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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
297/346

吸血

 フィサリス、ピアニー、エリーザの3人を連れてブライトタウンへと帰国した。

 

「……こっちにも来ていたか……大使では無く、工作員の様だが」

「「――!」」

『工作員……? レッドリアのでしょうか?』

「エリーザは情報が2年前で止まってるんだったな。今のレッドリアにそれほどの力は残ってない。ブライトタウンと現在敵対しているのはパープルニアだ」


 日坂とグラジオラスの強化警備を、すり抜けて来たのなら優秀だろう。

 だが今は俺のパープルニアへ対する面持ちが違う。ピアニーの様に透視の目を持っている訳でもないし、臣下への検討は無しだな。処分するとしよう。

 

「俺は今、血が足りてないからな……アマリリスに働かせるか」


 『結果を出せなきゃ慈悲の余地は無いと思え』

 『事態は君が思っているよりずっと深刻だ』

 『パープルニアに消えて欲しくない臣下が居ないなら、俺は迷わず消している』


「――――……お待ち下さい。その役目、私に任せて頂けませんでしょうか」

「……良いのか? 相手はお前の同郷……元同僚だぞ? お前は俺の指示通り敵兵2体を殺している。結果は出したと判断するが……」

「お願いします……」


 まあ、現状アーメルト子爵家とそこに関係する者達の、命は保証するぐらいにしか考えていなかったからな。ピアニーが頑張ると言うなら、グラムス公爵派閥の者達にも極力手を出さない様に検討してやろう。国王は無理だろうけどな。

 

「良いだろう。工作員討伐をピアニー、お前に命ずる。俺に忠誠心を示せ」

「かしこまりました」

「フィサリス。日坂に俺が帰ったと伝えて、警備を通常に戻せ。厳重警備が長引くのは国民に不安を与える、早く解いてやりたい」

「了解」

「エリーザは俺と城に入る。日の光を浴びるのは不可能ではないが、厳しいだろ?」

『はい……力が思うように入りません』


 エリーザには以前俺のゴーレム分身に着せていた、余り布のローブを被せているが、ほんの気休め程度にしかなっていない。

 俺も血が足りて無くて気怠い。早く帰ろう。

 

 

 

 

 

 城へと戻り、執務室に水奈とラミウム、リノの3人を呼び出し、リノにはリリーを呼び出させた。1日経ったし落ち着いただろう。

 因みに戻って来たフィサリスが告げ口した為、心眼で指を切った上吸わせた事を怒られた。エリーザの加減次第では吸血鬼になってた可能性や、死んでいた可能性もあったからな。でもほら、その辺は鑑定でちゃんと分かってるから。

 

(もう少しご自身の体を丁寧に扱って下さい! 氷河様は国王なのですよ!)


 ……はい。

 放って置けば治る程度の傷だったが、水奈に治療された。うちの医師は頑固だから。

 

「リリー、少しは落ち着いた様だな」

『はい……昨日はとんだご無礼をしまして、申し訳ありませんでした』


 落ち着いてもなお、この腰の低さ……まあ、国王相手となれば萎縮するか。

 

「エリーザ。そいつがリリー、元魔族の現レイスだ。リリー。そいつはエリーザ、元人間の現吸血鬼だ」

『「「吸血鬼!?」」』


 リリーだけでは無く、水奈とリノも反応した。

 リノは興味津々だな、この幻獣マニアめ。

 リノはスパルタ指導期間になったら、幻獣捜索に割く時間は無くなる。今のうちに増やしておくのは有りだな。

 

「エリーザ。悪いがリノの召喚獣として契約をしててくれないか? お前が人を襲うとは思っちゃいないが、国民の全てがそうとは限らない。うちの幻獣たちは『リノの召喚獣』というレッテルが付いてるからこそ、安心して受け入れられてるんだ。そこだけは頼む」

『それは仕方の無い事でしょう……むしろ契約を結ぶだけで、普通に暮らさせて頂けるのです……贅沢は言いません』


 エリーザがリノの召喚獣として契約を結ぶ……増えるな召喚獣……

 

「リリー、そしてエリーザ。お前たちはリノの召喚獣とはなったが、生活をするのはこの城となる。お前たちは日の光が苦手なアンデッドだからな」


 召喚獣のほとんどは幻獣栖公園にいる。

 けど獣人系は割と自由で、ラミは俺が作った地下坑道からグラジオラスの屋敷に出入りしているし、マリンは孤児院に参拝している。ユリはそもそも孤児院の守護兵だし、ハピィは国内を自由に飛び回っている。でも一応ユリ以外は幻獣栖公園が住処ではある。

 

「また、お前達2人は他の召喚獣達と扱いが異なる。獣人たちは人間と同等の知恵を持ち、人間社会の仕組みも理解はしてるが、それに倣うつもりは無い。弱肉強食、それがあいつらの在り方だ。育ちが獣であったあいつらと違い、お前たちは元は人の身。人間社会の常識で動いている。故にお前たちは人間社会に当てはめた、立場を与える」


 この国に他国の貴族が来たとして、ラミ達はその人がどのくらいの立場で偉い人と言う事は理解するが、その相手が強くなければ遜りはしない。リノの言う事を聞くのは、メルの様にリノを気に入っているからか、ラミの様に俺が怖いからだ。

 まあ、最近は召喚獣達にリノの実力も認められて来てはいる。今後のスパルタ指導次第では、俺が居なくてもリノに従うようになるかもしれない。

 ラミ達は権力があっても強くない者には従わないのに対し、この2人は権力に従う。

 辺境の田舎娘と帝国の皇女では全く立場が違うが、どちらも礼節は備わっている。

 俺も礼儀は好きじゃない……まあ、友好国首相達と話す時はちゃんとしてるよ。

 1度俺と敵対した所には敬語を外している。ブルーゼム、レッドリア、ホワイトールにはタメ口だ。公の場の時は真面目にする。

 パープルニアはどうだろうな。

 

「リリー、お前をラミウムの副官に命ずる。内政の補佐をせよ」

『わ、私がですか!?』


 リリーは落ち着かないとポンコツだが、落ち着けばそこそこ有能だ。

 ラミウムの仕事は内政、外交、人材採用と多岐に渡る。ラミウムの心眼とリリーの鑑定は相性が良い。リリーの魔法適正は氷と重力。鍛えれば戦闘も可能だし、書類整頓に重力魔法は有効だ。

 話した通り、村が滅びた事への罪悪感は未だに残ってる。そこだけ刺激しない様に気を付けてくれ。

 

(かしこまりました)


「エリーザ、お前を水奈の護衛に任命する。俺の妹だ……妊婦であるにもかかわらず、無茶しがちな傾向にある。お前が止めてくれ」

「ちょっと!? お兄ちゃん!?」

『かしこまりました』


 水奈は中距離戦は強いが近距離戦は盾で守るしかない。

 吸血鬼であるエリーザは怪力で接近戦も可能だ。適正魔法の火と水……特に水は水奈の戦術の助けとなるだろう。

 元皇女であったエリーザは皇女たる嗜みを備えている。王女である水奈の良い教育係ともなるだろう。

 

「血を吸いたくなったら俺の所に来い。間違っても水奈が治療する患者から吸うなよ?」

『そんな事は致しません! 私とて、緊急時でもない限り吸う相手は選びたいです……』


 俺の血が気に行ったなら、同じ親から生まれた水奈の血は似た配合だとは思う。

 水奈なら吸われた後の傷をすぐ治せる……けど。

 

「水奈の血を吸わせるのは癪だな。俺の血で我慢しろ」

『いえ、私としましては国王様の血を頂けるのが、一番嬉しいのですが』

「……私としてはご主人様の血を吸わせる方が、納得いかなんだけど……私が提供しようか?」

「私の護衛になるなら、傍に居る事が増える私で大丈夫だよ? すぐに治せるし」


 自分の血を吸えと言い合う謎の状況にエリーザも困惑している。

 

『あの……普段は生肉や赤ワインを頂ければ大丈夫なので……時折お願い致します』

「エリーザ、吸ってみない?」


 好奇心旺盛のリノ、吸血鬼に吸われてみたい……そんな事思うのはお前ぐらいだ。

 

『いえ、先ほど国王様に血を頂いたばかりでして……しばらくは吸わなくても』

「……残念。吸いたくなったらリノの血吸って」

『え、あ、はあ。かしこまりました』


 リノが言質をとった。今後吸血したい時はリノから貰われる事になるだろう。

 ただ、それでリノへのスパルタ指導に影響が出るのは困る。その時は半分は俺で我慢して貰う。

 水奈の護衛は決まったが……穂乃香の護衛どうするか……

 護衛より穂乃香の方が普通に強いんだよな……戦闘力的に勤まるとすればセバスチャンぐらいだ。

 穂乃香は侍女も連れてない……その辺の事も全部自分でやった方が上手いから……ニンファーを付けるしかないか?

 穂乃香の護衛、侍女に求められるレベルが高過ぎる……使用人のトップ2が合格ラインギリギリだぞ。

 下手に護衛を付けても弾除けどころか足手纏いにしかならないので……現状無しのままか。有事の際は本当にセバスチャンとニンファーを付けるしかないな。

 幸い穂乃香とニンファーの仲は悪くない。穂乃香も俺の信者気質だから。

 結衣香と煌輝の護衛はどうしようか……侍女同様本人に選ばせるか、こちらで用意するか。魔法師団にさせるのも有りだな。現状が実力のあるお飾り部隊だからな、活躍の場が戦場にしかないのは勿体無い。

 護衛って俺が居ない時の代わりだから、いつもして貰う訳じゃ無い。問題は無いだろう。

 

「さてリリー……ニンファーと話す覚悟は出来たか?」

『――! ………………はい……』

「……よろしい。積もる話もあるだろう……応接室を使わせてやるから、俺のゴーレムに付いて行き、そちらに向かえ」

『……ありがとう、ございます……』


 硬いな……これで少しは罪悪感から解放されると良いんだが。

 俺のゴーレム分身先導の下、応接室へと向かわせた。ゴーレムとレイスが移動する光景……使用人もビックリだろう。慣れて貰わないと困るがな。

 

「エリーザ。同じアンデッドとして仲良くなるだろうから、リリーの過去について話しておこうと思う……後々に地雷を踏み抜かれても困るからな――」






『――レッドリアはそんな事を……』

「お前も今日初めて血を飲んで、吸血鬼だと認めたばかりの時に申し訳ないが……リリーに優しくしてやってくれ」

『私は……大丈夫です。リリーさんの背負う物に比べたら、私は……私が吸血鬼になったと言うだけの話でしかないのですから……』

「……よろしく頼む。リノ、エリーザに城を案内してやってくれ。これから住む訳だから使用人達にも教える必要がある。お前の召喚獣である事を説明すれば大丈夫だ」

「はい。エリーザ、来て」


 リノとエリーザが部屋から出て行った。

 

「水奈。エリーザはホワイトールの皇帝の孫……元皇女だ」

「お姫様なの!?」

「それはお前もだ……成人してすぐに吸血鬼に襲われて、眷属にされた。本人は自身が吸血鬼である事を良く思っておらず、いまだ受け止められていない。吸血を最低限にしたがるのもそのためだ……種族こそ吸血鬼ではあるが、普通に人として接してやれ」

「……うん」

「お前が心霊系が苦手なのは理解しているが……リリーもエリーザも怖がらないでやって欲しい」

「確かに話を聞いた時は少し怖かったけど……リリーちゃんもエリーザちゃんも、良い子だし可愛いし、大丈夫だよ!」


 水奈が大丈夫ならば問題ない……一番の怖がりはコイツだからな。

 

「――とりあえず飯だな。俺の血が足りてない」

「あ、真由美ちゃんにお願いしてくるね」

「急ぐなよ、自分が妊婦であることを忘れるな」

「はーい!」


 水奈は返事をしながら厨房へと向かって行った。

 全く……昨日の疲れが嘘の様だな。

 

「えらく気に掛けていらっしゃいますね」

「そうだな……村の全員を失ったリリー、地下部屋に2年間居たエリーザ。境遇は違うはずなのに、どうしてもリノの事が頭に過るんだ」


 見捨てれば……それはリノを裏切った事になる様な気がした……

 結局は自分の為だな。リノに嫌われるのを嫌がった、相当な親バカだな。

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