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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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勲章

 MPポーションを飲むのがキツくなり、頭から被ってでも治療を続けていた水奈を流石に休ませた。

 傷を少しでも残させたくない気持ちは分かる……でもそれで水奈が倒れてしまっては意味が無い。疲労が濃く出ている水奈を穂乃香に引き渡し、トイレと風呂に連れて行く様にお願いした。

 ほたるの状態を確認する。

 鼓膜、眼球、肺と子宮は指示通り完治している。後は水奈の判断だが、顔と首、手や足先など露出する部分を優先的に治してあり、局部や胸部、腹部などの女性的に傷が有ると嬉しくない所も治っている。頭皮と毛根も再生されているが、髪はベリーショートと呼ぶにも短い……まあ、毛根が生きていれば、そのうち伸びる。

 しかし……毛根の再生は時間が掛かるのか、最低限だな……髪と睫毛、耳内、鼻内、眉ぐらいだ。

 脇などのムダ毛処理をする必要が無くなったとも言える……ほたるの秘部が洋風使用になったとも言える。

 腕や脚にあるのはあまり目立たないが……背中は大きく残ったな……

 背中の損傷が一番酷かった……リノの方向を向いていた為直撃だったからな。

 水奈はこの傷を少しでも小さくしようと他の毛根は捨てたんだ。判断は間違ってない。

 

「……ベットの匂いを堪能してるとは……随分と元気そうだな」

「ふぇっ! ……えへ、えへへへ…………」


 呆れたもんだ……全身火傷で体力を吸われて、動く元気はまだ無いくせに、ここぞとばかりに堪能してやがる。

 まあ、俺もそれは想定した上で俺のベットを使わせたんだけどな。

 

「お前や水奈が俺の匂いを嗅ぎたがるのは、今に始まった事じゃない……今日は目を瞑ってやる」

「公認!」

「最初で最後だな」

「そんな~……」


 お前が重傷を負う事なんて最後で良い……

 こんな事が何回もあってたまるか。

 

「……水奈ちゃんには何度か十分だと伝えたんですがね……氷河先輩が来るまで結局一度も治療を止めませんでした」

「水奈は回復が自分の存在意義だと思ってる所があるからな……医者としてのあいつはかなりの頑固者だ。時間が経ったら治せない……俺の左目と右腕を治せなかった事が、相当悔しかったらしい」


 『――いま治さなきゃ治らない! いま治さないとっ!!!』

 ほたるの治療を止めようとしない水奈を、俺と穂乃香の2人でどうにか止めたんだ。

 俺と穂乃香の2人でようやく止まるって……やはり水奈にも月島家の血は流れていた。

 覇気、怒気、殺気。月島家の3大気。まあ、王族家と考えると悪くは無いだろう。

 

「……体動かせなくて、確認が出来ないんですけど……外傷はどんな感じですか?」

「腕と脚に所々、背中には大きく残った……それ以外は髪が短くなったぐらいでほぼ完治だ」

「……流石水奈ちゃんですね」

「後、首から下の毛は全て消えた」

「首から下……――!」


 おい、布団の中とはいえ、俺の前で股に手を伸ばすな。

 

「――――――」

「水奈は背中の傷を治すのに必死だったんだ、分かってやれ」

「……いえ、あんな無理までして治して貰ったのです……感謝こそすれど、文句などありません……ところで氷河先輩、いえ、国王陛下」

「……なんだ」

「国王陛下的に……――無毛って需要有りますか?」

「何故俺に聞く」

「――パイパンって需要有りますか?」

「言い直すな………………はぁ……この世界でも国ごとで違うらしいが、ブルーゼムは無し派だ。俺はフィサリスを妻としている……無しも有りだ」

「……良かった……じゃあ、良いです」


 なぜ俺の需要で判断する……将来的な配偶者で判断しろ。

 ……まあ、有る物を無くす事は出来るが、無い物を増やす事は出来ない……無し派を捕まえるんだぞ。

 

「あと、最高幹部以外の奴がその場に居ないなら、無理に国王と呼ぶ必要は無い」

「……氷河先輩もそうやって私を甘やかすんですか? だから間違えるんですよ? 私不器用なんですから」

「お前に陛下って呼ばれるの、むず痒いんだよ」


 実際、他の最高幹部も国王陛下って呼ばないしな。

 ラミウムは周りの目が無くとも律儀に国王と呼ぶが、心眼の会話では氷河様呼びに戻る。

 律儀に直すのはほたるだけだ。

 

「さて、リノがお前の心配をしている……今日は此処でリノと寝ろ」

「え……氷河先輩は……?」

「俺は寝れそうなら結衣香と寝る。無理そうなら、執務室で仮眠を取る」

「……執務室って寝れる場所無いですよね……?」

「椅子があれば寝れるだろ」

「駄目ですよ、ちゃんと寝ないと……」

「するべき事が多いんだ、多少睡眠が減るのは仕方ない」


 魔王軍討伐の半年間は毎日が睡眠3時間だった。

 最近は多く取れる日もあるし、寝ない日もある極端で安定しない生活だ。

 日によって仕事量が違うから仕方ないな。重なる時はとことん重なる。

 今日は朝教会の、昼引っ越しで、夕方から夜にかけてようやく書類整理に取りかかれたが、明日は朝から出かける事になった……明日の事も考えると今日の内に今日のノルマはクリアしておきたい。

 

「…………私と話してた時間を、仕事にまわすべきだったのでは――」

「――アホか。頑張った臣下を労わぬ王がどこに居る……お前への見舞いも、俺のするべき事の一つだ。睡眠より優先するに決まってるだろ」

「…………王が貴方でよかった…………ふふふ、幸せです……背中の傷は気にしないで下さい……これはリノちゃんを守ったと言う、私の勲章なんです」

「……そうか」


 ほたるの頭を撫でる。

 リノを呼び出して、今日は俺のベットでほたると寝て良いと伝える。

 俺はリノと入れ替わる様に執務室へと向かった。

 

 

 

 穂乃香と共に風呂を終えた水奈は、そのまま自室で穂乃香と一緒に眠った。

 眠る直前の水奈と穂乃香の頭を撫でて来た。水奈はほたるの治療を、穂乃香は疲れた水奈のサポートをしてくれたからな。

 俺は執務室にて書類のサインと、手紙の返事を書いている。内容は透視と鑑定、並列思考で全て記憶している。読むのより書くのが面倒なんだ。

 フィサリスが書いた手紙とサインした書類の整理をしてくれている。

 

「お前は寝なくていいのか? 明日の出発は早いぞ」

「ご主人様が寝てないのに私が寝る訳にはいかないよ……それに睡眠時間が短いのは慣れっこでしょ?」


 いつもお世話になっております……そうだな、フィサリスには面倒に付き合わせてばかりだ。

 

「何か欲しい物はあるか? 褒美をやるぞ」

「ご主人様の愛」

「まだ足りないのか」

「ううん、だから私は十分だよ」


 …………欲の無い奴め。

 だが、要らぬと言われて引き下がる俺では無い。むしろ倍にして送りつけるのが俺流だ。

 何をやろうか……金を与えた所で意味は無し、武器もイマイチだな……服は……自分でも作ってるし、穂乃香から貰ったのもある……となるとアクセサリーか?

 いや、この際俺がドレスアップ一式揃えてやるか……俺コーディネートの完全オーダーメイド品だ。メイクまで俺が施して――

 

「――ボス! ほたるの嬢ちゃんがやられたってのは本当――うおっ!?」

「やかましい」


 執務室の扉を開けるなりグラジオラスが怒鳴り込んできた為、錬金術でガチガチに固めてやった。

 お前今、何時だと思ってんだ。夜中に騒ぐんじゃねぇ。

 

「パープルニアの中枢に居ると思われるリッチにリノが襲われた。ほたるはリノを庇って全身に大火傷を負ったが……水奈の治療を受けて、大体は治った。今はリノと一緒に寝ている」

「……パープルニアのリッチ……ボスの屋敷にピアニー嬢を送り込んだのもパープルニアだったよな……」

 

 強い怒気が放たれる……本当に義理堅い男だなお前は。

 最高幹部の中でも、グラジオラスとほたるの絡みはそんなに無い。それでも怒りに肩を震わせている。

 俺はこいつに白のローブを渡した……この英雄は潔白過ぎるんだ。国家のドロドロとした闇を知らない分、ラミウムやロータスよりも潔白だ。

 裏表がない、純粋で感情がすぐ表に出る……そして根から良い奴だから、嫌われる事も無い。

 俺はこの男にキング……ボスとして認められた事を誇りに思っている。そして忠臣として重宝している。

 ただ、俺はこいつの潔白さは尊いと思った。そういう意味では、王宮内では無く、自警団に入れたのは正解だったと思う。

 日坂も本来はそちら側だが、あいつは立場的に黒い部分も知ってて貰わないと困る。

 

「お前にはしばらく、大人しくしてて貰う事になる」

「なっ……!」

「戦争となれば別だが、そうでは無い時に魔族のお前が人間族領を出歩くのは、各国を刺激する事になる。向こうから仕掛けて来ない限り、お前を国内から出せない」


 俺が魔人族領の国に呼ばれる時だって、連れて行けるのは俺の夫人として参加する穂乃香だけだ。それ以外は全員魔族で固めている。

 王妃となった穂乃香は不用意に俺と国外には出れなくなった。俺が用事で国外に行く際は必ずフィサリスが同行している。その為パーティー系に呼ばれた際は穂乃香の担当となった。

 人間族領に呼ばれた際は魔族の者を連れて行く理由が無い。理由も無く連れ歩くには刺激してしまうだけだ。故に人間だけで行っている。

 

「…………! くそっ……何も出来ねぇのか……!」

「……今は耐えろ、神奈と水奈の出産が控えてる……戦争するには時期が悪い……――だが、リッチには必ず報復をする」


 パープルニアをどうするかはまだ決めてない……だが、リコリスを滅ぼすのは決定事項だ。パープルニアがもしリコリスを擁護するのであれば……中枢には消えて貰う事になるな。

 

「今は来たる日に備えて戦力の増強に努めろ。イクシオンのリハビリを手伝ってやれ」

「……『剣豪』か。Aランクの冒険者ともなれば心強ぇな、了解した」


 Aランク……単体でワイバーンが問題なく倒せるぐらいだな。

 爺さんと5本指は余裕、アイリス、神奈も行けるな。

 回避力と防御力でやや劣るラミウムとほたるは運次第……2人が組めば確実だな。水奈は技の工夫次第では1人でも倒せるポテンシャルはある。

 ラミ、ユリ、メアはワイバーンの戦闘力を超え、メル、クー、グルウ、ハピィはワイバーンと同等だ。水中戦になればゴウとマリンはワイバーン以上の力を持つ。

 枠外2人、Sランク2人、A+が4人と3匹、Aランクが2人と2匹に、B+が3人と4匹。Bランク相当はリノやピアニー、キュアやキュー、勇者や冒険者達にも居る。Sランクの2人は爺さんと穂乃香だ。爺さんは水奈が無詠唱の空間転移と勘違いするほどの速度を誇る。

 イクシオンは奴隷補正でステータスが上がった……グラジオラス相手に訓練させ続ければA+にも届くだろう。

 魔法師団の筆頭と次席に付いて貰う予定のエリスとケレスには、最低B+には達して貰う。ピアニーの戦闘力は暗殺者としては十分だ。忠誠心が確立できたら鍛えてやってもいい。

 リノがリコリスを倒したいなら……Aランクには届いて貰わないとな。

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