偽りの笑顔
「――、―――」
もう少し、もう少しだけ眠らせてくれ。
「――、――――」
あぁ……朝か。
「氷君、おはよう」
昨日とは違い、笑顔だ。
だが、
如月 穂乃香
憤怒度 30 発情度 30 罪悪感 30
クラスの男子に対する怒り、俺と一緒に居る事の幸福、水奈をいっぱいいっぱいにさせた事の罪悪感。
穂乃香の心は全く別の感情が混ざり合って混沌とし、浮かべた笑みがぎこちない。
お前はほんと、俺らの事になると脆いんだから。
俺は穂乃香の頬に手を添える。
「ひょ、氷君?」
「――違う。俺が見たい笑顔は、それじゃない」
穂乃香はポカーンと惚けた後、クスクス笑って優しく微笑んだ。
「おはよう、氷君」
「ああ、おはよう」
如月 穂乃香
月島氷河 親愛度 100 恋愛度 ERROR 発情度 30
恋愛度がエラーを起こしてる。
でも良い。俺が見たかったのはその笑顔だ。
怒りを忘れろとは言わない。罪悪感を無くせとも言わない。
でも俺と居るこの時だけは――俺だけを見てろ。
まあ、そんな事を口にすれば、マジで発情しかねないから言わないけどね。
ヘタレ? 何とでも言え。
「氷君は今日も眠そうだね」
「ああ、そうだな」
そろそろ慣れても良いぐらいだろうに。
俺の体は睡眠を欲してるとでもいうのか。
そんな暇は無いったら無い。諦めなさい。
あ~でも穂乃香の太腿柔らかい。このまま眠りたくなってくる。
駄目だ! 負けるな俺! 勝つんだ! 穂乃香の太腿に!
穂乃香の太腿と戦ってどうするよ。
穂乃香は今日も鎖骨をさわさわして、唇プニプニしてたの? 飽きないわね。
そして今日は上着の中を少し見てみたの? 別に何もないでしょ?
乳首とおへそが見えて発情しちゃったのね。もう穂乃香のエッチ。
君どんどんエスカレートしていくね。それで起きない俺も俺だけど。
穂乃香の方が情欲に負けちゃってるじゃないですかやだー。
じゃあ俺も、もう少しぐらい膝枕を味わってても……いや、起きますけどね? はい。
「穂乃香、今日も水奈の事よろしくな」
「……うん」
表情が少し曇った。
自信無さげだなぁ。
水奈に穂乃香が付いている。それだけで安心できるのになぁ。
「次は穂乃香も、怪我するんじゃねぇぞ?」
「……! うん!」
頭に手を置いて撫でてやった。
表情が明るくなった。
コイツ変化が乏しいだけで、実は表情豊かだよな。
(怪我するなって! 怪我するなって! それに撫でて貰えた……よし、今日も一日頑張れる!)
内心大騒ぎだしな。
そんな穂乃香を見て和みながら、俺は穂乃香と二人で朝食へと向かった。
今日はここまで。
おやすみなさい。




