マーキング
本日のリノ甘やかしタイムだ。
イクシオンとの一騎打ちは接戦だったが惜しくも負けた。
リノは軽業を使った回避を多用し、MPのペース配分も悪くなかったのだが、純粋に実力が足りなかった。
元々10使えた内の7しか出せていないイクシオンと、10では足りないため11、12を出そうと奮闘しているリノでは元の馬力が違う。
接戦を繰り広げた結果、イクシオンがかつての感覚を取り戻し、7だったのが8になった。
筋肉量の問題で今はまだ8割が限界だが、イクシオンの中に眠っていた武人の血は目覚めた様だ。
グラジオラスとのリハビリでは、グラジオラスが弱体中のイクシオンに合わせる為、グラジオラスがどんなにやる気を見せていても本気では無い。
それに対し今回のリノは本気も本気だ。イクシオンは全身全霊で戦いを挑むリノにあてられて血が騒いだのだろう。
結果としては俺の思惑通り、リノ、イクシオン共に戦闘力強化へと繋がった。
ただ連戦で負け続けているリノへのフォローは必須だ。元々勝てる勝負では無いのだが、本人は凄く悔しがってるからな。その悔しさは必ずお前の力になる。
本日の希望内容は『パパと一緒にお風呂に入りたい』であった。
……マジか。
リノは元の世界で言うと小学6年生……ギリギリセーフか……?
この先俺と一緒に風呂に入る事など無くなって行くだろう、リノも成人へと一歩一歩近づいてる訳だからな。
今のうちが最後と考えたら悪くは無いのかもしれない。少し寂しさを感じるな。
戦闘で激しく動いたリノの汗を流すため、訓練終了後すぐにリノと風呂へと向かった。
風呂は城内にある王族専用風呂。造りはかなり拘っている、俺監修の下作ったからな。
リノのご希望により俺がリノの体や髪を洗う事になった。国王に洗って貰えるのなんてお前ぐらいだぞ。結衣香や煌輝達は専属の使用人がしてくれているからな。
リノの真っ白な髪を丁寧に洗い、身体へと移行する。
リノの胸部にはほたる並ではあるが膨らみがある。節々に女性らしさが出てき始めている……大人になったんだなぁ……
まあ、穂乃香が同じ年だっだ頃は既に大きかった為、リノはあまり大きくならないかもしれない。大丈夫だリノ、小さいは小さいで良さがある。それに成長可能性も無いわけじゃ無い。今後はまずブラを付ける所からだな。
リノの体を全身くまなく泡だらけにして流し終えた。後は自分を洗うだけなのだが、リノが背中を流したいと言ってくれたので、お願いする事にした。
娘に背中を流される日が来るとは……感慨深いな……
「パパ、背中終わった」
「ありがとな」
「次、前」
「え。いや、前は自分で洗うぞ?」
「次、前」
…………胸板は百歩譲ろう、股間は駄目だと思うんだ。
年頃の女の子が親子とは言え、それに触れるのは不味いって。
リノも11才だ、異性の身体の違いに興味を持ち始めるのも分からなくない。
でもそれをパパに向けるのは良くないと思う。いや、じゃあ他の誰かに見せて貰うのかと言われると、それはそれで問題な訳なんだが……
性の知識ってどのタイミングで教えるべきなんだろうか……成人するまでには教えるべきなんだろうが、真っ白なまま知らずにいて欲しいと思ってしまう。
「……そういうのは将来結婚する相手にしなさい」
「パパと結婚するから問題ない」
「何時になったら終わるんだそれ……」
「……? 近親婚も愛さえあれば大丈夫。パパが言ってた」
………………言ったな、言ったわ。え、言質取られてね?
まてまてまて、考えろ俺。お前の並列思考は何の為にある!
「リノ、同世代に気になる異性とか居ないのか? 今日戦ったケレスとかどうだ?」
「パパ以外興味無い」
バッサリ切ったな、ケレスのみならず、密かに思いを寄せている孤児院の男子達も含めてバッサリ切ったな。
俺以外に興味無いか……そうか……どうしたものか。
ファザコンの極まり方がヤバいな、俺もシスコン極めている為否定は出来ない。
成人するまでにリノに王子様が現れるか……? 可能性はゼロじゃ無い、恋は唐突に始まる事だってあるのだから。
「……パパ、リノ嫌い……?」
「嫌いな訳あるか」
「ん。じゃあ問題ない」
ヤバい、言質ばかり重なって行くぞ。
巻き返しが必要だ……一手、何か一手必要だ……!
「俺の妻になるには穂乃香の許可が必要だぞ」
「穂乃香に許可貰えれば良いんだよね?」
追い込まれただと!?
穂乃香の許可は早々下りない筈……フィサリスの時は俺からもお願いして、どうにかだったのだから。
いやでもリノがマジで許可を取りに動くかもしれない……
どうしたら良いんでしょうフィア先生っ!
『氷河。自分の言葉には責任を持ちなさい』
…………正論過ぎてなんも言えねぇ。
「……後は自分で洗うから、リノは先に湯船に入ってなさい」
「ぶー……」
保留。
今の俺にはそれしか選択肢が無かった。
王子現れねぇかな……強くなくていい、経済力が無くてもいいから、リノを幸せにしてくれる奴……笑顔を守り続けるそんな奴。
リノが俺の妻になりたい事に関して一度フィサリスと話し合うか。母親としての意見を聞こう。
何が不味いってリノは養子だから血が繋がってない、水奈よりセーフなんだよ。
自身の身体を洗い終えて、湯船へと向かう。
胡座をかいて座ると、昔の様にリノは俺の膝の上にすっぽりと座った。
前はリノの頭の上に顎を乗せれたんだがな……今は乗せるには少し厳しい高さまで大きくなった。
リノの腹部に手を回して抱き締める。リノの肩の上に顔を近づける。
「リノ。俺はお前が好きだ、愛している……だがそれは異性としてでは無く娘として、家族としてだ。お前に女性の魅力が無いわけじゃ無い、ただどうしても俺からは娘として見てしまうんだ。結婚は互いの同意の上……俺がお前に惚れてないと成立しない」
「じゃあパパを惚れさせる。穂乃香に認めさせる。パパに異性として愛して貰う」
「……そんなに俺との血の繋がりが欲しいか?」
俺と水奈は直結、穂乃香は結衣香を、フィサリスは煌輝を挟んで繋がっているが、養子のリノに血の繋がりは無い。
リノがそれを気にしている事は理解している。
「誰が何と言おうとお前は俺の娘だ。ぶっちゃけると実子の結衣香や煌輝より溺愛してると思う。お前が俺に嫌われたくない様に、俺もお前に嫌われたくないんだ」
養子と里親、その関係は亀裂が入れば他人と成れる。
『俺の娘では無い! 出て行け!』と言われたらリノにはどうする術も無く、『父親じゃ無いくせに父親面しないで!』と言われたら俺にはどうしようもない。
血の繋がりを本物とするなら偽物かもしれない。
偽物だからこそ、片方でも手を伸ばすのを止めたら容易く壊れる関係だからこそ、壊さないために俺もリノも必死に手を伸ばすのだろう。
「リノはパパが欲しい。パパの子供が欲しい、パパじゃないと嫌」
「……そこまで言われると、俺が貰わないといけなく思えて来るな」
「ん。貰って」
リノがこちらへと向きなおり、足を俺の腰に絡め、腕を首に回し、正面から体を擦り付ける。
……マーキングか? 小さくでも御山があるんだから擦り付けるの止めなさい。
「かぷっ」
「おい、首筋に噛み付くな」
エリーザかお前は。娘のキスマークは色々と不味いだろ。




