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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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叡智の王

 精霊大聖堂でしばらくフィアとイチャイチャした後、外へと出た。

 別に人前でイチャついてる訳では無いので怒られない。司教より上の奴らはみんなイチャイチャ以上の事をしてたりするんだ。清き関係である俺らが怒られる理由が無い。

 

『かなりの暴論だね……神聖な教会で行為に及ぶ人は流石に居ないよ?』

「宮殿に居た教皇はしてたぞ」

『それは本人の住居だからでしょ。屁理屈言わないの』


 フィアに叱られた……国王となった俺を叱れるのはフィアとラミウムぐらいだよな。

 以前模擬戦で槍壊した時はロータスと2人でラミウムに叱られた……掠り傷は無効だって言って戦闘を続行してたのがバレて、「トップとなる貴方達が何をしてるのですか」と怒られた。

 傷を治して貰うために呼んだ水奈には呆れた顔をされた。「お兄ちゃんが理由で私が呼ばれる回数多くない?」と言われた。お世話になってます……

 

「――凄い……人間族領には精霊様の教会もあるのか……」

「――ケレス、目的を忘れないで……――あ」


 外に出たら俺を探していた魔族の双子が居た。

 まあ、俺に会いたい奴は城を訪ねるより、孤児院か大聖堂に張り付いて出待ちした方が早い。城は入る手続きから謁見の段取りまで色々面倒だからな。

 俺は護衛を必要としないので、国内であれば1人で自由に歩き回っている。国外に行く場合はフィサリスだけでも連れて行かないと、ラミウムに怒られる。

 他が俺だから仕方ないって諦める中、怒ってくれるラミウムの存在はありがたい。苦労掛けます。

 

『でも自重はしないんでしょ、氷河は』

「そうだな」

 

 自由奔放たるのもまた王だ。

 

「あの……私エリスと申します……国王様でお間違えないでしょうか……?」

「ああ、そうだ」

「国王様! 僕たちを雇って貰えませんか!?」

「ちょっと、ケレス!」

「構わんぞ」

「「え!? 良いんですかっ!?」」


 お、息ピッタリだ。流石双子の姉弟だな。

 優秀な人材が雇われたいと言っているんだ、断る理由が無いな。

 

「敵対国のスパイや、人間嫌悪派という訳じゃないんだろう? なら断る理由が無いな、俺の国は基本的に来る者拒まずだ……それに、光と闇の大精霊を連れた精霊魔法師という、優秀な人材なら大歓迎だ」

「――! 叡智の王……その目は万物の理を見通す……噂は本当だったんだ……!」


 …………あの宗教……変な噂流すの止めてくれない!? なんだ叡智の王って! 厨二病か!

 大体全て理なんて……視界に入らない限り無理に決まってんだろ! ……意外と出来たわ。

 

「それで……その……大変厚かましいのですが……」

「ああ、大金が要るんだろ? 別に構わないが、大金を手に入れた所でお前らの父親は助からないぞ」

「――え……?」「そんな……」

『ちょっと、氷河!』

「あー……勘違いするな。大金はたいてエリクサーを買っても意味が無いと言うだけだ。父親を助ける事は不可能じゃ無い。そもそも病じゃないからな」

「「病では無い……?」」


 良い子供達じゃないか。苦しんで寝込む父親の為に自身達を売り込む。親孝行だな。

 今年で成人の15歳……ミラの2つ下でリノの4つ上。リノと年の近い幹部候補は良いな。

 姉のエリスは光の大精霊に回復術と結界術が使える補助型、弟のケレスは闇の大精霊に錬金術と魔棒術を使った接近型、バランスも取れている。

 ケレスは見た目に反し脳筋だな。錬金術を錫杖作るだけにしか使わないのは勿体無い。

 優秀さで言えばエリスの方が優秀だ。アイリスと同じく単独でも強いタイプだ。

 アイリスは攻撃、回避、回復で上手く対応している。エリスは回避の代わりに防御を取り入れて、攻撃、防御、回復で対応する事が出来る。機動力の無さは結界術で十分カバーできる。

 2人ともまだまだ伸びしろがある、鍛えがいがあるな……俺直々に鍛えてやっても良い。

 その為にはまず、臣下として確保しないとな。

 

「お前ら2人が魔法師団員となって、俺の臣下になるなら父親を助けてやるぞ」

「「本当ですかっ!? ぜひお願いします!」」


 即決かよ……こいつらの親父さんは幸せ者だな。

 うちの爵位持ち幹部にはもれなく俺か日坂の奴隷にしている。これは有事の際にすぐ幹部たちを集められる様にする為だ。末端まではしていない、奴隷になる事に抵抗ある奴らも居るだろうからな。

 セバスチャン、ニンファー、ミラには俺の奴隷になって貰い、伊藤真由美には日坂の奴隷から俺の奴隷に移籍して貰った。使用人は俺の管轄でなくては困る。ミラは単純に俺を選んだ、孤児院に顔出す頻度は俺の方が高いからな。ロータスとグラジオラスの移籍はしない。これは本人達の意思でもある。

 今後爵位持ち幹部が増える際に、俺か日坂の奴隷になっていなければ、どちらか選ばせる。既に奴隷になっていても使用人以外なら移籍希望は叶える。アマリリス、移籍しても大丈夫だぞ。

 魔法師団になるこの2人も男爵を与える為爵位持ち幹部だ。とりあえず俺の奴隷にして置く。移籍をするかは後々本人が選ぶだろう。

 さて、ここからの対応は気を付けないと、こいつらまで信者になりかねない。慎重に行わなければ。

 

「『サモン』」

「……ご主人――国王陛下、お呼びでしょうか」

「ああ、これから新たな臣下たちの祖国へ向かう。着いて来い」

「もう臣下にしたの? 早くない? そしてそんなホイホイと国外に出られても困るよ、ご主人様……」


 近くに他国民が居ると分かって言葉を改めたが、臣下に下ったと分かって素に戻った。

 

「バレなきゃ大丈夫だろ」

「いや、バレるでしょ」

「俺の不在時は代理は日坂が務める。問題無かろう」


 その為の大公だ。俺は外交で他国に行く事も多いからな、俺の監視の目が無い時に、馬鹿な事しそうな奴らのリストは自警団に渡してある。

 馬鹿の事と言っても反逆や殺人といった類では無い。そういう部類はまず入国許可が下りないからな。

 例えるなら教師の居なくなった自習教室、店長の居なくなったスタッフルームだ。

 行動に制限の掛かった人って、見張りが居なくなったら羽目を外したくなるものだ。

 アマリリスとかユリがその典型的なタイプだな。

 まあ、何かやらかせば帰って来た俺に速攻バレるんだけどな。それでもスリルを楽しむ馬鹿が居るのも事実だ。そういう奴はお望み通りこってり絞ってやる。

 ……あれ? これってラミウムに対するブーメラン? 俺もラミウムにバレなかった試しが無いな……

 俺の行動について、度々ラミウムに報告が上がるのってなんでだろうな……

 

「すぐ終わらせる。行くぞ『サークル』『テレポート』」




 エリスとケレスの祖国であるゲミニ公国へとやって来た。もちろんアポなしである。

 ゲミニ公国はブライトタウン王国から距離がある為、不干渉の中立国である。

 敵対されないだけマシだろう。だが友好国でも無い為挨拶はして行かない。完全にお忍びでやって来た。

 手っ取り早く、2人の父親が居る屋敷へと転移する。

 

「「父様っ!」」

「う……うぅ……っ」

「……かなりやつれてるな」


 Aランクの冒険者、『剣豪』イクシラン。

 かつて冒険者ギルド長に推薦されていた程の実力者だったが……今は見る影が無いな。

 傍へ駆け寄るエリスとケレスを弱弱しく見上げるが、その目に覇気がない。

 

「ご主人様。これ水奈ちゃんを呼ばないと、不味いんじゃないの?」

「水奈を呼んでも意味は無いぞ、病じゃないからな。むしろ呼ぶべきは……『サモン』」

「…………パパ、ビオラと遊んでるとこだったのに……」


 ピンクのドレスに身を包み、遊びを邪魔されて不貞腐れてるリノを呼び出した。

 

「それは悪かった。でもこれはお前を呼ばない方が怒られると思ってな」

「――! ……パパ、あれって」


 リノはイクシランに起きている現象を見抜いた様だ。

 まあこの方面はリノの専門だからな。

 

「エリス、ケレス、そこをどけ」


 父親から2人を引き剥がす。じゃあ始めるか。

 

「『ホーリーボール』」

「ちょっ!」「「国王様!?」」


 焦るな焦るな、確かに構図だけ見たら俺がトドメ刺した様にしか見えないが、威力は抑えてある。

 それよりほら、お出ましだ。

 

「父様から……黒い……馬……?」

「……ナイトメア」

「正解だリノ。あの黒馬欲しいか?」

「うん」

「了解した――『隔離結晶』」


 結界術で俺とリノ、黒馬だけ結界内に閉じ込める。

 父親を苦しませていたのは病では無い、悪夢のモンスターだ。

 聖魔法をぶつければ引き摺り出すのは難しくない。ただ引き摺り出した後、ナイトメアと戦える者が居なければ、被害者が増えるだけだ。エリスやケレスでは手に負えない、全盛期のイクシオンでも負けた程だ。

 ナイトメアは頭に生えた角をこちらに向け突進してくる。

 俺は突き出された角を左手で握り、正面から受け止める。

 

「ブォオオオオオ!?」

「リノ、俺が抑えてる間に対話に入れ」

「うん――」


 ナイトメアが暴れようとする、だが俺が重力魔法も掛けて更に動けなくしてやる。

 躾けのなってない駄馬には……お仕置きが必要か……?

 

「パパ。この子が怖がってる、凄むのダメ。――――」

『氷河は召喚獣増やすたびに、威圧しないと気が済まないの?』


 別にそういう訳じゃないが……弱肉強食である獣達には、しっかりどちらが上であるかを示しとかないと舐められるだろ?

 

『凄まなくたって理解できるでしょ。渾身の一撃を片手で止めてるんだから』

「それじゃパンチが弱いだろ……終わったか」


 ナイトメアはリノの召喚獣になった。これにて一件落着。

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