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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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復讐兵

 城へと戻り、幹部に招集を掛けた。

 集めたのは日坂、フィサリス、グラジオラス、イクシオンの四人。

 ラミウムはブルーゼムに帰省中で、ロータスもそれに付き添っている為、このメンバーとなった。

 

「……つい先ほど、この国を迂回して魔人族領へと向かうリコリスを目撃した」

「何っ!?」


 男共が驚いている中、フィサリスは目を見開いた後、睨むように俺を見た。

 

「リコリスを見つけたご主人様は、それをただ見送ったの?」

「まさか。一発殴って来た」

「…………やっぱり」


 フィサリスがへそを曲げてしまった。

 国外に出る際にフィサリスを呼ばなかった事と、リコリスへの攻撃に参加させて貰えなかった事について拗ねてるな。

 後でじっくり話すか。

 

「殴って来たってお前……」

「――それでボス。リコリスの野郎は何だって魔人族領に向かったんだ?」

 

 グラジオラスが真剣な眼差しで俺に問う。

 要注意危険人物が魔人族領で悪だくみしようとしてる訳だからな。

 

「人間族領の戦力だけでは足りないと判断したリコリスは、魔人族領を動かす事で二方向からこの国を挟み撃ちにするつもりだ」

「魔人族領と言っても我が国への評価は賛否両論で、すぐさま戦争を起こそうと言う国は無いのではありませんか?」

「国としては無いだろう。だが俺に対し確実な復讐心を持っている奴らが居る……魔王配下の親族、関係者だ」


 俺が殺した魔王配下は約1万人。1人に両親や配偶者、子供もいたりとすると関係者数は2万人から3万人……もっと居るかもしれない。

 その中には当然俺を恨んでる奴が多いだろうが、だからと言ってどうする事も出来ないのがほとんどだ。

 ただでさえ武闘派の魔王配下が居なくなった事で、戦力は下がっているのに、300の兵で3万の兵を打ち破る国家相手に喧嘩など売りようが無かった。

 だがそんな事実があったとしても燻る火の粉は消えず、復讐の為に戦力を蓄えている者は居る。そこにリコリスは油を注ぐつもりの様だ。

 

「リコリスがやろうとしている事は分かったが、そんなに上手く行くか? パープルニアにとって魔族は敵で、魔王軍関係者にとって人間は敵だろう?」

「パープルニアはリコリスの傀儡状態だからな。魔族側の奇襲タイミングさえ分かれば、それに合わせてパープルニアから兵を上げさせる事が出来る」


 これまでにも北と南で、攻撃を受けるタイミングが被る事は稀にあったが、今回は狙って被せられるからな……戦力は割かざる負えない。

 

「魔法配下の関係者に人間族の兵を当てるのは、向こうの敵意を煽るだけでしかない。その為そちらの対処は魔族の兵だけで行う……グラジオラス、イクシオン、部下たちの強化を急げ」


 敵の怨み対象は俺だが、俺が対処する訳では無い。

 と言うのも寄せ集めの復讐兵とパープルニア国軍とでは規模が違い過ぎるからだ。

 寄せ集めといえど無視は出来ない戦力ではある。しかし俺が出向くべきはパープルニアの方だ。

 言い方を悪くするなら、復讐兵達の復讐劇に付き合っている暇が無い。

 復讐兵達が俺と戦いたいと言うならば、うちの兵達を倒して行かなければならない。

 グラジオラスやイクシオンを突破できると言うならば、俺自ら戦う事になるだろう。もしそんな事があれば、その時の俺は殺戮のバーサーカーになっているだろうけどな。

 

「…………なあ、ボス。その件、俺に預けてくれないか?」


 再びグラジオラスが真剣な目で俺を見る。

 魔王配下関係者に関してこいつは思う事があるらしい。

 預けてくれと言うなら預けて見ようか。この忠臣に俺は不安を感じない。

 

「良いだろう。お前をいずれ来たる北の戦闘の総大将に任命する。魔族の騎士団員、自警団員も全て預ける、好きに使え。イクシオン、副将としてサポートしてやれ」

「はっ」

「アイリスには声を掛けて置け。智略、戦闘、救護と、どの分野においてもあいつは優秀だ。アマリリスは…………使いこなせるなら使っていいぞ」

「……いや、アマリリス嬢は俺の手に余る。使いこなせる気がしねぇ……」

「だろうな。あいつは戦力に数えるな。碌な事しねぇからな」


 今回アイリスの参加は避けれない……総合能力値が高いからな。

 ホワイトールの副団長に勝てる程の戦闘力、錬金術を用いた水奈に次ぐ防衛力、ヒーラーも担い、アマリリスには及ばぬが知恵も回る。

 特に知恵の部分が重要だ。今回の主力はグラジオラス、イクシオン、アイリス、エリス、ケレスの五人になるだろう。グラジオラスやイクシオンも知恵が回らないとは言わないが、基本は脳筋だ。細かい戦術を立てて戦うタイプじゃない。

 エリスはそこそこいい線行っているが、経験の少なさ故か咄嗟の判断力にやや欠ける。

 参謀はアイリスに任せるのが一番だな。

 アマリリスは俺の指揮下以外で動かすには危険な駒だ。餌を与えないと動かない……どころか悪い展開にしかねないからなあいつは。

 

 

 

 

 

 この先の方針を決めて会議は終了となった。

 リリーに手伝いに来て貰っていて、仕事はまだ山積みな訳だが、俺は執務室ではなく自室に居た。

 拗ねてしまったフィサリスとお話する為である。

 

「…………ご主人様はどうして私すら連れず1人で国外に出るの、それも敵の所に……」


 唇を尖らせてベッドに座るフィサリスの後ろに回り、腹部に腕を回して俺も座る。


「悪かった……リコリスを見つけた瞬間俺も頭に血が上ってしまったんだ」


 嘘では無い。リリーをビビらせる程の殺気まで出してしまった。

 でもフィサリスを連れて行かなかった理由は別にある。

 

「……私も…………私だって燃やし……殴りたかった」


 うん。君の場合殴るじゃ無くて燃やし尽くすでしょう?

 リノの消化不良を防ぐためにも、リコリスにはリノに倒されて貰わないと困るんだよ。

 あいつにはきちんと贄になって貰わないと。

 

『氷河も殴る時死ねって言ってたけどね。逃げられた時も舌打ちしてたし』


 いや、死なない程度に加減はしたよ? うん。

 むしろきちんとセーブが出来た自分を褒めてやりたいぐらいだよ。

 

「………………ご主人様、約束。国外に出る時は、どんな些細な事でも私を連れて行く事」

「…………悪い。少なくとも後一回は俺一人で行く事になる」

「――! なんで!? ――――」


 勢いよくこちらに振り向いたフィサリスの唇に唇を重ねる。

 しばらくして唇を離し、口を開く。

 

「――近々ドラゴンの住処に向かう事になる」

「……また調合の素材集め?」

「ああ、まあそんな所だ。お前を連れて行くには危ない所だからな」

「……私レベルでも危険な所に、ご主人様が1人で向かう事自体、問題があると思うんだけど……」


 日坂なら連れて行っても問題ないが、リコリスが何仕掛けて来るか分からない中、俺と日坂の2人同時不在はあまりよろしくない。

 未だ拗ねているフィサリスの膝下に腕を回し、お姫様抱っこの状態で俺の膝上に乗せる。

 

「大丈夫だ。戦争間近のこんな状態の中、無茶はして来ねぇよ」

「……こんな状態じゃ無くても無茶は駄目だよ、ご主人様…………次は片足が無くなってるなんて嫌だからね……」


 そう言ってフィサリスは俺に抱き着いた。

 左目も右腕も、俺自身は気にしてないんだが、フィサリスと水奈はずっと気にしたままだ。

 全く……仕方ない奴だ。

 フィサリスの頭を撫でてそのままイチャイチャタイム入ろうとした――――が、助けを求めるリリーの声が聞こえた様な気がしたので、仕方なく執務室に向かう事にした。

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