になったらゴーレムは破棄する。戦闘狂の相手なんざ御免だ」


 10個の魔結晶を棄ててしまう事になるが、この際仕方ない。

 予備の魔結晶は大量に作っているし何とかなる。

 

「待てっ! 俺様と戦えぇえええ!!!」


 後ろで騒がしい声が聞こえた様な気がしたが全て無視し、俺は繰り返し転移を行ってブライトタウンまで帰った。

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